第22話 アイエエエエ! NINJA!? NINJAナンデ!?③
「俺もさっきちょうど忍者のレベルが上がったんだ」
「そうなんですか? それで、どうして離れたんですか?」
「今さっき覚えたスキルを披露しようと思ってな」
俺は京子と十分な距離をとったことを確認する。
そして、京子に背を向けてスキルを発動した。
「『火遁・龍咆』!」
「きゃ!」
俺はドラゴンのように口から炎の息を噴き出す。
スキルの反動で少し離れた京子のいる場所まで熱風が届く。
『火遁・龍咆』は火龍のブレスのように炎を吐き出すスキルだ。
威力も相当高く、反動で熱風を感じるほどだ。
ひとしきり炎をはき終えると、次第に威力を減じていき、最後には止まってしまう。
「す、すごいスキルですね。さすが、サグルさんです。あれ? サグルさん? 難しい顔してどうかしたんですか?」
「今のでMPが底をついたんだけど」
「え?」
見習いNINJAのスキルには問題がある。
全てのスキルが全力全開になってしまうことだ。
火遁では辺り一帯を火の海にし、水遁ではダンジョンが水浸しになり、土遁では地面が穴だらけになる。
元がロマン技だからか、派手に全力を使い果たしてしまうのだ。
(忍者のジョブをファーストジョブにしておいたからなんとかなったけど、見習いNINJAだけだったら間違いなく昏倒してたな)
魔力は精神力に近いものだ。
忍者というジョブは元となった仕事の特性上、精神力が強い。
それはなんとなく体感でわかっていた。
魔法が使えないのに、なんで精神力が強いんだよと思っていたが、これのためだったという可能性もある。
実際さっきはいきなり減っていく魔力を無理やり絞ってスキルを終わらせた。
「それは、なんともですね」
「なんとか調整できそうな気もするから、使えるレベルまで出力を絞るのが今後の課題かな」
「ははは」
京子の乾いた笑いがダンジョンに響いた。
「とりあえず、ちょっと早いけど、休憩にしていいか?」
「はい。問題ないですよ」
まだ一時間ほどしかダンジョンを探索しておらず、二階層までしか来られていないが、魔力が枯渇してしまって、他のスキルが出せない。
この状態でも進むことはできるだろうが、魔力枯渇によって集中力が目に見えて下がっていて少し眠い。
昼食後、午後イチの授業で退屈な先生の授業が来た時みたいな感じだ。
このダンジョンはまだ攻略されないだろうし、無理して進む必要もない。
「よっこいしょ」
俺はダンジョンの隅に腰を下ろす。
すると、俺のすぐ隣にハンカチを敷いて京子が座ってくる。
肩と肩が触れ合いそうな距離だ。
京子さん、ちょっと近すぎやしませんかね。
「……少し寝ますか?」
「え? いや、そこまでじゃない。それに、今近くにモンスターがいないとは言っても、ダンジョン内でそこまで気を抜くことはできないよ」
京子は少し残念そうに肩を落とす。
今、残念がる要素がどこかあっただろうか?
「京子の方はどうなんだ?」
「え?」
「さっき覚えたての回復魔法を使っただろ?」
覚えたてのスキルというのは結構使うのが難しい。
俺のロマンスキルほどではないが、無駄にMPを消費してしまったりする。
京子は今まで支援系魔法は使ってきたが、回復魔法はあれが初めてだったはずだ。
予想以上の魔力の減りに疲れたりしたんじゃないかと少し心配になった。
「あ。実は、私が回復スキルを覚えたのはこのダンジョンに入ってすぐなんです」
「え? そうなのか?」
「はい。それで、せっかくなので、サグルさんが怪我をしたタイミングで魔法を使って治して驚かせようと思ってとっておいたんです。結局私がサグルさんに驚かされることになりましたけど」
京子はそう言って頬を膨らませて、不満そうな顔を見せる。
美少女は怒った顔も可愛いな。
顔は怒った表情をしているが、目は怒っていない。
おそらく、冗談でこんなことを言ってきたのだろう。
それだけ仲良くなれたと思うと少し嬉しい。
昨日なんて恐縮しっぱなしだったからな。
やっぱり仲間は気の置けない関係の相手に限る。
「それはごめん。お詫びになんでもするよ」
「本当ですか!」
俺がなんでもするというと、京子は目を輝かせて迫ってくる。
その、どこがとは言わないが当たっている。
「何してもらおうかな〜」
「で、できる範囲のことで頼む」
京子は人差し指を唇にあてて俺に何をさせようか考え出す。
その仕草がそこはかとなく色っぽく見える。
京子みたいな美少女がエリートぼっちの俺にえっちなお願いをしてくるとは考えにくいが、思わずドキッとしてしまう。
「くすくす。冗談ですよ」
「そうか、よかった」
俺は胸を撫で下ろしながらも、少し残念な気持ちになった。
この後のダンジョン攻略で無駄に張り切ってしまったのはいうまでもない。




