第25話 先生。お願いします!③
「ふぅ。美味しかった。ごちそうさまです」
「お粗末さまです」
俺たちはダンジョンの中で京子が作ってきたサンドイッチを食べて休憩をとった。
京子の料理はいつも絶品だ。
今日のサンドイッチもほんとに美味かった。
コンビニで売ってるサンドイッチなんて目じゃないくらいだ。
パンはしっとりしていて、具材の野菜はみずみずしく、シャキシャキだった。
そして、アクセントとして入っているハムがいい感じに塩加減が効いているのだ。
まさに、お腹の中から幸せになる感じだな。
「相変わらず京子の料理はうまいな」
「そうだね。プロ顔負けじゃない?」
「そんな。見習い料理人のジョブのおかげですよ」
最近、京子は料理をするときは見習い料理人にジョブを変更しているらしい。
その方が料理も美味しくなるし、料理をして経験値も貯まるから一石二鳥なのだそうだ。
実際、京子の料理は日に日においしくなっている。
心なしかステータスも上がっている気がするし。
ただのバフじゃなくて、基礎ステータスが上がっている気がするのだ。
実際、ダンジョンに潜っていない日に試してみると朝より夕方の方が忍法の使用回数が増えていた。
三回も試して、三回とも同じ結果になったのだから、勘違いとかではないだろう。
少なくともMP総量は京子の料理によって増加しているんだと思う。
ヘルプを調べてみると、アイテムの中にはバフ効果のあるものと恒久的にステータスを上げる物があるらしい。
京子の料理は後者なんじゃないかと思う。
体は食事によってつくられると言うし。
今までレベルが上がりにくい忍者をメインジョブにして強くなってこられたのは京子のおかげだったのかもしれないな。
京子なしではいられない体にされてしまった。
「じゃあ、そろそろ行く?」
「……もう少し食休みをさせてもらえないか? 食べてすぐ動くと脇腹が痛くなる」
「そうですよ。ダンジョン内では時間が引き延ばされてるので、少しゆっくりしていてもバチは当たりませんよ」
「……でも」
食事が終わるとすぐにたちあがった朱莉に俺たちはできるだけ優しく諭す。
サンドイッチが美味しくて一気に食べてしまったので、まだ十分も休憩していない。
朱莉だってまだ完全に疲れが取れているようには見えない。
多分、もう少し休んだ方がいいと思う。
「気持ちはわからなくはないけど、怪我したら元も子もないぞ?」
「そうですよ。無理しない程度に頑張りましょう」
「……そうだね」
朱莉は再びシートに腰を下ろす。
朱莉の気持ちもわからなくはない。
さっさとかたをつけて、元の生活に戻りたいのだろう。
警察官の話では、この間朱莉の家に襲撃をかけてきた連中は半グレグループのリーダーである竜也とかいうやつの側近だったらしい。
彼らは最近まで暴力団組織との抗争に参加していたのだが、そちらが落ち着いたからこちらにきたのだろうとのことだ。
(側近ってことは多分竜也のパーティメンバーだよな)
俺たちの予想では、彼らが竜也とかいう半グレ組織のリーダーのパーティメンバーなんじゃないかと思う。
つまり、あいつらを倒せばこの違法な借金取りたちを止められるということだ。
(正攻法では解決できなさそうだもんな。捕まった取り立て役を殺したのもあいつらだろうし)
最初は借金を返済し切って縁を切ろうと思っていた。
だが、捕まった取り立て役たちの話を聞いて、考えは少し変わった。
警察官の人に取り立て役たちがどうして死んだのかを聞くと、刃物で刺されたことによる失血死だったそうだ。
だが一方で拘置所内で刺殺などあり得るのかと聞くと、ありえないと返事が返ってきた。
その上、警察官の人たちは、取り立て役たちが死んだのは事故だと疑っていないようだ。
これはきっとダンジョンGo!が関わっていると思った。
犯人グループは何らかの方法で捕まった仲間をダンジョン内に誘い込み、そこで彼らを殺したのだ。
相手は警察署に捕まった仲間を殺すような奴らだ。
借金を全額返済したらもう来ないとは思えない。
なら、相手を殺してしまうか、相手のボスより強くなって、手出しできないようにするしかない。
流石に人殺しは気が引けるので、強くなる以外の選択肢はないということだ。
それも、そんな奴らが手を出すのを戸惑うくらい圧倒的にだ。
(でも、あいつらかなり強かったんだよな)
襲撃してきたやつは相当強かった。
今戦っているDランクダンジョン一階層のモンスターよりも間違いなく強い。
アイツらのリーダーである竜也は下手をしたら俺よりも強いかもしれない。
そいつよりも強くならないといけないのだ。
本当は、話のわかる探索者の組織とかに後ろ盾になってもらえばいいのだが、連絡を取る伝手がない。
(もっとレベルを上げないと)
俺は気合いを入れ直すのだった。




