第8話 そんなはずない! 不正だ! 不正に決まってる!④
「まずいよ美優ちゃん! 私たちも早く行かないと!」
「う、うん! 行こうみんな!」
「「「うん!」」」
美優は莉子に声をかけられて我に帰る。
そして、パーティメンバーと一緒にグランドフィールドへと入っていく。
さっきの一撃はすごかった。
一撃でモンスターを倒してしまう威力もそうだが、動きがすごく綺麗だった。
美優が思わず見惚れてしまうくらいに。
「美優ちゃん! このまままっすぐいくとモンスターがいる!」
「わかった! ありがとう夏菜子ちゃん!」
美優は走りながら『ダンジョンGo!』を起動し、自分の愛武器を取り出す。
出てきたのは美優の身長の二倍はありそうな大きな槍。
穂先の根元から三叉に分かれている十文字槍という奴だ。
美優はそれをモンスターのいる方へと向ける。
チラリと夏菜子ちゃんの方を見るとうなづいているから方向はこっちであってるみたいだ。
槍を向けた方角を睨みながら美優は戦闘の準備を進めていく。
「涼子ちゃん。秋子ちゃん。バフ頂戴!」
「うん!」「わかった」「「『強化』!『加速』!」」
涼子ちゃんと秋子ちゃんが美優にバフをかける。
体が軽い。
モンスターに向けて一気に加速する。
「はぁぁぁぁ! 『突貫』!」
バフが完全に体に馴染む。
それと同時に美優はスキルを発動した。
まだ美優からはモンスターが見えない。
普通であればモンスターが見えてからスキルを発動する。
だが、美優にとっては関係ない。
モンスターを倒すまでまっすぐに突き進むのみだ。
美優の背丈よりも高い草を薙ぎ倒しながら美優は進む。
「はぁぁぁぁぁ!」
「びゃ?」
そのままの勢いで美優は亀のようなモンスターを跳ね飛ばす。
「びゃああああ」
モンスターは美優と接触すると空中へと高く打ち上げられる。
まるでトラックにでも跳ねられたみたいだ。
高く打ち上げられたモンスターは空中でHPを全損したようで、塵になって消えていく。
だが、美優は止まらない。
スキルの効果に任せてまっすぐ進んでいく。
「美優ちゃん! そのまままっすぐ!」
「わかったぁぁぁぁ!」
後ろから夏菜子の声が聞こえてくる。
このまままっすぐ進めばどうやらまたモンスターがいるみたいだ。
美優がそのまま突き進むと、すぐにモンスターに出くわす。
今度はトカゲ型のモンスターだ。
しかも、三体。
「いっけぇぇぇぇぇぇ!」
普通の探索者であれば躊躇するところだ。
三対一では分が悪い。
それに、トカゲ型のモンスターはデバフを多用してくるものも多い。
普通であれば相手のデバフ攻撃を避けながら長期戦を挑む。
だが、美優は構わず突っ込んでいく。
「じゃ?」
一匹のモンスターが美優に気づく。
大声を出して突っ込んでいっているのだ。当然だろう。
「じゃあああ」
モンスターは雄叫びと共に緑の液体を飛ばしてくる。
トカゲ型モンスターの多用するデバフ攻撃だ。
あの液体に触れたらスピードにデバフがかかってしまう。
「効かないよ!」
「じゃ!?」
だが、その攻撃は美優のスキルにぶつかると弾け飛んでしまう。
美優の技が弾き飛ばすのはモンスターだけじゃない。
相手の攻撃だって簡単に弾いてしまう。
「「「じゃじゃああ!」」」
美優の一撃は三体のモンスターを跳ね飛ばす。
先ほどのカメ型モンスターと同様にトカゲのモンスターも空中でチリになって消えていった。
「ふぅぅぅぅぅぅ」
美優はそこで立ち止まる。
パーティメンバーとの間にかなりの距離ができてしまったからだ。
「あっちはどうかな?」
美優はパーティメンバーを待っている間、サグルたちの様子を伺う。
美優の背丈ほどまで生い茂った草が邪魔だが、ジャンプをすればなんとかサグルたちの様子を伺うことができた。
ぴょんぴょんと何度もジャンプしながら観察すると、どうやら向こうも順調にモンスターを倒しているみたいだ。
「……きれー」
サグルは全く無駄のない動きでモンスターを的確に倒していく。
真正面にいる敵をひたすら倒していく美優とは対照的だ。
美優は今のように力押ししていく戦闘スタイルが好きだ。
何より、モンスターを思いっきり跳ね飛ばすのは気持ちいい。
だが、サグルのように一切無駄のない動きでモンスターを刈り取っていくというのもかっこいいなと思う。
「美優ちゃん。お待たせ」
しばらくして、莉子たちが追いついてくる。
「……」
「美優ちゃん? どうかした?」
「ううん。なんでもない」
「そう?」
ぼーっとサグルたちの方を眺めていた美優に莉子は心配そうに声をかけてくる。
ほんとになんでもないのだ。
気を取りなおすように美優は頬を数回叩く。
「夏菜子ちゃん。次はどっちに行けばいい?」
「あっち! 向こうに群れがいくつか集まってる。討伐数勝負だから数が多いところに行かないとね」
「わかった。行こう!」
夏菜子の指差した方に美優は進み始める。
モンスターがいるのはしばらく先らしく、スキルの発動はまだ少し後だ。
「莉子ちゃん」
「どうしたの?」
「あの人。なんて名前だっけ?」
「あの人? あぁ。敵のお兄さんね。確か、大穴探さんだったかな?」
「(サグルか……)」
美優はサグルの名前を小声で呟く。
(後でお話しできたらいいな……。無理だろうけど)
美優は大きくため息を吐いて再び討伐へと意識を集中していった。




