第21話 マッポが来たから撤退するぞ!③
「お母さん!?」
三人組が帰っていくと朱莉は美香さんのいる台所の方にかけていく。
美香さんは台所で頭を抱えてうずくまっていた。
「お母さん! お母さん!? 大丈夫?」
「〜〜〜〜〜〜」
美香さんは頭を抱えてぶつぶつと何かを呟いている。
見るからに相当ヤバい状況だ。
おそらく、襲撃が止んで気が緩んだところにさっきの三人組が家の中に突入してきて何かが切れてしまったんだろう。
朱莉が背中をさすっているが、反応を見せない。
こんなことになった人はテレビでしか見たことがない。
どうしたらいいんだ?
「有村さん! 有村さん!」
「斉藤! 男が三人、窓から逃走した! 今、荒木さんたちが追跡中だ! 有村親子の無事の確認をいぞげ!」
「!! 有村親子の無事を確認するために扉を破ります! 手伝ってください!」
「わかった!」
扉の外で警察官の二人が扉を破ろうとしている声が聞こえてくる。
ちょっと待って!
もう襲撃は終わってるから、今扉を破壊されると壊れ損になっちゃう。
……いや、もしかしたら、美香さんの対処を警察の方なら知ってるかもしれない。
「ちょっと待ってください! すぐ開けます」
「!! 大穴さんですか? お願いします!」
俺が声をかけると、扉の外にいる斉藤さんは返事を返してくれる。
どうやら、扉の破壊は阻止できたようだ。
ただでさえ窓が破られてるのに、扉まで破壊されたら修理が大変だ。
扉を開けると、扉の外には斉藤さんと荒木さんが真剣な表情で立っていた。
それにしても、知り合いの刑事さんで良かった。
初対面の人だと顔のせいで犯人グループの一人として捕まえられてたかもしれないからな。
実際、前の会社で初めて斉藤さんたちと会った時、半グレと間違えられて捕まりそうになったし。
「有村さんたちは?」
「二人とも無事です。いや、美香さんの方は無事と言っていいのかわかりませんが」
「!! 失礼します」
斉藤さんは急いで中に入って行き、美香さんの方に駆け寄っていく。
「お母さん! お母さん!」
「……朱莉さん。落ち着きましょう。大声を出したらお母さんが驚いちゃいます。お母さんは大丈夫ですから。外傷は無いんですよね」
「!! はい。……わかりました」
斉藤さんは朱莉を優しく諭す。
そして、美香さんの背中を優しくさすりながらできるだけゆっくり声をかける。
「有村さん。もう大丈夫ですからね」
「〜〜〜〜〜〜」
しばらくすると、美香さんの呟きが少し小さくなる。
だいぶ落ち着いてきたみたいだ。
「あの、大穴 探さんでしたよね? 少しお話を聞いてもいいですか?」
「もちろんです」
「じゃあ、ここではアレなので、こっちに」
「はい」
男性刑事さんは美香さんの方をチラリと見て、場所を変えることを提案してくる。
事件の話が美香さんの耳に入らないようにしたいのだろう。
せっかく少し落ち着いてきたところだしな。
それは俺も賛成だ。
俺は確か、荒木という名前の刑事さんの後について覆面パトカーまでついていく。
途中近所の人にすごい顔で見られたが、あれは多分捕まった犯人と勘違いされたな。
本当、この顔にはいつも足を引っ張られる。
「何があったんですか?」
「実は……」
俺は荒木さんにさっきまで起こったことを話した。
***
「ご協力ありがとうございました」
「こちらこそ、いつもありがとうございます」
「いえいえ。職務ですから。それでは」
荒木さんは応援要員が来たため、警察署の方に帰っていった。
俺は頭を下げて荒木さんが乗ったパトカーを見送った。
「あ、サグルさん。お帰りなさい。お帰りなさいっていうのもおかしいですが」
「ただいま、京子。朱莉は?」
「斉藤さんと一緒に美香さんについて病院に行きました」
「……そうか」
有村家へと戻ってくると、京子が一人アパートの前で待っていた。
壊れた窓は警察の人がブルーシートとガムテープで応急処置してくれたが、現場保存のため、部屋の中にはいられなかったらしい。
まあ、この家は京子の家じゃなくて朱莉と美香さんの家だし、当然と言えば当然か。
「……帰るか」
「そうですね」
俺たちはもやもやした気持ちを抱えながら帰路についた。
今ここにいても俺たちにできることはない。
美香さんの行った病院はどこかわからないし、朱莉が一緒に行っているのだから、家族でもない俺たちは近づかない方がいいだろう。
「サグルさん。強くなりたいです」
「……俺もだ」
今日の戦闘はかなりやばかった。
もしあのまま続けていても、負けはしなかっただろうが、朱莉たちに怪我を負わせていたかもしれない。
次会う時は向こうが有利な場所になるだろう。
そうなれば勝てるかどうかは微妙なところだ。
それに、もっと力があれば美香さんを怖い目にあわせることもなかったかもしれない。
「明日から、Dランクダンジョンに潜らないか」
「私もそれがいいと思います」
正直、Dランクダンジョンは避けていた面がある。
朱莉はまだ盗賊のジョブに上がったばかりだし、Eランクダンジョンに潜れば十分な稼ぎが出せた。
それに、金田たちの件もあり、敵が来ても負けないと思っていた。
だが、今日の三人は金田たちと別格だった。
このままではダメだ。
一刻も早く強くならないと。
「あかりちゃんには私から連絡しておきます」
「頼む」
俺たちは明日Dランクダンジョンに潜ることを決意した。




