第38話 悪党に名乗る名なんてねぇよ。仕返しが怖いからな①
「ふぅ。良作だった。作者はぼっちの気持ちをよくわかってる。これは二期に期待だな。さて、次は何を見ようか」
京子と朱莉を学校へと送り出した後、俺は動画配信サービスを使ってアニメを見ていた。
半年くらい前から色々大変で、見たいアニメは結構溜まっていた。
今、ひと作品見終わったので、次は何を見ようかと作品の物色を始めているところだ。
今まではお金の問題もあって、動画配信サービスは一つしか契約していなかったが、他のサービスに契約して、今まで見たくても見れなかった作品を見るのもいいかもしれない。
お金ならいくらでも稼げるんだし。
「あ。もうこんな時間か。そろそろ京子が帰ってきちゃうな」
ふとスマホに写ってる時計を見ると、時間がすでに四時を回っており、いつ京子が帰ってきてもおかしくない時間になっていた。
「今日はこの辺にしておくか。続きはまた明日だな」
おそらく、明日も京子は学校に行くだろう。
それなら、明日続きを見ればいい。
俺がそんなことを考えているときだった。
「ん? 電話?」
スマホが着信を伝えてくる。
画面を確認してみると、電話をかけてきたのは朱莉だった。
「何かあったかな?」
俺は何気ない感覚で応答ボタンをタップする。
「はい、もしもーー」
「サグルっち! キョウちゃんが、キョウちゃんが!」
「!! 京子がどうかしたのか!」
「キョウちゃんが変な男たちに攫われちゃった! お願い! キョウちゃんを助けて!」
「わかった!」
俺は、朱莉の言葉に二つ返事で答え、すぐさま出発の準備を始めた。
◇◇◇
「京子ちゃん。ばいばい」
「ばいばい。また明日ね」
「朱莉ちゃんもばいばい」
「またね〜」
朱莉がサグルに連絡する少し前、京子はクラスメイトと別れ、朱莉と一緒に家路についていた。
およそ二週間ぶりの登校となるのに、クラスメイトたちは暖かく京子のことを迎えてくれた。
教師には呼び出されこそしたが、教師も京子の家庭の事情は知っている。
家の事情でというと理解してくれた。
どうやら、学校にはもう京子は学校に行かないので、授業料を返すようにと連絡があったそうだ。
当然、断ったそうだが、かなりしつこく食いついてきたらしい。
返金をしない学校を選んでよかった。
どうやら、この学校の創業者が学費を親に持ち逃げされ、学校に通えなかった過去があるらしく、入学したら落第しない限り何があっても卒業させてくれるらしい。
特にお金の関係はかなりシビアで生徒が事故で死亡しても、死亡届を持ってこない限り返金しないと契約書に書かれていた。
京子がことの顛末を話し、今は友人の家に逃げ込んでいると話すと、先生はほっとしたように胸を撫で下ろした。
先生も私みたいに事情がある子供ははじめてではないそうで、色々と対処法を教えてくれた。
なんでも、虐待に遭っていれば後見人制度を使って親と縁を切ることができるそうだ。
母親が学校にかけてきた電話は録音されているそうなので、それで虐待と認定される公算は高いらしい。
後見人には先生がなっても良いとまで言ってもらえた。
帰ったらサグルさんに相談してみようと思う。
「今日もサグルっちの家に泊まるの?」
「そのつもり」
「じゃあ、途中まで一緒だね」
「そうだね」
京子と朱莉は校門を出る。
そして、駅に向かって歩く。
みんなが向かうのとは別の方向だ。
「ほんとはうち来ない? って言ってあげたいんだけど、今うちも色々と大変だからさ」
「まあ、仕方ないよ」
私鉄の駅は近くにあるのだが、京子たちはその駅には向かわない。
一駅ほど歩けば地下鉄の駅がある。
そこまで歩けば、往復で三百円ちょっと安くなる。
家が大変な朱莉はそこまで歩いていた。
京子も今はお金には困っていないが、朱莉に付き合って地下鉄の駅まで一緒に歩いていた。
「ボロくてもあったかい家なんだけど、いかんせん狭くてね」
朱莉の家は会社が倒産し、社長である父親と離婚したばかりなので色々と大変なのだそうだ。
前に住んでいた家も引き払ってしまっており、今は家賃三万円のボロアパートに住んでいるらしい。
スペース的にも母親と二人でいっぱいいっぱいなようだ。
「気を使ってくれてありがとう。サグルさんのところで大丈夫だから」
「……男の人の家に泊まるなんて危ないし、早くどこかいいところ見つけたほうがいいと思うけどね」
京子たちは話に夢中になっており、後ろから黒塗りのバンが近づいてきていることに気が付かなかった。
「サグルっちも男の子だからね。気を抜いてるとこうガバーって」
――ガバ!
「捕まえた! 早く出せ!」
「むー!!」
黒塗りのバンから男たちが出てきて、京子に何かの袋を被せ、バンの中へと引き摺り込んでしまう。
「わかった。もう一人の女はどうする?」
「ひっ!」
「!! むーむー!!」
このままでは朱莉も一緒に捕まってしまう。
京子は精一杯の力を振り絞って暴れ回る。
だが、男たちは異様に力が強く、満足に手足を動かすこともできない。
「こら暴れるな!」
「待て、大事な商品だ。怪我を負わせるんじゃねぇ!」
「チッ。めんどくせぇ」
男たちの京子を拘束する力が強まる。
京子は身動きを取ることもできなくなった。
それでも、京子は必死に抵抗を続けた。
「この人数でもう一人なんて無理だ。そっちの女は指示にない。ほっとけ」
「警察呼ばれたらどうするんだ!」
「俺たちが警察如きに捕まるわけねぇだろ!」
「それもそうだな」
バタンと音がして、車は走り出す。
どうやら、朱莉は無事だったようだ。
車が走り出した頃には全力で暴れたせいで京子はぐったりとしてしまっていた。
こいつらは何者なんだろう?
これからどこに連れて行かれるのだろう?
京子は恐怖で震えそうになる。
(サグルさん)
京子は心の中で大切な相手のことを思い出し、恐怖と必死に戦った。




