第14話 竜也のパーティメンバー①
「はぁ? 下っ端が捕まった?」
「ひぃぃぃぃぃ! すみません!!」
竜也はその知らせを聞いて、持っていたグラスを握りつぶす。
ご機嫌斜めな様子の竜也を見て、竜也の部下は土下座するように頭を下げた。
朱莉の家に取り立てに行っていた下っ端たちが捕まったことはその日のうちに竜也の下に伝わった。
下っ端が逃げないように監視する要員が近くにいたからだ。
下っ端は潜るはずのダンジョンが見つからず、警察に捕まってしまったらしい。
今は警察で勾留中だそうだ。
その知らせを聞いて、ただでさえ悪かった竜也の機嫌はさらに悪くなる。
「捕まったのは俺の部下で、竜也さんのことは何も知りません。情報がバレるようなことはないかと」
「ちっ」
自分の情報が漏れないと聞き、竜也は少しだけ機嫌を直す。
だが、今度は保身的な自分にイラつき、どんどん機嫌が悪くなっていく。
「そいつらはさっさと処分しろ」
「し、しかし」
「あぁ? やるのか? やらないのか? 何ならお前ごと処分してもいいんだぞ?」
「や、やります!」
ダンジョンGo!を使えば警察署に潜り込むことも容易だ。
警察署内の防犯カメラには姿が映るが、リアルタイムで監視している相手には防犯カメラ越しでも見つかることはないし、顔を隠しておけば後で誰かバレることはない。
拘置所まで行って捕まっている奴らの携帯を取り返し、逃がしてやると嘘をつき、ダンジョンに誘い込んでダンジョン内で殺してしまえば、勾留中の病死ということになる。
元々下っ端たちはこき使っていたため、健康状態はあまり良くない。
病死してもそこまで不審には思われないだろう。
「お前は絶対に捕まんじゃねぇぞ。捕まったら……。わかってんだろうな?」
「ぜ、絶対に捕まりません!」
「なら行け」
「はいぃぃぃぃ!」
竜也の部下の男は転げるように竜也の下を去る。
無様な部下の様子を見て、竜也は少しだけ機嫌を良くする。
だが、その機嫌もすぐにまた悪くなる。
(……くそ。うまくいかねぇ)
竜也は最速ダンジョン踏破者の称号を失って以来、色々なことがうまくいかなくなったと思っていた。
Gランクダンジョンもなかなか作れないし、部下たちは失敗続きだ。
本当はそんなことはなく、竜也がGランクダンジョンに潜るペースは部下たちを急かしている分増えている。
部下たちのミスも、竜也が部下たちを急かしているから起きているだけで、運は全く関係ない。
だが、竜也は全て運が悪いと思っていた。
(それもこれも、俺から最速ダンジョン踏破者の称号を奪ったやつのせいだ。見つけ出して絶対に殺してやる)
そして、全ては竜也より早くダンジョンを攻略してしまった相手のせいだと竜也は結論づける。
竜也はセカンドジョブを失って以来、情報収集能力が格段に落ちていた。
掲示板のような自分の思い通りに動かない相手の多い場所に行くとイライラするので、竜也はネットでの情報収集を行なっていなかった。
だが、今までは、部下たちがネットで収集した情報についてアジトで話しているのを自分の部屋から立ち聞きしてるだけで情報が入ってきていたので、問題はなかった。
しかし、セカンドジョブを失って以来、竜也の部屋からアジト内の情報が拾えなくなった。
匪賊のジョブだけでは聴覚の強化に限界があるからだ。
やはり、同系統のジョブを二つセットしないと尋常じゃない能力は得られない。
部下たちからの情報収集もできないので、新しい最速ダンジョン踏破者の称号持ちが誰かもわからない。
部下たちも誰が最速ダンジョン踏破者か知らないのだが、それすらも竜也は気づいていなかった。
(やっぱり、手下どもに情報を集めさせるか? いや、それにもリスクがある)
情報収集能力が落ちたからといって、部下たちに情報を集めさせるわけにはいかない。
竜也が色々な情報を知っているということは、部下たちが竜也を恐れる理由の一つだった。
反乱を起こそうとしても相手がどこからかその情報を得てくるのだ。
反乱を起こす側としてはこれほど怖いことはないだろう。
竜也は話を立ち聞きして、そのことを知っていた。
だから、部下たちに情報収集をさせることもできない。
(やっぱり早く称号を取り戻さないと)
称号を取り戻すためには、現在のユニーク称号保持者を殺すか、ユニーク称号保持者の出した記録以上の記録を出さないといけない。
現在のユニーク称号保持者が誰かわからない以上、記録を塗り替えるしかない。
そのためにはGランクダンジョンに潜り、より早くボスを倒すしかない。
だが、竜也は何度Gランクダンジョンに潜っても今までの自分の記録である一分を切ることができないでいた。
竜也は知らないことだが、Gランクダンジョンはそこまで広くないが、ボスモンスターと雑魚モンスターがおり、エントリーポイントは必ずボスモンスターとの間に一体以上の雑魚モンスターがいる場所になる。
そのため、どんなに早くモンスターを倒しても一定以上のタイムを出すことは無理だった。
まして、現在のユニーク称号保持者のサグルはIランクダンジョンに潜り、三秒で踏破してしまっている。
Gランクダンジョンではこの記録を塗り替えるのは不可能だ。
「お困りみたいだねー」
「!!」
竜也は声のした方を見る。
その場所には一人の男が立っていた。




