第16話 共同寮でのドキドキ生活♪①
「ついたぞ、ここがお主らが今日から生活する寮じゃ」
「え? ここですか?」
俺たちが里長に案内されたのは木造のボロい建物だった。
築何十年と経っていそうだ。
ダンジョン内の建物が全部こうなのかというとそういうわけではない。
商店エリアの建物やここにくる途中に通り過ぎてきた。
そこらへんの建物はかなり近代的なものだった。
だから、こんなことになっているのはここだけだ。
「えっと。ほんとにここですか?」
「すまんの。ほんとにここなんじゃ」
里長の話では、ここは自分の組織の寮に居られなくなった学生や講師の人が一時的に身を寄せる場所なのだそうだ。
そんな場所に俺たちが案内されたのは大槌家が自分の組織の寮というものを持っていないからだ。
それには大槌家は特殊な立ち位置であることが関係している。
大槌家は支援系のジョブをメインとする組織だ。
戦闘力という面では他の家に一歩劣ることになる。
だが、他の家は大槌家の支援があるのとないのとではダンジョン探索のしやすさが全然変わってきてしまう。
自前で生産職を用意しようにも、その生産職探索者が死んでしまえばまた、ゼロから生産職探索者を育成する必要がある。
最悪、Cランクダンジョンに潜り続けられなくなって生産職探索者が育つまでDランクのダンジョンに潜らないといけなくなってしまう。
そうなれば、稼ぎは減るし、成長もできなくなってしまう。
だが、それがもし大槌家所属の探索者であれば次の生産職探索者が育つまで大槌家が支援をすることになる。
Cランクダンジョンに潜りながら生産職探索者を育てられれば探索者の育成もかなり楽になるし、自分たちのレベルだって上げることができる。
そういう理由もあり、大槌家の生産職探索者は引く手数多なのだ。
上級探索者デビューをしても、大槌家の人間は基本的に外部のパーティに参加する。
大槌家の人間だけでパーティを組む場合でも、レイドの一部になったり、もしくはレベル上げのために有名なCランクダンジョンに潜る形になる場合が多いそうだ。
そういうこともあり、上級探索者になるための修行場である隠れ里で大槌家は本拠地を持たず、どこかの組織に身を寄せることになる。
それに、本拠地を持たないのは大槌家だけではない。
毎年隠れ里に人が出せるとは限らないような中小の組織はどこかの組織の傘下に入ってその組織の寮を使わせてもらっているし、回復職や支援職をメインのジョブにするような家は大槌家と同じように本拠地を持たずにどこかの組織に参加するようにしている。
大槌家ほどの歴史ある名家でこの方式をとっている家はほとんどないらしいが。
それに、そういう環境なので、どこの組織も客員探索者のための部屋とかが用意されている。
国内最大規模の御剣家なんかは数百人規模で客員探索者がおり、客員用の訓練所付き建物まであるんだとか。
スケールが違うな。
「それでここですか」
「すまんのぉ。普通は隠れ里に入る準備期間のうちにどこの組織の客員探索者になるか決まるもんなんじゃ。じゃから、はぐれものが入るこの寮には本来来るはずじゃなかった。じゃが、今年は色々とバタバタしておっての。ここを使うことになってしもうた」
本来この共同寮は自分の組織内で問題を起こしたり、折り合いがつけられなかったりした探索者が入れられる場所だ。
そのため、この共同寮で生活するということは罰の意味合いもある。
そんな理由もあり、あまり良くない環境になっている。
他の寮は管理している組織が見栄のため、必要以上に豪華にしているというのもある。
隠れ里には多くの組織が集う。
そのため、個々の寮がなめられるような環境だった場合、その家全体が舐められかねない。
そういう時は実力で黙らせてもいいのだが、それはそれで手間だ。
それなら、自分の分より少し豪華くらいにして舐められないようにしたほうがお得だ。
豪華にしすぎると逆に張子の虎と馬鹿にされるんだが。
そういうわけもあり、各組織の寮はこの共同寮よりも数段豪華になっている。
共同寮は管理人もいないし、定期的に整備されているわけでもない。
風呂トイレは共同だし、外部から問題のある探索者が放り込まれることだってある。
俺たちは問題を起こしたわけではないので、本来は入れられる場所ではないのだ。
だが、今年は最大派閥の御剣家がゴタゴタしていることや、大槌家の本拠地でのダンジョン発生騒動があった。
そのため、講師や協力してくれている探索者の一部が組織に引き上げられたり、生徒側も組織側が忙しくて面倒見きれなくなったものたちを隠れ里に送ってきたりして、隠れ里も色々と大変だったらしい。
「各組織には当分の間は問題のあるものを共同寮に追い出さんように依頼しておくし、自分らで修繕する分には自由じゃから、なんとかしてくれ」
「……わかりました」
大槌家の騒動には俺たちも関わっている。
そこが原因の一つだと言われてしまえば強く言うわけにもいかない。
幸い、修繕なんかは自由にしていいらしい。
雅もやる気満々みたいだし、自分たちで快適にしていく方向でいいんじゃないかと思う。
「それでは、また何かあれば声をかけてくれ。お主らには期待しておるよ。ふぉっふぉっふぉっ」
里長はそう言い残すとその場から去っていった。




