第18話 ドキドキ♪ファッションショー!③
「(はぁ。やっと解放される)」
俺と朱莉は駅について少しだけ席を外した京子を待っていた。
おそらくお手洗いだろう。
京子が恥ずかしそうにしていたので深くは聞かなかったが。
これから結構長い間電車で移動することになるからな。
今日はかなり疲れた。
女の子の買い物に付き合うのは結構大変だ。
「ねぇねぇ。サグルっち!」
「朱莉? どうかしたか?」
京子を待っていると、朱莉が話しかけてきた。
俺が朱莉の方を見ると、朱莉は鞄の中から小さな袋を取り出し、俺に向かって差し出してくる。
「これ、あげる」
「これは?」
「お礼。こんなんじゃ足りないかもしれないけど」
朱莉から受け取った小さな袋には名作バスケ漫画のロゴが印字されていた。
今、渋谷バルクでポップアップショップをやってるあの作品だ。
どうやら、俺のためにわざわざ買ってくれたらしい。
もしかして、渋谷バルクに戻った理由って、これだったのか?
朱莉はあの漫画を俺が好きなの知ってたはずだし。
俺が行きたがっていたことがバレてしまっていたのかもしれない。
「開けてもいいか?」
「もちろん!」
「……おぉ!」
中からは携帯ストラップが出てきた。
バスケットボールの小さなおもちゃがついたものだ。
結構おしゃれで、あまりオタクっぽくないから、俺が狙っていた商品の一つだ。
これはめちゃくちゃ嬉しい!
俺は早速スマホにストラップをつけてみる。
うん。かっこいい!
「えへへ。お揃い」
「お揃いだな」
朱莉のスマホにも俺にくれたのと同じストラップがついている。
並べてみるが、朱莉のギャルっぽいスマホにもマッチしている。
全然オタクっぽくない。
オタクっぽくないオタクグッズは使いやすくて、結構好きなんだよな。
俺は、グッズは使う派なのだ。
昔は使わずに取っておく派だったのだが、押し入れの中に大量のオタクグッズが溜まってしまい、母さんにキレられて捨てる羽目になってしまった。
それに、作品に飽きた時、新品のままのオタクグッズが箪笥の肥やしになってしまって悲しい気持ちになったりもした。
それ以来、グッズはできるだけ使うようにしている。
朱莉もそのことを知っていたのかもしれない。
カバンとかにもさりげない感じでオタグッズがついてたりするからな。
某バレー漫画のお守り型のキーホルダーとか。
それに、もしかしたら、それを見た同志が話しかけてきてくれるかもしれない。
そこから友達ができるなんてこともあり得るかも。
……まあ、同志どころか、知らない人から話しかけられたことはほとんどないんだが。
やっぱ顔が怖いからなのか?
なんにしてもこれはめちゃくちゃ嬉しいぞ!
「ありがとう!」
「ううん。お礼を言うのはこっちだよ」
朱莉は真剣な顔で俺の方を見てくる。
今日は荷物持ちをしてただけなので、何かお礼を言われるようなことはなかったと思うのだが。
「今日のことだけじゃなくて、一週間くらい前からのこと。サグルっちのおかげで昔みたいな生活ができるようになりそう」
「あぁ。そのことか」
襲撃が来ている間は近所の目も冷たい物だったため、まともに買い出しにも行けていなかったそうだ。
それに、社長の奥さんの美香さんは日に日に疲弊していき、倒れてしまいそうな感じだったとか。
確かに、久しぶりにあった美香さんはかなりやつれていた。
この一週間でだいぶ回復し、まだ全回復というわけにはいかないが、今朝はだいぶ昔の雰囲気に戻っていた。
今日の事情聴取だって、美香さんの調子が良くなったから行われることになったんだろうし。
犯人たちが病死したのは月曜日か火曜日だったはずだからな。
「今日はお母さんが腕によりをかけた料理を作るって言ってたから、期待しておいてよ」
「本当か!? 楽しみだな」
今日はこの後、京子と一緒に朱莉の家にお邪魔することになっている。
今週は朱莉の家の周辺のダンジョンを片っ端から潰していたため、拠点として、朱莉の家を使わせてもらっていた。
美香さんには借金取りに対する用心棒と話していたが、結果的に借金取りたちは来なくなってしまったので、美香さんにはだいぶ感謝されてしまったのだ。
強面の俺が美香さんの家に出入りしていたのも来なくなった原因の一つかもしれないが。
いや、実際、俺たちがダンジョンを潰しまくって有村家に近寄れないようにしていたから、間違ってはいないのか?
「今日の晩御飯なに?」
「本当はサグルっちが好きだったフライにしようとしてたんだけど、事情聴取が入っちゃったからカレーにするって、昨日のうちに作ってあるから熟成カレーだよ!」
「まじか。美香さんのカレー、美味しいから楽しみだな」
美香さんの料理は東京に来てから何度も食べさせてもらった。
地方から出てきた俺にとって、美香さんの料理は東京でのお袋の味って感じだ。
中でも、カレーは絶品だった。
何か隠し味を入れているらしく、スーパーで買うレトルトカレーともお店のカレーとも違う独特な味をしていたのだ。
何を入れているかは教えてもらえなかった。
そういえば、教えて欲しければ朱莉を娶って有村家に入ることとか冗談を言われてたっけ?
ことあるごとにその冗談が出てくるので、否定するのがめんどくさかったんだよな。
朱莉もその話が出ると顔を真っ赤にして怒るから、悲しい気持ちになるし。
いつも真っ赤な顔を伏せてプルプルしてたので、相当怒っていたのだと思う。
「お待たせしました」
「全然待ってないよー。じゃあ帰ろっか?」
「そうだな」
京子が戻ってきたので、俺たちは電車に乗って帰路についた。




