第27話 今日の晩御飯はどっか美味しいところに食べに行こうぜ①
「『高加速』『高強化』」
「サンキュ。京子。『隠密』」
「グギェ?」
「『暗殺』」
「グギェェェェ!!」
――――――――――
色欲の醜兎(E)を倒しました。
経験値を獲得しました。
報酬:248円獲得しました。
ドロップアイテム:醜兎の毛皮 を手に入れました。
――――――――――
倒した兎がいつものように煙となって消えていく。
どうやら、ドロップアイテムが手に入ったらしい。
幸先いいな。
「お疲れ様です」
「あぁ。ありがとう」
京子がいつものようにタオルを渡してきてくれる。
俺はそれを受け取ってとりあえず、額を拭う。
京子と一緒に潜り出して、そろそろ一週間になる。
俺たちのダンジョン攻略は順調だ。
毎日三つずつのペースでダンジョンを攻略しており、すでに十個以上のダンジョンを攻略していた。
十個脱出なしでダンジョンを攻略したということは、京子も称号『十全十美』を手に入れたということだ。
俺がダンジョンの地図を知っているということがバレてしまった。
まあ、だからと言ってどうということもなく、「攻略が順調だったのはこれがあったからなんですね」というコメントをもらっただけだったが。
特に責められることはなかったが、言葉に棘があるように感じたので、その日は帰りに美味しいデザートをご馳走して、ご機嫌を取った。
女の子って不思議だよな。
あの体のどこにあんなに大量のデザートが消えるんだろう?
俺たちがいくつものダンジョンを攻略したせいで、歌舞伎町のEランクダンジョンはかなり数が減ってきた。
残っているダンジョンはここと後もう数個だけだ。
流石に全部攻略してしまうのはまずいだろうということで、今潜っているダンジョンを攻略してしまえば別の場所に移動する予定だ。
渋谷を避けたとしても、新宿以外にも銀座や品川みたいにダンジョンが多いところはまだまだある。
明日からは銀座の方に行ってみる予定だ。
「サグルさんはいつもすごいですね。Eランクモンスターを一撃なんて」
「いやいや、京子の補助魔法のおかげだよ」
京子は見習い聖女になり、間違いなく補助魔法や回復魔法の精度が上がっていた。
それに、自分のかけた支援魔法の効力や残り時間が視覚的に見えるようになったらしい。
さすがは支援極振りの職だ。
攻撃と防御がガタ落ちしたデメリットと同等くらいのメリットはあった。
魔法の効果についても、ジョブを切り替えた直後はランクが下がったので、効果も下がっているように思ったが、それは一瞬のことだった。
ランクⅡになる頃には魔法の効果すら上回っていた。
その上、ランクⅢになると『高加速』や『高回復』のような高位呪文を覚えた。
高位魔法だけあって、魔法の効果はかなり高い。
見習い聖女は見習いNINJAのように簡単にはレベルが上がらないみたいで、もう十個くらいダンジョンを踏破したが、ランクはまだⅢ止まりだ。
それでも、僧侶より見習い聖女を選んで正解だったと今は思ってくれているみたいだ。
「疲れてませんか?」
「俺は大丈夫だ。京子は?」
「私も問題ないです」
「じゃあ、奥にす――」
――ズズン
そのとき、地面から突き上げるような震動を感じた。
俺は武器を構えて辺りを警戒する。
「なんだ?」
「わかりません」
京子もこんなことは初めてらしい。
ダンジョン内は時間の流れも違うし、外と別空間になっているようだから、外で地震が起きたからダンジョン内でも揺れたなんてことはないだろう。
地震はすぐに収まり、その後しばらく様子を見てみたが、特に何も起こらない。
「一旦脱出す――」
「「「「「「「「「「「グギェギェギェギェギェギェギェギェギェギェ」」」」」」」」」」」
「な!」
俺たちが脱出をしようとすると、通路の向こう側から何十匹もの醜兎が押し寄せてきた。
あの数は相手にするのは難しい。
「京子、逃げるぞ!」
「はい!」
俺は京子の手を取って逃げ出す。
「くそ。脱出できない!」
走りながら確認してみるが、ダンジョンGo!の脱出ボタンはグレーアウトしていた。
どうやら、すでに戦闘中扱いになっているらしい。
「「「「「「「「「「「グギェギェギェギェギェギェギェギェギェギェ」」」」」」」」」」」
「追ってきてます!」
ただ追ってきているだけじゃない。
間違いなく近づいてきてる。
しかも、心なしか、さっきより数が増えてる気がする。
「グギェギェギェギェギェギェギェギェギェギェ」
「ま、前からも」
「邪魔だ! 『風遁・空纏』」
「グギェ」
俺は前からきた醜兎を風を纏わせた足で蹴り殺す。
さっき京子に『高強化』をかけておいてもらってよかった。
今の状態なら武器を使わなくても醜兎を倒すことができる。
「京子、ごめん」
「え? きゃっ」
俺は京子をお姫様抱っこの体勢で抱える。
武器なしで数匹のモンスターを倒せるなら、京子を抱えて逃げる方が生存確率が高い。
俺は自分のダンジョンGO!を取り出して逃げる方向を考える。
ダンジョン中のモンスターが俺たちの方に向かってきているらしく、逃げ場はなさそうだ。
俺のアプリの映像を見て、京子は顔を青くする。
「これはまさか、ランクアップ現象?」
「京子! 知ってるのか?」
「は、はい。ダンジョンがランクアップするタイミングでダンジョンの中にいるとダンジョン中のモンスターが襲ってくるそうなんです。だからケンタはできたばかりのダンジョンしか潜らないようにしてました」
「ダンジョン中のモンスターが……」
走りながらアプリを確認すると、モンスターを現す赤い点はどんどん増えていく。
階段からも溢れるように出てきているので、本来できないはずの階層間移動もできるようになってるんだろう。
逃げ場はなさそうだ。
「なんとかする。だから、京子は俺の支援魔法が切れないようにずっとかけ続けてくれ」
「……わかりました」
俺のお願いに京子は力強くうなずく。
俺は微笑みを返すと、マップ上で見つけたある場所に向かって一直線に駆け出した。




