第45話 自爆を選ぶか感電を選ぶか。そこが問題だ⑥
--ミシ
その音が聞こえた時、俺は一瞬何の音かわからなかった。
俺は一分ほど攻撃を避け続けていた。
砦の天井や床を使って逃げ続ければボスモンスターの攻撃を避けるのはそこまで難しくなかった。
一方のボスモンスターはかなりの量のMPを消費したはずだ。
だから、その音をはじめに聞いた時はボスモンスターが何か新たなの手を打ってきたのかと思ったくらいだ。
「砦のHPが!」
だが、雅の声を聞いて、それが砦のあげている軋みの音であると気づいた。
どうやら、ボスモンスターの攻撃によって砦のHPがかなり減っているみたいだ。
俺は生産職ではないから正確なHPはわからないが、砦自体が軋みを上げているということは、HPは少なくとも四分の一以下になっているんじゃないだろうか?
武器の場合、HPが半分以下になると違和感が出始めて、四分の一を切ると目に見えて傷が目立ち出し、一割を切ると攻撃を当てる度に武器が軋みを上げていつ壊れてもおかしくない状況になる。
そう思って砦を見ていると、至る所に亀裂が入っており、もうかなり危ない状況に見える。
ボスモンスターの攻撃は砦を貫いて突き出してきている。
そのため、俺が避けても砦側にはダメージが入っていたようだ。
雅は急いでHPの回復を始めるが、うまくいっていないみたいだ。
それも当然か。
砦を貫いた棘はまだ残っている。
おそらく、俺が攻撃を受けるまで残り続けるのだろう。
何となくそんな気がする。
ダンジョン内での出来事の場合、何となくというのは結構高い確率で当たる。
スキルというのはそういうものだ。
何にせよ、この状況ではあまり砦のHPが回復できないということだ。
物理的に傷口が塞げない状況ではHPを回復しようにも限界がある。
それに、HPを回復しても傷口が開いた状態ではHPの減少は止まらないとおもう。
Cランクのモンスターにつけられた傷が下級探索者では癒せないのと一緒だ。
今のボスモンスターの攻撃を何とかしないと砦は壊されてしまう。
「……」
俺は攻撃を回避しながらボスモンスターの方を見ると、ボスモンスターはニヤリと笑ったような気がした。
どうやら、これはボスモンスターの狙い通りだったみたいだ。
(……まずい、よな)
俺は今、壁や天井も使ってボスモンスターの攻撃を回避し続けている。
ボスモンスターの攻撃はしつこい上に結構速いのだ。
砦がなくなって、ただの平野になってしまえばボスモンスターの攻撃をうまく避けられるかはわからない。
それに、よく考えると、砦の外に雑魚モンスターがもう残っていないとは限らないのだ。
ボスモンスターが開けた入口も小さかったし、雅によってすでに塞がれている。
俺たちが逃げ出せば狩るために、砦の外に雑魚モンスターを残しているという可能性は十分にあり得る。
砦がなくなればそいつらが一斉に襲ってくる可能性は否めない。
(やるしかないか)
いままで、避け続けることが相手のMPを削ることに繋がり、ひいてはこちらの有利に繋がっていたので反撃は行っていなかった。
だが、俺だってただ逃げ続けていたわけじゃない。
反撃の方法だって考えていた。
ボスモンスターはスキルの発動中のため、今は身動きを取れない。
たとえ、技を中断したとしてもスキル発動後の硬直があるはずだから、こちらの攻撃には対処できないはずだ。
つまり、今が最大の攻撃チャンスということだ。
「っ!」
俺は意を決してボスモンスターのいる方へと進路を変える。
すると、背中から迫っていた攻撃のスピードどんどん上がってくる。
心なしか地面から飛び出す棘のサイズも大きくなっているように思う。
いや、実際に攻撃スピードは速くなっているし、飛び出す棘のサイズも大きくなっている。
受けるダメージだって上がっているはずだ。
これもボスモンスターへの攻撃をためらっていた理由の一つだ。
スキルの発動者であるボスモンスターに近づけば近づくほどスキルの効果は高くなる。
もしくらってしまった時のダメージもボスモンスターに近い方が大きくなるだろう。
それなら、ボスモンスターからできるだけ遠いところで行動しようとするのは当然のことだ。
だが、俺は遠距離での攻撃をあまり持っていない。
持っている遠距離攻撃も『龍咆』のようなNINJAスキルだけだ。
スキルの調整ができない今、NINJAのスキルは使用すればMPを全て使い切ることになるので、勝利を確信した時以外には使えない。
攻撃をしようと思うとボスモンスターに近付かないといけない。
俺は何とかボスモンスターの攻撃に追い付かれる前にボスモンスターを攻撃の間合い内に収める。
「『一閃』!」
俺はボスモンスターに向かって攻撃を放った。




