第29話 今日の晩御飯はどっか美味しいところに食べに行こうぜ③
「はっ!」
「「「「「「「「「グギェ」」」」」」」」」「ギョ」
一刀のもとに九匹、いや、十匹のモンスターを切り裂く。
切られたモンスターはボフッと軽い音を立てて煙になる。
戦い始めてからどれだけの時間が経っただろう?
十分? 三十分? はたまた一時間か?
京子の補助魔法で体感時間が引き延ばされているので、どれだけ経ったかはわからない。
倒したモンスターの数も、百から先は数えていない。
だいぶ効率的に倒せるようになってきて、一撃で倒せるモンスターの数もだんだん増えてきた。
同時に十匹前後は倒せるようになってきている。
今、目算を間違えたのは加速の魔術が切れかけているからだろう。
「『高加速』!」
だが魔法が切れかかると、京子がすかさずかけ直してくれる。
俺は再び加速した世界で、左手に持った小太刀を振るう。
「「「「「「「「「グギェ」」」」」」」」」」
今回は確実に十匹のモンスターを倒すことができた。
途中から、左手にも予備の小太刀を装備して戦っている。
かっこいいとか、二刀流のスキルに目覚めたとかではない。
ただ単に手数が少しでも多く欲しかったからだ。
両手で一本ずつ小太刀を握れば単純計算で攻撃スピードは二倍になる。
こんなことができるのも、京子が支援魔法をかけてくれるおかげだ。
『高加速』の魔法のおかげで敵がゆっくりに見えるので、考える時間的余裕が多いからな。
「『快癒』!」
快癒の魔法が飛んできて、疲労がスッと抜けていく。
どうやら、解毒などもできる快癒の魔法には疲労を取り除く効果もあるらしい。
無くなって初めて自分が疲労していたことに気づく。
ほんとに絶妙な支援だ。
俺は心の中で京子にお礼を言いながらモンスターを倒す。
京子のおかげで常にベストなコンディションでモンスターに対峙できる。
京子がいなければ今頃やられていただろう。
「「「「「「「「「「グギェギェギェギェ」」」」」」」」」」
「『火遁・龍咆』」
「「「「「「「「「「グギ……」」」」」」」」」」
俺は飛び掛かってきたモンスターの群れを火遁の術で一掃する。
このモンスターの群れと戦って得たものは多い。
まず、体が思うように動くようになった。
こうなって、今まで、どれだけ上がったスペックに振り回されていたのかがわかる。
武器を両手に装備できるようになったのはこれのお陰でもある。
これからは素振りとかもした方がいいかもしれない。
それに、体の扱いに慣れるといいことがもう一つあった。
体が思うように動くようになると、自分の体の中に流れる魔力を感知できるようになってきた。
そして、魔力が感知できるようになると、火遁や木遁といった術が思うように放てるようになった。
MPはかかるが、定期的に忍術で大量のモンスターを一掃できるから、戦闘はかなり楽になったと言っていい。
もう負ける気がしなかった。
「どうした? 来ないのか?」
「グギェギェ」
地面を覆い尽くすほどにいたモンスターは気付けば数えられるくらいに減っていた。
いや、ごめん。見栄を張った。
まだ百匹くらいいるから数えるのは無理だわ。
だが、確実に数は少なくなっていた。
残ったモンスターたちは攻め手が思いつかないのか、攻めあぐねている。
逃げてくれればいいんだが、そういうわけにはいかないらしい。
「グギェェェェェェェェェェ!!」
「!!」
「な、なんですか?」
「どうやら親分がやってきたみたいだな」
通路の先から大きな白いモンスターがのっそりと姿を現す。
このダンジョンのボスの色欲の大醜兎だ。
「「「「「グギェギェギェギェ」」」」」
ボスの声を聞いて、モンスターたちは一斉にボスの下へと向かっていく。
さっきの咆哮は仲間に対してのものだったらしい。
そして、ゆっくりと姿を現したダンジョンボスと目が合う。
狭い通路にいるせいか、心なしかいつもより大きいように見える。
いや、実際、大きいのだと思う。
「第二ラウンドってことかな」
「みたいですね」
一度攻撃の波が止んだため、俺も京子の近くまで下がる。
「ここからはまた一段とキツくなりそうだけど、京子は大丈夫そうか?」
「はい! サグルさんこそ大丈夫ですか?」
「京子がいてくれればまだ何時間でも戦えるよ」
「!!」
俺たちは互いにまだまだ戦えることを確認し合う。
多分、京子のMPは切れかかっている。
そう長い時間は戦えないだろう。
俺だって気合いだけで戦っているようなものだ。
HPやSP的なものから言うと、まだまだ戦えるのだろうが、そういうものではない何かが限界を訴えている。
でも、今はそんな事実より、軽口の方が重要だ。
「……グギェ」
ボスの声を聞いて、醜兎が一斉に俺の方に向かってくる。
第二ラウンドが始まった。




