第12話 隠れ里②
「「「わぁ!」」」
「すげぇ」
「ふぉっふぉっふぉ。ようこそ。隠れ里へ」
俺たちはそろって驚きの声を上げる。
門を抜けるとその先には近代的な街並みが広がっていた。
ダンジョンの中にある街だから、もっと不便な場所を想像していた。
だが、隠れ里は十分に生活できそうなくらい発展していた。
「わー! クレープ屋さんだ。美味しそう! キョウちゃん! いこ!」
「ま、待って。朱莉ちゃん!」
朱莉は京子を引きずるようにして近くにあったクレープ屋さんの方に駆けていく。
お店はクレープ屋さんだけではなかった。
その向かいにはおしゃれなカフェがあるし、洋服店や小物を置いている場所もある。
どの場所も若者向けって感じだ。
ここに来るのがだいたい若者だからなのだろう。
おじさんとしては少し肩身が狭い。
「ふむふむ。なるほど」
そんなふうに俺たちが街並みを観察していると、後ろから雅の声が聞こえてくる。
振り返ってみると、雅は真剣な表情でさっき潜ってきた不思議な門を観察していた。
「何かわかったのか?」
「そうだね。この門は少し不思議な作りをしているみたいだ」
雅は満面の笑みで顔を上げる。
めちゃくちゃ語りたそうにしている。
雅って語りたがりだよな。
掲示板でも色々なことを説明しまくって説明キャラみたいなポジションを確立してたみたいだし。
「少しじゃないくらい不思議なものに見えるけど」
「そうだね。でも、ダンジョン関係の物の中ではそこまで不思議って物でもない。これと同じようなものをサグル君もいつも使ってるからね」
「俺もいつも使ってる?」
「何かわかるかい?」
「う〜ん」
こんな別の場所にワープするようなものを俺は使ってたっけ?
ダンジョン関係のものだよな?
スキルの中に短距離ワープみたいのものはないし、武器も短剣だ。
防具だって特殊なものは使っていない。
俺は雅のように色々な武装を駆使して戦うタイプではないのだ。
「……わからん。お手上げだ」
「ダンジョンGo!のアプリだよ」
「あぁ! なるほど!」
そう言われれば似たところがある。
アプリを使えばダンジョンという別の場所に飛ぶことができるし、アプリから異空間にしまった武器や防具を取り出すこともできる。
確かに、ワンタップでダンジョンに入ることができる『ダンジョンGo!』のアプリは急に別の場所に飛ばされたこの門と似たよう性質を持っている。
「もっというと、この前妖刀が作ったダンジョンの抜け穴が一番近いね」
「ということは、この隠れ里はダンジョンなのか? ダンジョンの中にダンジョンがあるってこと?」
「そういうことになるね。まぁ、そこまで珍しいことじゃない。今までだってボスの部屋だけ他の場所と雰囲気が違ったりしただろ? あれと大きくは違わない」
「そういえばそうか」
Dランクくらいになるとボスの部屋が他の部屋より大きくなっていることがザラにある。
天井がやけに高かったりとかな。
明らかに降りてきた階段よりも天井が高くて空間歪んでるだろと思ったことも何度かある。
どうやら、ボス部屋だけ別ダンジョン扱いで、時空が違っていたみたいだ。
「ふぉっふぉっふぉっ。大槌家のお嬢さんはなかなか博識のようだね」
「あ、ありがとうございます」
里長は優しげな笑みを浮かべて話しかけてくる。
作り物の笑みではなく、本気で喜んでいるみたいだ。
「お嬢さんの言うとおり、『ダンジョンGo!』のアプリと同じ原理でできておる。正確に言うと、『ダンジョンGo!』のアプリの前身となった『ダンジョン案内板』という門が元じゃな」
「へー」「なるほど」
『ダンジョンGo!』がアプリになる前はダンジョンができたところに探索者だけが見える看板が発生して、それに触れるとダンジョンの中に入れるような仕組みだったと聞いたことがある。
確かに、アプリよりもそっちの方が近そうだ。
「壊されては困るが、好きなだけ観察するといい」
「いいんですか!」
「もちろんじゃ。こう言う門をメンテナンスできる職人は日本でも数少ないからのぉ。お嬢さんが見つけてくれた『魔導装備技師』には期待しておるよ」
「はい!」
生産職の中でもこう言う武器でも防具でもない特殊なものを加工できる職人は数が少ないらしい。
生産職でもレベルを上げるためにはモンスターを倒す必要がある。
そのため、生産職でも戦闘よりのジョブはモンスターを倒すことに直接役に立つ武器や防具に特化したジョブになりやすいのだそうだ。
結果、建築をしたり、特殊な道具を作ったりと言う生産職は少なくなる。
そのため、こう言う門のメンテナンスをする職人は戦闘できない生産職をパワーレベリングすることで育成しているそうだ。
今この門をメンテナンスしている生産職も、戦闘はからっきしでパワーレベリングをした人なのだそうだ。
パワーレベリングするにも、門をメンテナンスできるレベルにするためには危険なAランクダンジョンや、最低でもBランクダンジョンの深部でレベリングする必要がある。
お荷物を抱えてのダンジョン探索はトップ探索者でもめちゃくちゃ危険だ。
それに、トップの探索者になってくると個性の強いものが多くなり、護衛なんかには向かない存在が多い。
だから、自分で自分の身は守れて、武器以外のものも生産できる雅の魔導装備技師は結構期待されているらしい。
雅は少し嬉しそうに気合を入れ直していた。
「サグルさ〜ん!」
「サグルっち!」
俺たちがそんな話をしていると、京子と朱莉が元気に戻ってきた。




