第24話 先生。お願いします!②
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色欲の白兎(D)を倒しました。
経験値を獲得しました。
ジョブ『忍者』がレベルアップしました。
ジョブ『NINJA』がレベルアップしました。
報酬:3896円獲得しました。
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「……びっくりするくらい余裕だな」
「本当、前の探索はなんだったの? っていうくらい余裕ですね」
俺たちは順調にダンジョン探索を進めていた。
Dランクのモンスターもそこまで強くなく、結構あっさりと勝利できていた。
何より嬉しいのが、Dランクに上がってから『忍者』のレベルが上がり出したことだ。
今、レベル九だから、もうすぐランクⅡになる。
一ヶ月近く潜っていたEランクダンジョンでレベルが三までしか上がってなかったのだから、はっきりとした進歩だ。
この辺りがやっとジョブ忍者の適正レベルなのかもしれない。
ランクが上がるとジョブは一気に強くなるので、元々強かった忍者がランクアップすればどうなるのか本当に楽しみだ。
それに、NINJAの方もランクがⅡになってからレベルが全然上がらなくなっていたが、Dランクダンジョンに入って再び上がり出した。
京子も聖女のレベルが上がらなくなっていたそうだが、Dランクダンジョンに来て、また上がるようになったらしい。
やっぱり、Dランクダンジョンに来て正解だったみたいだ。
「それもこれも、朱莉大先生のおかげだな」
「あかりちゃん先生! ありがとう」
「ふっふっふ〜♪ もっと褒めてもいいんだよ!」
朱莉が先頭になって進み出してから明らかにダンジョンの攻略スピードが上がった。
最初はおっかなびっくり朱莉の後をついていっていた俺たちだったが、朱莉がズンズン進むので、立ち止まるわけにもいかず朱莉と同じスピードで進んでいた。
だが、すぐに安心して進めるようになった。
朱莉はどんどんとトラップを解除していき、朱莉の歩いた後にトラップの取り残しは一つもなかった。
その上、トラップに近づけば、「この辺にトラップがありそうだから、注意して」と注意までしてくれるのだ。
俺たちはすでに朱莉を信頼し切っており、すでに京子は聖域を張っていない。
(適正ランクに届いてないから少し心配だったけど、大丈夫だったみたいだな)
Dランクダンジョンの適正ランクがⅨとヘルプに書いてあり、朱莉は盗賊のランクがまだⅡだから少し心配していたが、ランクⅡでも大丈夫だったようだ。
京子が昔ケンタから聞いた話では、ヘルプの推奨ランクは高すぎて、そこまでレベルを上げるのはほぼ不可能だそうだ。
朱莉は前にその話を信じて見習い職のままEランクダンジョンに突入して失敗したが、今回は正解だったみたいだ。
それに、朱莉のEランクでの戦闘を見ていた感じ、確かに、ヘルプのランクは高すぎるように思う。
あの表記はソロ探索者向けのランクなのかな?
それにしても高い気がするが。
いや、Dランクダンジョンは十階層まであるらしいから、もしかしたら階層を下っていけばランクⅨくらいまで必要になってくるのかもしれないな。
油断はしないでおこう。
「それにしても、トラップにあんな使い方があるとは予想外だった」
「私も思いつきませんでした」
「ヘッヘッヘ〜♪ すごいでしょ! まあ、私も『トラップ発動』ができるのはジョブのおかげなんだけど。あれができるようになったのもさっきレベルアップしてスキルを覚えてからだし」
さっきの戦闘で朱莉がとった行動には驚かされた。
朱莉は戦闘中にトラップを発動させ、相手モンスターを落とし穴に落としてしまったのだ。
だから、さっきの戦闘は落とし穴の上から火を吹くだけの簡単なお仕事になっていた。
どうやら、朱莉がやったのは『トラップ発動』というスキルで、そのスキルを使うと、本来は探索者側にしか発動しないトラップをダンジョンのモンスターにも発動するようにできるらしい。
トラップにかかったモンスターが「え?」っていう顔をしていたのは本当に面白かった。
ザマァ見ろって感じだな。
もしかしたら、前回、俺も戦闘中にトラップにかかった時同じような顔をしていたのかもしれないが。
「じゃあ、進もう!」
「……なあ朱莉? そろそろ休憩しないか?」
「え?」
「……そうですね。私も疲れたのでそろそろ休憩をしたいです」
俺と京子は再びダンジョンの奥に進もうとしていた朱莉を止める。
正直、俺たちはあまり疲れていない。
探索時間もあまり経っていないしな。
だが、朱莉は結構疲れているように見えた。
多分、『トラップ解除』のスキルのせいではないかと思う。
スキルにはSPを消費するものとMPを消費するものがある。
俺の『隠密』や『暗殺』はSPを消費するタイプのスキルで、京子の『聖域』や『強化』なんかはMPを消費するタイプのスキルだ。
そして、忍法みたいにMPもSPも消費するものもある。
さっきから朱莉が使いまくってる『トラップ解除』はSPとMPの両方を結構な量消費するんじゃないだろうか。
その証拠に、朱莉は今、結構しんどそうだ。
「でも……」
「そこまで焦らなくても、大丈夫だよ。少し休憩するくらいじゃ、何も変わらない。ダンジョンの中だと、外の十倍のスピードで時間が進むんだし」
「そうですよ。それに、せっかく軽食を作ってきたんだから、食べないと勿体無いです」
早く強くなりたい朱莉の気持ちもわからなくはないが、過度なトレーニングは体に毒だ。
適度な休憩は必要不可欠だと思う。
今の朱莉は間違いなくオーバーワーク気味だ。
朱莉の気持ちもわかるが、それで朱莉がダメになっていては元も子もない。
俺と京子は朱莉の様子を無視して問答無用でテキパキと休憩の準備を進めていく。
「……わかった。ありがとう。二人とも」
俺たちの気持ちに気付いたのだろう。
朱莉は少し恥ずかしそうに休憩の準備に加わってくれた。




