第15話 竜也のパーティメンバー②
「充か。帰ってたんだな」
「あぁ。さっきー帰ってきたんだー」
部屋の隅に立っていたのは高坂充だった。
竜也が信頼する部下の一人だ。
充は竜也がダンジョンGo!を手に入れる前からの知り合いで、今でこそ竜也の部下をやっているが、竜也よりも半グレとしての経歴は長い。
竜也に半グレのいろはを教えてくれたのも充だ。
兄のように慕っていた時期もある。
今ではダンジョンGo!のことを教えてくれた竜也に大変感謝しており、竜也の部下をやっている。
そして、充は竜也がダンジョンに潜る際のパーティメンバーでもあった。
そのため、竜也は充のことをかなり信頼していた。
「荒井組の処理は終わったのか?」
「荒木組ねー。構成員は全員処分してきたよー。今頃ー、港のお魚たちはーお腹いっぱいでーご機嫌だろうねー」
「そうか。ならいい」
充は最近ちょっかいを出してきた荒木組という組織の処理を行なっていた。
組織の連中は拳銃を持って応戦してきたが、戦士の派生ジョブである剣士の充の敵ではなかった。
アジトを探すのが一番手間取ったくらいだ。
「にしても、時間がかかったな。一週間かからないと思ったが」
「いやぁ、あいつらの反応が面白くてねー」
「……程々にしろよ」
充は暴力団組織が大嫌いだった。
半グレの時代は何度も辛酸を舐めさせられたからだろう。
当時、充と敵対した組織はすでにこの世にないが、組織と敵対すると、充は真っ先に先頭に立って、相手の組織を再起不能にまで追いやる。
今回の組織も、充は必要以上にいたぶっていた。
剣で銃弾を切り捨ててやると、強面のヤクザどもが目を見開いて驚くので、楽しくて毎回やってしまっていたし。
「それでー、これからどうするんだいー?」
「これから?」
「おいおいー。有村ー? とかいうやつのことだよー。まさかー、下っ端が捕まったからって手を引くわけじゃないだろー?」
「? ……当然だ」
竜也は充が何を言いたいのかわからなかった。
有村家はこれまで通り、取り立てを行なっていくつもりだ。
それ以外に何かあるのだろうか?
「まさかー、偶然ダンジョンが無くなったと思ってるのかー? そんなわけないだろー? 偶然Eランクダンジョンが全部攻略されてー? 偶然Fランクダンジョンの攻略スピードが速くなってー? 偶然有村家の近くにダンジョンがなかったー? 流石に三つも偶然が続くわけがないよねー? さっき調べてきたけどー、今も有村家の周りにはEランクとFランクのダンジョンがなかったからねー。Dランクダンジョンは残ってたけどー」
「何?」
充に言われて、竜也も違和感に気づく。
さっき部下から報告を受けた時は不幸な偶然が重なっただけだと思ったが、今もダンジョンがないとなれば話は変わる。
誰かが率先してダンジョンを潰して回ってると見た方がいい。
そうなると、有村家の後ろに探索者がいると考えるのが普通だ。
竜也の視線が鋭くなったのを見て、充はニヤリと口角を上げる。
「ターゲットのー娘のー朱莉ちゃんさー。前に逃しちゃったー。京子ちゃんとー同じ学校らしいねー。これは偶然かなー??」
「……」
竜也は最近、水商売に落とそうと思っていた矢内京子という女子高生を逃していた。
矢内京子が探索者になってしまっていたからだ。
元々、ダンジョンの素材にするつもりでの突き上げだったこともあり、ダンジョンを作らない探索者になってしまった娘はさっさと切り捨てて母親から回収を行なった。
その娘を探索者に誘ったのは竜也の部下で、その部下も粛清済みだ。
母親もまだ若く、資金の回収もできたし、母親の方が作ったGランクダンジョンにも問題なく潜れた。
便利なコマの一つだった金田を失ってしまったのは痛かったが、奴隷商人のジョブの探索者はすぐに作れたし、竜也の中では成功に分類されていた。
「一回邪魔しただけならー面倒だし見逃してやってもいいけどー、二回も邪魔をしたら放っておけないよねー?」
「そうだな」
竜也たちの邪魔をする探索者なら落とし前をつけさせないといけない。
Eランクダンジョンを攻略できる探索者と戦うのは少し面倒だが、竜也たち半グレは舐められたら終わりだ。
敵は叩き潰す必要がある。
「じゃあさぁー? 僕がー行ってもいいよねー?」
「充が?」
「あぁー。ちょっとー不完全燃焼でさぁー♪」
「……」
どうやら、充自身が探索者とやりあいたいからこの話題を出したらしい。
すでに、充は行く気満々だ。
ダメだと言っても勝手に行くだろう。
「……悟と恭平も連れていけ」
「えー。あの二人もー? 一人でも大丈夫だと思うんだけどなー」
「念の為だ」
拳士の悟と魔法使いの恭平は竜也のパーティメンバーだった。
僧侶の幸子は今回は流石にいらないだろうが、相手はEランクダンジョンを攻略できる相手だ。
Dランクダンジョンを攻略でき、もうすぐCランクに届きそうな竜也たちパーティにとっては格下だが、もしもということもあり得る。
「二人を呼び戻すから少し待て」
「わかったよー。あーあ。せっかく暴れられると思ったのにー」
竜也はパーティメンバーへと連絡を送る。
二人とも、今の仕事がすぐには終わらないということだったので、襲撃は一週間後ということになった。
「一週間後かー。楽しみだなー」
「……」
充はスキップをしながら竜也の下を去っていった。




