第6話 そんなはずない! 不正だ! 不正に決まってる!②
「よく来たな」
隠れ里の入り口まで辿り着くと、そこにはスーツ姿の男性が立っていた。
スーツといってもヨレヨレのスーツで、一見してくたびれたサラリーマンみたいだ。
富士の樹海でこんな人を見れば、もしかして自殺しにきた人なんじゃないかと疑うレベルだ。
はっきりいって周りからはかなり浮いていた。
(いや、それはこの人だけじゃないか。)
ダンジョンの中でスーツ姿なんて似つかわしくないと思ったが、よく考えると探索者はジョブごとに色々な衣装を着ている。
環境に合った服装をしているわけではない。
この前、大槌島でダンジョンに潜った時もなんかヘンテコな格好で潜ってた人もいたような気がする。
全身甲冑の人はまだいいが、ひょっとこのお面をつけた宴会芸をしてそうな人や着ぐるみを着ている人とかはあれが本当に装備だったんだろうか?
まあ、見た目と性能は必ずしも比例するわけではないようだし、あれでもめちゃくちゃ強い装備なのかもしれないが。
むしろ、強い装備じゃなければあんなおかしな格好しないか。
まさか趣味ってわけじゃないだろう。
日本のダンジョンなためか、ダンジョンの中が結構和風寄りなファンタジーな感じだから俺の衣装も浮いていないが、ゴリゴリの西洋ファンタジーな感じなら俺の衣装も浮いていたかもしれない。
……いや、今はゲームでも和風キャラとかいるし、西洋風の場所でもそこまで浮かないか。
この衣装だってゴリゴリに和風ってわけでもないし。
「ついてこい」
「え? そっちは里の方じゃないですけど」
スーツの男はそういって道を外れて森の方へと向かう。
道をまっすぐ行けば明らかに建造物っぽいものがあるからおそらくあっちが隠れ里だろう。
それとも、あれは幻術か何かで本物の隠れ里ではないのだろうか?
あり得そうだ。
「何を言っている。入里試験をすると言っているだろ。隠れ里に入れるのはそれに合格した時だけだ。まぁ、お前らが合格できるとは思えんがな」
(……なるほどね)
どうやら、これから試験があるらしい。
大槌家の当主である刀夜さんの推薦があるから、試験とかはないものだと勝手に考えていた。
まぁ、隠れ里はCランクのダンジョン内にある。
ある程度管理されているとは言え、ダンジョンの外よりは危険性は高いだろう。
一定以上の実力があるか試験するのはある意味当然か。
推薦だけなら本当に実力があるかわからないからな。
実力はないのにコネで推薦を勝ち取る奴とかもいそうだし。
「何してる! 早く来い!」
「「「「はい」」」」
俺たちはスーツの男の後を追った。
***
「お前たちにはこのグラスランドエリアでモンスターを討伐してもらう」
無言で案内された先にあったのは草原だった。
人の背丈くらいまで草が生い茂っており、その草がところどころ揺れていることから草むらの中にモンスターが隠れているのだろう。
俺の索敵にもかなりの数のモンスターが引っかかっているので、多分間違いない。
草むらのせいか、索敵がうまく機能しておらず、どれだけいるかは確認しきれないが。
(ここが隠れ里にある『グランドフィールド』ってやつか)
隠れ里には居住区の他に『グランドフィールド』と呼ばれるエリアがある。
隠れ里に通う上級探索者候補生が修行するための場所だ。
隠れ里はCランクダンジョン内にあるがそこで修行しているのはDランククラスの探索者だ。
Dランク最上位の探索者が集まっているとはいえ、覚醒していない探索者ではCランクのモンスターには太刀打ちできない。
だが、回復職や生産職ならまだしも戦闘職の探索者はモンスターと全く戦わずに修行するというのはほぼ不可能だ。
そこで、昔の人はダンジョン内に『グランドフィールド』と呼ばれる特殊なエリアを作り出す方法を編み出した。
グランドフィールド内ではCランクダンジョン内にも関わらず、Dランクダンジョンレベルのモンスターしか出ないそうだ。
まぁ、イレギュラーでCランクモンスターが湧くこともあるので、絶対安全とは言えないそうだが。
それに、これにも結構問題があるそうだ。
これをすることでダンジョンの成長を早めることにもなるらしい。
原理はよくわかっていないが、モンスターが発生する時に使われる魔力が全てボスの強化とダンジョンの成長に使われるからじゃないかと言われている。
それでもボス到達は楽になるし、ランクアップする前に攻略してしまえば問題ないからとこの技術を使って楽にダンジョンを攻略する手法が取られていた時期もあったそうだが、ランクアップしない段階でボスがワンランク上の力を持っていたりと、かなりの問題があったそうだ。
そのため、この技術の詳細などは極秘とされており、隠れ里のような特殊な場所でのみ使われているらしい。
旧家や企業系探索者が管理している場所であればCランクのダンジョンボスがBランクになってもBランク探索者をぶつければいいだけだからな。
なんにせよ、今やるべきことは目の前のモンスターを倒すことだ。
「わかりました」
「まて、ただ倒せばいいわけじゃない。お前たちには十分間で討伐できた数を競ってもらう」
「え?」
どうやら、まだ条件があるみたいだ。




