第42話 気分が落ち込んだ時は餃子!①
『昨日、品川区にある廃倉庫で火災が発生しました。幸い、火はすぐに消し止められたため、死傷者は出ていません。周りの建物からも離れた位置にあった倉庫であり、周辺住民への被害はありませんでした。その倉庫は長く使われていませんでしたが、周辺の不良の溜まり場になっていたらしく、タバコの消し忘れなどが発火の原因と見て、警察は捜査を続けています。次のニュースです。今朝未明、品川区の交差点で交通事故が発生しました。遺体の損傷が激しく、現在身元を調査中とのことです。……』
「本当に事故になるんだな」
「本当ですね。驚きです」
途中から周りの被害を考えずに戦ったため、探索者の一人が使った火魔法が倉庫に燃え移り、火事になってしまった。
古い倉庫だったためか、中に置いているものが悪かったのか、火はすぐに燃え広がり、すぐに個人では消火できない規模の火事になった。
そうなってから、後悔したが、後の祭りだ。
俺は、探索者たちが死なないようにいそいで外に運び出す羽目になった。
チンピラ連中でも流石に見殺しにするのは心が痛い。
結局、倉庫は全焼してしまったらしい。
壁に穴が空いていたり、不自然な斬撃跡が残っていたり、明らかに戦闘したとわかる状態だったはずだが、倉庫は事故によるボヤということで処理されたようだ。
「しかし、あの金田とかいう奴を取り逃しちゃったのはちょっと痛いな」
「あの人が私を襲ってきたグループのリーダーっぽかったですからね」
俺は焦って昏倒した探索者たちを外に運び出したのだが、その中に金田の姿はなかった。
おそらく、逃げてしまったのだろう。
今までダンジョンの中で向かってくる敵の相手ばかりしていたので、敵が逃げるのに気づかなかった。
あの金田という男が今回の襲撃を指示しているようだった。
あいつをなんとかしないと、根本的な解決にはならないだろう。
あいつは奴隷商人という特殊なジョブについているようだったし、仲間を集めてくるのはすぐにできそうだ。
まあ、結構制限がありそうなので、そこまで早く集められないかもしれないが。
「なんにしても、京子が無事でよかった。朱莉には感謝しないとな」
「あかりちゃんにも心配をかけてしまいました」
「京子の無事を泣いて喜んでたからな」
朱莉からの連絡がなければ、俺はここまで迅速に動くことができなかった。
京子が帰ってこないことを不審に思っただろうが、気付いたのはおそらく二、三時間後になっただろう。
そうなって仕舞えば、京子は無事だったかどうかわからない。
それに、家族でもない俺が学校に問い合わせるわけにもいかない。
何が起きたのか調べるのは相当大変だっただろう。
本当に攫われた時朱莉が一緒にいてよかった。
朱莉としては怖い思いをしただけだったかもしれないが。
朱莉は京子が無事に戻ってきたと連絡すると、もう九時過ぎにもかかわらず、俺の家にすっ飛んできて、京子に抱きついてオンオンと泣いて京子の無事を喜んでくれた。
泣き疲れて寝てしまったので、俺は朱莉を家まで運んでやることになった。
眠った女の子を背負って歩く様子は相当に不審だったと思う。
京子が隣に居なければ職質をかけられていたことは多分間違いない。
やっぱり車は必要だな。
「当面、京子の送り迎えはやるよ」
「!! ありがとうございます」
本当は警察とかに相談した方がいいのだろうが、社会的にいうと京子は家出少女で、金田の方は京子の親の許可を得ている。
おそらくこちらに分があると思うが、お役所仕事はこういうとき、どっちに振れるかわからないからな。
弁護士の知り合いとかがいたら相談するのだが、いちフリーターの俺にそんなものはない。
会社の時に付き合いのあった弁護士さんとも完全に縁が切れてるし。
「とりあえず、金はあるし車、買うかな。でもすぐには手に入らないんだっけ?」
「そうなんですか?」
「ナンバープレートを取得したりとか、色々と手続きがいるんだよ。車って事故ったら死人とかが出るから」
「確かに、結構危険ですもんね」
当分は徒歩で送り迎えかな。
正直、女子校の前で一人で京子が出てくるのを待つのは一種の拷問だと思うが、仕方ない。
いや、カーシェアでなんとかなるか?
確か、昔取った契約は切れてなかったはず。
カーシェアって色々と便利なんだよな。
いろんなところで簡単な手続きで借りられるし、出先でカフェとかが見つからなかった時、オフィスがわりにも使える。
確か、近くにカーシェアのステーションもあったはずだし、むしろ、車は買わずにずっとカーシェアっていうのもありか?
車って持ってるだけで駐車場代がかかったり、車検代がかかったり、結構金食い虫だからな。
いや、流石に毎日送り迎えをするなら、自家用車の方が安くつくきそうだな?
今の現状だと、お金のこととかそれほど気にする必要はないはずなんだが、貧乏性っていうのはなかなか抜けないな。
「……」
「? どうかしたか?」
俺が車を買う必要があるかを真剣に考えている横で、京子も何かを真剣に考えているようだった。
考え事をしているなら、本来声をかけない方がいいんだろうが、切羽詰まったような顔だったので、思わず声をかけてしまった。
「私、母親に会ってこようかと思うんです」
「え?」
京子の突然の提案に俺は素っ頓狂な声をあげてしまった。




