第5話 そんなはずない! 不正だ! 不正に決まってる!①
「ここが隠れ里か」
「やっとつきましたね」
大槌島を出た翌日。
俺たちは隠れ里にたどり着いていた。
「まさか、富士樹海の奥にこんな場所があるとはな」
富士の樹海の奥深く。
そこにあるCランクダンジョンの中に隠れ里は存在していた。
「そうだね。でも意外ってほどでもない気がするね」
「どうしてだ?」
富士の樹海といえば観光地にもなっている有名な場所だ。
そばにある富士山には毎年何万人という人が訪れている。
俺はこんなところにダンジョンがあるとは思っていなかったが、雅はそうではないみたいだ。
疑問に思って俺が聞くと雅はこともなげに答える。
「富士の樹海は自殺の名所だからね。人の思念もたくさん溜まりそうじゃないか」
「確かに」
富士の樹海は自殺の名所としても知られている。
自殺する人なんかは強い思念を持っていそうだから、ダンジョンが生まれる条件に合致する。
「それに、富士の樹海って言えばかなり不思議な場所だ。方位磁石も効かなくなるとか。ダンジョンみたいな不思議なことがあってもおかしくないと思うね」
「……それはそうだ」
富士の樹海は迷い込んだら出てこれない不思議な場所としても有名だったりする。
実際に来てみて確かになと思った。
木々で見通しはあまり良くないし、風景もどこも大して変わらない。
その上、どういう理屈かは知らないが、この場所では方位磁石がちゃんと働かないらしい。
ダンジョンの入り口までだって目印があったから迷わずにこれたが、何もなければ迷ってしまっていた気がする。
その不思議な力にもダンジョンが一枚噛んでいるのかもしれない。
「それに、東京のど真ん中にダンジョンがあるんだから。有名かどうかはダンジョンがあるかどうかに関係ないんじゃない?」
「そう言われればそうだな」
朱莉のセリフを聞いて俺は納得した。
東京のど真ん中である新宿や渋谷にだってダンジョンがあるのだ。
有名で人がたくさんくる場所かどうかはダンジョンがあるかどうかに関係がないようだ。
ダンジョンは人の思念によってできているので、人が多いほどダンジョンができやすいから人がたくさんやってくる観光地なんかにはダンジョンが生まれやすいのかもしれない。
「私はそれよりダンジョン内が整備されてることに驚きました。さっきから一度もモンスターに遭遇していませんし」
「確かに」
ダンジョンに入ってからしばらく経ったが、今まで一度もモンスターに遭遇していない。
それどころか、俺の索敵範囲内に一匹もモンスターが入っていないのだ。
いくらCランクでフィールド型のダンジョンだといってもこの遭遇率の低さは普通じゃない。
何より、今いる道はしっかり整備されているのだ。
今歩いてる道はしっかり石畳が敷かれていて、両サイドに灯籠という建造物まである。
刀夜さんに聞いた話だと、モンスターはダンジョン内に人工物があると率先して襲ってくるらしいので、普通であればこんな道は破壊されているはずだ。
最初はダンジョンのオブジェクトかと思ったが、隠れ里への案内板がかけられていたりするので、この灯籠は明らかに人工物だ。
「それは多分この灯籠が原因だね」
「灯籠?」
俺は道の両サイドにある灯籠を見る。
俺には普通の灯籠に見えるのだが、雅からしたらそうではないのだろう。
そう言えば、ダンジョンに入った直後、雅は興味深げに灯籠を観察してたっけ?
「この灯籠がモンスターよけの効果を持っているみたいなんだ。他にも探索者の突入場所を灯籠の近くに固定したりする効果もあるみたいだ」
「そう言えば、案内の人に近くに灯籠があると思うのでそれを伝っていってくださいって言われたな」
俺たちはダンジョンの外で案内の人と出会った。
その人に、ダンジョンに入ったら灯籠に沿って隠れ里の方に向かってくださいと言われた。
あれはダンジョンの至る所に灯籠があって、どこからでも行けますよという意味ではなく、突入時、必ず灯籠のそばに出るようになっているということだったらしい。
「僕ではまだこれほどのものは作れないからね。どうなっているのかすごく気になるよ。隠れ里にはこれについての資料もあったりするのかな?」
雅は目を輝かせながらそんなことをいう。
どうやら、雅の好奇心に火がついてしまったみたいだ。
雅は生産職でオタクでもあるので、興味があることにはのめり込んでしまう性質がある。
その間は寝食すらも忘れてしまう。
これは、隠れ里に着いたら資料室に篭りっきりになりそうだな。
ちゃんと最低限の生活はおくらせないと。
俺は多分部屋とかも違うだろうから、それは朱莉と京子の仕事になると思うけど。
「あ! 見えてきたよ!」
そんなことを話しながら歩いていると、道の正面に大きな門が見えてきた。
どうやら話をしながら歩いているうちに隠れ里に到着したみたいだ。




