第18話 共同寮でのドキドキ生活♪③
「これでよし!」
俺たちは一通り修繕を終わらせた後、それぞれの部屋に分かれて休憩をしていた。
修繕は予想以上に大変だった。
風呂もトイレも何十年も修繕されていない様子だったのだ。
そのため、まずは掃除から始める必要があった。
綺麗な状態の方が修繕に必要となるドロップアイテムの量もかなり減らせるからな。
そうやってドロップアイテムの量を減らしたが、それでももらってきたドロップアイテムでは最低限の修繕をするだけで限界だった。
ちなみに一番大変だったのはお風呂だ。
お風呂は水属性と火属性、両方の耐性が必要になる。
その何が難しいかというと、その二つの相性の悪い属性に対する耐性をつけると魔力のバランスが悪くなってしまうのだ。
そのため、他の属性の素材を使ってバランスを整えないといけないらしい。
風呂の修繕で持ってきたドロップアイテムのほとんどを使ってしまったくらいだ。
トイレやキッチンの修繕を終えると、俺たちのアイテムボックスはもうスッカラカンだ。
アイテムに余裕がなかったから、風呂もトイレも共用のままだし。
余裕があればできれば男女くらいは分けたかった。
でも、男が俺しかいない以上、男女を分けるということは俺専用のものを作って欲しいというのと同義だ。
流石にお願いするわけにも行かない。
「それに、悪い点ばかりじゃなかったしな」
修繕作業中、雅はずっと楽しそうだった。
その理由はこの寮の建物自体にある。
この寮は相当前のものだ。
にもかかわらず、ダンジョンに飲み込まれることもなく、維持され続けている。
それは、寮自体が周囲の魔力を吸って自力で進化し続けてきたからのようだ。
俺にはよくわからなかったが、寮の色々なところに自己進化の形跡があったみたいだ。
この自己進化のすごいところは、人間にはできないくらいの効率性だ。
自然界でもこういうことはよくある。
フクロウの翼の構造が静かに飛ぶことに最適であったり、鮫肌が流体力学的に最適な突起を持っていたりとかだ。
人間が動物の構造を真似ることもよくあるらしい。
この寮も魔力の消費が最低限になるように最適化されており、雅から見ても驚くような部分がたくさんあったみたいだ。
色々と参考になったみたいで、一部をサンプルとして確保したりしていた。
他の寮は探索者が修繕していたから、そんなことになってるのはこの寮だけだろう。
今も雅はルンルンで寮のあちこちを調べている。
煤まみれになりながら暖炉を調べ始めたあたりで俺たちは離脱させてもらった。
流石についていけない。
完全に自分の世界に入っていたみたいだし。
ここは寮の中だから、危険はないみたいだし一人でも大丈夫だろう。
念の為、何かあれば大声を出すようには言ってある。
この寮はそこまで広くないし大声を出してもらえればどこにいても大体聞こえるし、すぐに駆けつけることができる。
それに、パーティを組んでいるため、俺たちは魔力的なもので繋がっている。
この寮はダンジョン内なので、雅が危険な状況になればなんとなくわかる。
ダンジョン内ってのは意外と便利だよな。
ずっとダンジョン内で生活したいくらいだ。
俺たちの知らないデメリットがあるかもしれないから、そんなことはできないけど。
「さて、そろそろ風呂がいい湯になってるかな?」
寮中を修繕してまわって結構汗をかいた。
そのため、京子たちと相談して、一旦風呂にしようということになったのだ。
京子たちは自分の部屋の整理を先にやるつもりらしく、俺の方が先に入っていいと言われている。
本当はすぐ入ろうとしたのだが、勝手がわからず、熱くし過ぎてしまった。
ここの風呂は沸かし風呂という昔ながらのものだった。
よくわからず、とりあえず薪で風呂を温めてみたが、ちょっと入れないくらいに熱くなってしまったのだ。
そのため、こうして少し冷ましているところだ。
水をぶち込んでも良かったのだが、どうやら、水は魔道具で出しているようで、その魔道具もかなり古くてあまり使いすぎると壊れてしまうかもしれなかった。
その辺に詳しい雅は今楽しそうに領内を探索しているだろうから、捕まえて聞くのも悪いし。
そのため、こうやって自然に冷めるのを待つことにした。
幸い、この寮にはいま、俺たちしかいない。
他のパーティとバッティングすることもないし、汗を流したいという程度なので、そこまで早く風呂に入りたいわけでもない。
部屋の整理もしたかったし、ちょうど良かったと言える。
部屋は一人一部屋となっている。
四畳半ほどだが、一人で寝泊まりするだけなら十分だ。
この寮は部屋だけは多いのだ。
問題児ばかりを集める場所だから、あまり接触させないように個室にしているみたいだ。
とは言っても、壁は薄いので、今隣の部屋で京子と朱莉が楽しそうにしている声が若干漏れ聞こえてくる。
ちなみに、右隣が京子で左隣が朱莉となっている。
部屋はたくさんあるのに、こうやって密集して部屋を確保したのは何かあった時のためだ。
京子がもしもの時は近くにいた方がいいと強く主張したのでこういう形となった。
修行しにきてるので、どうせ寝る時くらいしか部屋に戻らないだろうし、どっちでもいいしな。
「♪〜」
俺は軽い足取りでお風呂場へと向かった。




