第32話 教えて。ヘルプ先生!①
「お、ヘルプにダンジョンの種についての情報が増えてる」
「本当ですね」
アプリのヘルプを起動すると、横から俺のスマホを京子が覗き込んでくる。
ダンジョンの種について調べてみると、すぐに見つかった。
ほんとヘルプ先生だ。
疑問はなんでも答えてくれる。
俺たちに全く知識がないことには何も答えてくれないのが玉に瑕だけど。
「ダンジョンを作るですか」
「本当にダンジョンの種なんだな」
ダンジョンの種はその名の通り、ダンジョンを作るための種となるものらしい。
周りの負の感情を吸収しながらダンジョンは大きくなっていくそうだ。
自分でダンジョンに潜ることもできるし、大きくなると、外部の探索者も入れられるようになる。
俺のヘルプを見ながら、京子が自分のアプリを確かめてみると、ダンジョンGo!のアプリの中にダンジョン作成という項目が追加されていた。
そして、内部のモンスターなんかも自分で設定することが出来るらしい。
今は集めた負の感情、DPがなくてモンスターを設置したりはできないみたいだが、部屋の形を変えたり、通路をつけたりは出来る。
京子は部屋の形を星形にしたり。通路を足したり色々いじって見ているようだ。
俺もヘルプを閉じてダンジョン作成の画面を開いてみる。
「あれ? このダンジョン、俺と京子で共有になってるみたいだ」
「本当ですか? わ。本当だ」
俺がダンジョン作成を開いてみると、そこには星型の部屋の各頂点に通路が設定された奇怪なダンジョンが映し出された。
京子が自分のアプリでダンジョンをいじると、俺のアプリ内のダンジョンも形を変える。
よく考えると、ダンジョンの完全踏破でダンジョンの種が手に入った。
そして、そのダンジョンは俺と京子の二人で攻略したのだから、共有されていて当然か。
俺たちは二人でダンジョンを色々といじってみた。
***
「結構面白いな」
「そうですね」
俺たちは、ダンジョンを出て、新宿の公園でダンジョンGo!のアプリをいじっていた。
色々といじってみて、わかったことがある。
まず、このダンジョンにはどこからでも突入することができた。
二人がある程度距離を取っても突入できたので、多分どちらか片方しかいなくても潜ることが出来るのだろう。
また、脱出場所は自分が潜った場所と京子がいる場所の二箇所を選択できた。
簡易的な瞬間移動も可能なようだ。
本当に便利になったと思う。
だが、ダンジョン内からはメールもできず、相手が何をしているかはわからないので、脱出するときは自分が探索を開始した場所にしようと約束した。
脱出した時にトイレにいたり、お風呂に入っていたりしたら大変だからな。
ラッキースケベ断固阻止だ。
「何をするにもDPが必要みたいだけどな」
「そうですね」
ダンジョンは簡単に形を変えるくらいならDPは不要だが、部屋を増やしたりするのはDPが必要だった。
そのDPの溜まるスピードは場所によって違う。
ダンジョンがたくさんできているあたりだと、DPの溜まるスピードも早く、今いる公園とかだとほとんどたまらない。
昼の場合、駅前やオフィス街など、人の多いところだとかなり多くのDPを回収することができた。
ダンジョン内ではたまらないらしく、ダンジョンを出るまではDPは0のままだった。
いや、攻略済みのダンジョンにいたからたまらなかったのか?
その辺は要確認だな。
そして、DPを使ってダンジョンのランクを変更することができる。
ダンジョンのランクを上げればDPは減少するが、ランクを下げれば減った分のDPは戻ってくる。
ダンジョンのランク変更も含め、ダンジョンの編集はダンジョン内に人がいない場合にだけすることができ、俺か京子のどちらかがダンジョン内にいる場合は編集がロックされてしまった。
「何より面白いのはモンスターを設置できることだな」
「そうですね。これで訓練場所には困らなさそうです」
DPを使ってモンスターを配置することもできる。
設置したモンスターは俺たちにも襲いかかってきてくれるので、ダンジョン内にモンスターを設置して、訓練することもできた。
このダンジョン内は他のダンジョン同様に時間が十倍になるので、これからはこのダンジョンで鍛錬をすればいいだろう。
俺も京子も今回の戦闘中にかなりスキルや強化された体の使い方に慣れた。
そのおかげで、今までどれだけ適当に戦っていたかに気づくことができた。
どれだけ強力なスキルやステータスも、ちゃんと使いこなさなければ宝の持ち腐れだ。
今までは高いステータスでゴリ押しできていたが、いつまでもそれは続かない。
現に、今回、Dランクに上がったダンジョンでは命の危険さえあった。
俺たちはせっかく手に入れたこのダンジョンで鍛錬をすることを決めていた。
「でも、危険はなさそうで良かったですね」
「そうだな」
Dランク以上になるとダンジョンの入口は外部に設置することもできるが、設置しないこともできるようだ。
勝手に外にダンジョンを作ってしまわないということは、あまり危険もないということだ。
ちなみに、俺たちが作ったダンジョンを誰かに完全踏破されてしまうと、俺たちの持ってるダンジョンの種が踏破した相手に移ってしまうので、無闇に入り口を作るのはダメなようだ。
俺たちが死んだ後どうなるかわからないが、流石にそこまでは面倒見れない。
「じゃあ、昼飯にしようぜ」
「そうですね」
俺たちはお弁当箱を開いて昼食を始めた。




