第23話 先生。お願いします!①
「ここが、Dランクダンジョンかー」
「そういえば、朱莉はDランクダンジョンに来るのは初めてだったか?」
「そうだよ」
襲撃があった翌日。
俺たちは早速、歌舞伎町にあるDランクダンジョンに来ていた。
朱莉にDランクダンジョンに潜ることを提案すると、二つ返事でOKがもらえた。
やはり、朱莉も昨日の襲撃は思うところがあったみたいだ。
日曜日の今日は朝一から俺の家にきてダンジョンに誘ってきた。
(いや、やる気満々っていうのもあるけど、それだけじゃないか)
朝早くから俺の家に来たのは家にいても誰もいないというのも理由の一つかもしれない。
昨日の事件の後、美香さんは入院することになってしまったのだ。
美香さんはあれからまともに反応できない状態となっていた。
鎮静剤などを使い、眠ってくれたそうだが、また襲撃があるかもしれないという状況的にも当分の間は入院するのは避けられないそうだ。
しかも、朱莉の顔を見ると、襲われた光景がフラッシュバックしてしまうらしく、同じ病室にいることすらできない。
それに、俺たちは襲撃者たちのターゲットにされたみたいだし、近くにいない方がいいだろう。
朱莉は明るく振る舞っているが、相当辛いと思う。
俺たちも朱莉に負担をかけないようにしないといけないな。
「Eランクダンジョンと全然変わらないね」
「見た目変わらないんですよね」
「見た目はな〜」
「?」
朱莉に負担をかけないようにしようと思った矢先に、前回のDランクダンジョン探索を思い出して俺たちは暗い気持ちになる。
「京子。とりあえず、『聖域』を使っておいてもらっていいか?」
「わかりました。『聖域』。あかりちゃんも入って」
「わ、わかった」
戦闘にもなっていないのに防御スキルを使い出した京子を見て、朱莉は少し驚いた顔をする。
前回のDランクダンジョン探索は散々だったのだ。
戦闘でダメージは負わなかったが、何度も何度もトラップに遭い、相当なダメージを受けてしまった。
いきなり矢が飛んでくるのは当たり前。
唐突に足元から槍が飛び出してきたり、天井からギロチンが落ちてきたり、大玉が転がってきたこともあった。
しかも、トラップは戦闘中にも発動するのだ。
戦闘中に落とし穴に落とされた時はマジでやばいと思った。
落とし穴の下に刃物が敷き詰められていたというのもあるが、戦闘中に前衛の俺が後衛の京子を守れない状態になってしまったのだ。
京子は移動中からずっと聖域を使い続けていたが、MPが切れれば聖域は使えなくなる。
そうなれば、防御力があまり高くない京子は命すら危うい。
なんとか壁を蹴って脱出し、モンスターが京子の下に辿り着く前に倒すことができたが、あの時はマジでやばかった。
「……行くぞ」
「はい!」
「わ、わかった!」
俺たちは気合を入れてゆっくり、ゆっくりとダンジョンを進み始めた。
***
「あれ?」
「!! どうかしたか?」
ダンジョンを進み出してしばらくして、朱莉が不思議そうな声を出したので、俺たちは立ち止まる。
すでに五分くらい探索しているが、今日はまだ戦闘ができていない。
進んだ距離も大した距離になっていない。
それだけ慎重に進んできたということだ。
「え? いや、あそこの床がちょっとおかしいなと思って」
「「あそこの床?」」
朱莉の指さす先をみるが、特に変わった様子の床はない。
「どこだ?」
「ちょっとここで待ってて」
「あ、あかりちゃん! 危ないよ!」
「大丈夫!」
朱莉は俺を追い抜き、前に出て床を調べ出した。
ダンジョンGo!からトラップ解除ツールを取り出しているので、かなり本格的に調べてるみたいだ。
見習い盗賊から盗賊に上がると、朱莉はトラップ解除ツールが作れるようになったらしい。
見た目は工具箱みたいな感じだが、中には俺や京子では使い方がわからないものがたくさん入っていた。
朱莉には全部使い方がわかるそうだ。
それもジョブ補正みたいだ。
(めちゃくちゃ手際いいな)
地面に膝をつき、一箇所の床を真剣に調べている。
周りの床と見比べてみたり、天井を見上げたりだ。
俺からは普通の床に見えるが、何か違いがあるのだろうか?
俺と京子も恐る恐る朱莉のすぐそばまで行って朱莉の調べている床と周りの床を見比べてみたりしたが、違いが全くわからない。
京子も訳がわからないという顔をしているから、俺と同じ気持ちなんだろう。
「……うん。やっぱりこの床、トラップだ」
「えぇ!」
「本当ですか?」
「うん。見てて『トラップ解除』」
「「!!」」
朱莉がスキルを発動すると、朱莉の体が淡く光る。
それと呼応するように、朱莉がさっき調べていた床がうっすらと光出した。
その光はゆっくりと広がっていき、天井に到達すると、そこにギロチンの刃が現れた。
「まじか」
「全然わかりませんでした」
「えへへ。『破壊』」
朱莉が手に持っていたツールで浮かび上がったトラップを優しくつくと、トラップはガラスが砕けるような音を立てて砕け散った。
驚くほどあっけない。
俺たちは空いた口が塞がらなかった。
「うん。これならなんとかなりそう。ここからは私が先頭で問題ないかな?」
朱莉は達成感に満ちた表情で振り向く。
その顔からは自信がうかがえた。
俺と京子は二人で顔を見合わせてうなづき合う。
「「先生。お願いします」」
「うむ。任されよ」
俺たちは自信満々で進む朱莉の背中を追いかけた。




