第35話 竜也はGランクダンジョンを踏破する。②
「ちっ。苦労して入ったのに、しけてんな」
竜也は初めて入ったGランクダンジョンで舌打ちをしていた。
入った場所が良かったためか、二体目に出会ったモンスターがGランクダンジョンのボスモンスターで、竜也はボスを倒すことができた。
だが、リザルト画面を見て、竜也はガッカリした。
そこに書かれていた報酬はFランクダンジョンで手に入れた報酬より格段に少なかったからだ。
考えてみれば当然だ。
ゲームだって弱いモンスターからは少しの報酬しかもらえない。
「まあ、組織のトップっていうのもいいもんだから別にいいか」
竜也は自分が作った組織で敬われることに満足感を覚えていた。
これまでうだつの上がらない人生を送ってきたので、自分がトップというのは実に気分のいいものだ。
暴力団のボスが偉そうにふんぞり返ってるのもわかる。
「そういえば、報酬以外にも何か手に入ってたな」
竜也はリザルト画面をもう一度確認する。
そこには、最速ダンジョン踏破者の称号があった。
そして、その効果で、二つ目のジョブがつけられるようになっていた。
「二つ目のジョブか。盗賊のジョブでもつけておくか」
竜也はファーストジョブを匪賊に設定し、セカンドジョブを盗賊に設定した。
「今日も取り立てかよ。めんどくせぇな」
「そんなこと言ってると、竜也さんにどやされるぞ」
「例の作戦。お前は参加するのか?」
「あぁ。いい加減あの面倒なやつには退場してもらいたいからな」
「おい、一緒に飯いかねぇか?」
「お、いいな。近くに新しいラーメン屋ができたんだよ」
「ふざけんじゃねぇ!」
「ふざけてんのはお前だろうが!!」
「な、なんだ!?」
ダンジョンから帰ってきた竜也は唐突に入ってきた情報に面食らう。
今回はGランクダンジョンが竜也の組織の建物内でできたので、出てきた場所は竜也の組織が使ってる建物の中だった。
そしてすぐに竜也は今聞こえてるのが、竜也の組織の構成員の会話であると気づいた。
ファーストジョブもセカンドジョブも斥候系のジョブを選択したため、相乗効果で探知能力が格段に上昇していた。
しかも、セカンドジョブによって、知力も上昇しているため、入ってくる情報を理解することもできていた。
当然、この能力は自分である程度操作できる。
会話を聞き分けることも容易だ。
「……今、気になる会話をしてる奴がいたな」
竜也はビル内で交わされている会話の一つに集中して耳を傾ける。
「でも、大丈夫なのか? 竜也は俺たちよりずっと前からダンジョンGo!をやってるんだろ? 結構レベルが高いんじゃないのか?」
「大丈夫だ。竜也は本格的にダンジョン探索をやってるわけじゃない。俺たちがグループを組んでダンジョン探索をすればすぐに追い抜ける。それに、こっちは結構な人数がいるんだ。竜也が一人の時に襲えばひとたまりもないさ」
「なるほど」
「今日の夜にもグループを作ってダンジョン探索をすることになってるんだ。お前もくるか?」
「あぁ。行かせてもらうよ。強くなってミカを守れるようになりたいからな」
「シスコンだな」
「うるせぇ」
その会話は竜也を追い落とそうとする構成員たちの会話だった。
「くそ、あいつら。そっこー潰してやる。いや待てよ」
竜也はいいことを思いつき、ニヤリと笑った。
***
「竜也ぁぁ! 今日がお前の命日だ! ここじゃあ近くにダンジョンもないからお得意のダンジョンエスケープもできねぇぞ!」
町外れの廃倉庫に呼び出された竜也の前には二十人ほどの構成員が立っていた。
その中心に立っている反抗グループのリーダーの男はニヤニヤと笑い顔を貼り付けて竜也を挑発するように話しかけてくる。
今日は組織の構成員が竜也を襲撃する日だ。
竜也は当然、このことを知っていたが、逃げも隠れもせず、この場所までやってきていた。
「ククククク」
「? 気でも狂ったか?」
「いや、なかなか滑稽だと思ってな。やっぱりお前一人だけ残しておいたのは正解だった」
「何を言っている?」
「……やれ」
「なぁ!?」
竜也が声をかけると、反抗グループのメンバーたちが一斉にリーダーに襲いかかる。
「お前ら、なんで!」
「うるせぇ! お前のせいでミカは。ミカはぁ!!」
「返せよ! 香織の笑顔を返せよ!!」
「母さんの仇!!」
「はっはっはっはっは!」
竜也はリーダーがボコボコにされていく様子を見ながら笑う。
竜也は上昇した情報収集能力と隠密能力を使って反抗グループの構成員について調べ上げ、その弱みとなるものを探し出した。
そして、妹が好きなやつは妹を、彼女が大切なやつには彼女を、母親が大切なやつには母親を人質にとっていうことを聞かせた。
当然、こんなことをやろうとした報いは受けてもらったが。
「おい、お前ら、その辺にしろ」
「ひゅー。ひゅー」
竜也は虫の息になったリーダーへの攻撃を止めさせる。
「竜也さん! こいつのせいで美香は酷い目にあったんだ。この程度じゃたりねぇよ」
反抗グループのメンバーたちは攻撃をやめるが、まだやり足りないようだ。
「こいつには美人の姉がいるって話だ」
「!!」
「今の時間なら、大学に行ってて、そろそろ帰宅するはずだ」
「や、やめへ」
「これがそいつの住所だが、どうする?」
竜也は懐から取り出したメモをチラリと反抗グループのメンバーたちに見せる。
その紙にはリーダーの姉が住んでいる下宿の住所が記されていた。
「行きます!」「行かせてください!」「ミカと同じ目に合わせてやる!」
竜也はチラリと地べたに這いつくばっているリーダーの方を見る。
リーダーはすがるように竜也の方を見上げてくる。
「やるよ」
「やったぁ!」「俺が最初だ!」「ミカ。ミカぁ!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ははははははは!」
男たちは我先にと倉庫から出ていく。
リーダーの慟哭が響く倉庫で、竜也は笑い続けていた。
◇◆◇
竜也はこれまで、ファーストジョブに匪賊、セカンドジョブに盗賊のジョブをつけて情報収集をこなすことで、部下たちを恐怖で縛り上げてきた。
構成員たちに嫌われていることはわかっている。
セカンドジョブがなくなったことで、情報収集能力は格段に落ちている。
今襲撃をされたら反撃できるかは怪しい。
「次だ!」
竜也がスマホを確認するが、今発生しそうな案件は残っていなかった。
期待できそうな案件は一つあるのだが、進捗は思わしくないらしい。
「チッ。ノロマが」
竜也は携帯で連絡を取る。
「おい! 例の女『京子』とかいう女はまだ見つからねぇのかよ!」
「ヒィ! すみません。学校にも出てきてないみたいで」
「母親からの許可はもらってんだ。さっさとさらって風呂屋におとしちまえ!」
「は、はぃぃぃぃ!」
竜也は苛立たしげに電話を切った。




