第46話 自爆を選ぶか感電を選ぶか。そこが問題だ⑦
「!!」
(っち!)
ボスモンスターは刀から離した左手で俺の攻撃を受け止めた。
やっぱり左手は添えてるだけだったか。
スキル発動中は動けないが、いくつか例外がある。
その例外の一つが二刀流スキルだ。
二刀流スキルの場合、ほとんどのスキルを片手で発動することができる。
その結果、左手に持った剣でスキルを発動しながら、右手に持った剣で別のスキルを発動するというようなことができるようになる。
その結果、複数のスキルを連続して発動することができるのだ。
それができないと二刀流の意味があまりない。
片手で扱える武器っていうのは攻撃力とかが低い傾向があるから、それができないなら大剣みたいな大きい武器を持った方がお得だ。
それに片手でスキルが発動できることにはもう一つ利点がある。
片手でスキルが発動できるということは、スキルを発動していない方の手は比較的自由に動かせるということだ。
こんなふうにスキル発動中に一方の手で敵の攻撃を防いだりとかな。
もう片方の手に武器を装備していないため、スキルを発動したりはできないが、こうやって不意打ちにはもってこいだ。
(普段であればそんなことを気にする必要はないんだけどな)
普通は武器を持っていない手で邪魔される程度であれば気にする必要はない。
左手がスキルの軌道に割り込んできても避ければいいだけだ。
だが、今はスキルの微調整ができない。
だから、こうやって軌道上に邪魔な腕が入るだけでスキルの発動が止められてしまう。
実際、ボスモンスターに防御されてしまったことで俺の『一閃』スキルは発動しなかった。
スキルがキャンセルされてしまえばいくら魔剣殺しを使ってもダメージを与えることはできない。
(でも、これは想定の範囲内だ)
「?」
スキルをキャンセルされたのに俺が焦っていないことにボスモンスターは疑問を持っているみたいだ。
ボスモンスターが片手を犠牲にして防御してくることは想定していた。
このボスモンスターは魔剣を元に出来上がったモンスターだ。
そのため、刀系のスキルを結構たくさん持っているように思う。
刀系のスキルの中で、二刀流はメジャーなスキルだ。
このボスモンスターが持っているかどうかは五分かそれよりも少し高いくらいだろう。
今までは使ってきていなかったが、使う必要がなかったからということは考えられる。
つまり、防御されるのは想定内ということだ。
「『感電』!」
「!!」
俺は『高電圧危険』のスキルを発動した。
防御された時のために短刀を『自爆ちゃん』から『高電圧危険』の方に切り替えておいたのだ。
「ががががががががががが!」
「!?!?」
強い雷撃がボスモンスターを貫く。
その電撃は俺の方にまで影響を及ぼしていた。
実はこのスキルも自爆系のスキルだ。
電撃が触れているもの全てに対して発動する。
(よし。ボスモンスターの攻撃が止まった)
そして、この攻撃を受けると、全身が麻痺して行動が全てキャンセルされる。
ちなみに、このスキルもスキルを使っているだけの状況なので、俺の意思で途中で止めることはできない。
自爆スキルとは言っても流石に敵のHPがゼロになれば止まるようにはなっている。
つまり、どちらかのHPが0になるまでこの状況が続くということだ。
(……やっぱり足りないか)
正確な数値はわからないが、ボスモンスターより俺のHPのほうが先に底をつきそうな気がする。
元々ボスモンスターの方がHPが多いのだ。
これまでHPを削ってこれたと言ってもその差を埋められるほどじゃない。
それに、電撃によるダメージも俺の方が多い。
おそらく防御力が俺の方が低いことが影響しているのだろう。
ボスモンスターもそのことに気付いたようでニヤリと笑う。
だが、こうなることは予想通りだ。
というか、外で自爆攻撃を受けているんだから、俺のHPのほうが多くなったら自爆攻撃を警戒してこっちの攻撃を受けてもらえなかっただろうし。
「サグルさん! 『回復』!」
「!!??」
俺のHPがどんどん減っているのを見て、京子が回復魔法を飛ばしてくれる。
本来であれば俺の方がHPが少ないので、HPの削りあいになれば俺の方が先に力尽きる。
だが、京子が逐次回復してくれれば俺のHPのほうが長く持つ可能性は高い。
ボスモンスターは何とかしようとしている。
ボスモンスターを拘束しているのはBランク級のドロップアイテムを使って作った武器のスキルだ。
抵抗は無駄に終わる。
「〜〜〜〜〜〜」
数分後、断末魔と妖刀を残し、ボスモンスターは息絶えた。
それと同時に、ダンジョンは音を立てて崩壊を始めた。




