第7話 そんなはずない! 不正だ! 不正に決まってる!③
「討伐数を競うってあなたとですか?」
この講師っぽい人と討伐数を競うのだろうか?
講師をすると言うことはおそらく上級探索者だろう。
パーティメンバーがいないとしても、そんな人と対戦するのはちょっと厳しそうだ。
「くっ。そうじゃない」
「君たちの相手は美優たちだよ」
「ちょ、美優ちゃん!!」
声のした方を見ると五人組の女の子が立っていた。
声を出したのは真ん中にいる元気そうな子みたいだ。
隣にいるおとなしそうな子に止められてるから多分間違いない。
背も低く、ぱっと見、小学生くらいに見える。
「えーっと君たちは?」
「私は猪俣 美優! おじさんは?」
「おじ……」
「サグルさん!?」
「サグルっち! 大丈夫?」
「大丈夫かい? サグルくん」
いきなりのおじさん発言に俺は思わずショックでよろめく。
そんな俺を京子たちは優しく支えてくれる。
「大丈夫だ」
いきなりのおじさん発言に少しショックを受けてしまっただけだ。
自分で言う分には問題ないのだが、他人に言われるとショックを受けてしまう。
俺はまだ二十代なのに。
まぁ、小学生くらいの子からしたら二十代はおじさんか。
下手したら高校生くらいでもおじさん呼ばわりしそうだ。
「ちょっと美優ちゃん! すみません! すみません!」
美優の「おじさん」発言に俺がショックを受けていると、隣にいたおとなしそうな子が本当に申し訳なさそうにペコペコと頭を下げてくる。
他の子達もその子と同様に焦ったように頭を下げてきた。
よかった。
どうやら俺の見た目がおじさんっぽいってわけじゃあないみたいだ。
「……でも、手加減はしませんから」
「……そうか」
顔を上げたその子の瞳には強い意志が宿っていた。
これは一筋縄ではいかなさそうだ。
「……っち。お前ら。馴れ合うのはやめろ。ルールを説明するぞ」
スーツ男の一声で俺たちはスーツ男の方を向く。
男は不機嫌そうにこっちを見ていた。
なんでだ?
***
「では。始めるぞ」
ルール説明が終わるとすぐに試験が開始された。
ルールは簡単だ。
目の前のグラスランドフィールドというグランドでモンスターを討伐し、その討伐数を競うと言うものだ。
討伐数はダンジョンGo!のアプリログで確認を行うため、不正はできない。
注意すべき点と言えば、グランドの外に出ればCランクのモンスターが出るので、あまり外側には近づかないようにする必要があると言うことくらいだ。
俺たちがさっきまで使っていた通路は周りにかなり広い安全エリアがあるが、グランドは内部に弱いモンスターを発生させなければいけないと言う構造上、外はすぐCランクモンスターが発生してしまうらしい。
むしろ、グランドフィールドを維持している結界のせいでモンスターが近づきやすいまであるのだとか。
そう言う理由もあり、グランドフィールドの端には近づかないようにとのことだ。
結界のおかげかグランドフィールドの端は線を引いたように景色が変わっており、わかりやすかったが、下手をしたらギリギリまで近づいていたかもしれない。
その忠告は助かる。
「はじめ!」
「よーし。やるぞ!」
「頑張ろうね。美優ちゃん!」
「サグルっち! 一時の方向! 二十歩!」
「了解!」
「え?」「な!?」
俺たちははじめの合図と同時に駆け出した。
向かう先は一番近くにいた比較的倒しやすいモンスターだ。
「『暗殺』!」
「ぎぇ!?」
俺は一撃でカエル型のモンスターを切り裂く。
モンスターは一撃で絶命し、煙のように消えていった。
手応えから言ってDランクのモンスターというのは嘘じゃないみたいだ。
武器へのダメージもほとんどないようで良かった。
「大丈夫そうだ」
「よかった! じゃあ、次! 九時の方向! 十五歩」
「了解!」
後ろから朱莉たちが追いかけてくる。
もう少しで追いつくというタイミングで朱莉が指示を出してきたので、俺はそれに従って次のモンスターへと向かう。
グランド内には多種多様なモンスターがいるようだ。
その中には亀のように防御力が高そうなモンスターもいれば、狼型の群れをなしている奴もいる。
多分対処するモンスターの選定も課題の一つなんだろう。
その点、うちには朱莉がいる。
朱莉の索敵能力は正直ずば抜けている。
俺も索敵はできるが本職の朱莉ほどではない。
さっきの爬虫類系モンスターは隠密特化だし、次の獣型は攻撃特化だ。
どちらも暗殺メインの俺としては倒しやすい部類のモンスターになる。
「雅さん。十二時の方角、四十歩です」
「了解。サジタリウス。バルカン」
『イエス。マスター』
「ぎゃん!」
雅が朱莉の指示に従って攻撃する。
攻撃は命中したようで、遠くからモンスターの断末魔が聞こえてきた。
うちのダメージソースは俺だけじゃない。
雅だって攻撃できるし、今は索敵に集中してもらっているが、朱莉だってDランクであれば十分戦える。
これならなんとかなりそうだな。
「『暗殺』」
「ぎぇ!」
俺は少し安心しながら目の前のトカゲっぽいモンスターを切り裂いた。




