第42話 自爆を選ぶか感電を選ぶか。そこが問題だ③
「……」
「!!」
ボスモンスターは一気に間合いを詰めてくる。
一瞬後には目の前でボスモンスターが妖刀を大きく振りかぶっていた。
(……見える!)
俺はそのボスモンスターの動きを目で追えていた。
どうやら、俺は『魔剣殺し』を装備して、ステータスが上昇したことで、フィジカル面だけでなく、視覚や聴覚みたいな感覚面も強くなってるみたいだ。
多分、普段の俺ならボスモンスターは瞬間移動したように見えていたことだろう。
しかし、『魔剣殺し』によってステータスを強化された俺ならボスモンスターの動きを見極めることができる。
今まで自分に見合っているかそれ以下の武器しか装備してこなかったので、こんなふうに武器によるステータス上昇の恩恵を受けるのは初めてだ。
この感覚は少し新鮮だな。
一気に強くなったみたいな気分になってくる。
「……!」
ボスモンスターの刀が俺に向かって振り下ろされる。
これを受けたらかなりのダメージを受けそうだ。
受け止めると武器が壊れてしまう可能性があるので、取るべき行動は回避一択だ。
だが、回避するにも問題がある。
上昇したステータスに体が慣れておらず、攻撃が見極められるだけで回避したりするほどの余裕はないのだ。
強くなった気にはなるが、本当の意味では強くなってないってことなんだろう。
「『体術・流水』」
「!?」
そこで、俺はスキルを発動してボスモンスターの攻撃を避ける。
体がうまく動かせないならスキルを頼りにすればいい。
刀夜さんはボスモンスターと戦う場合は全ての行動でスキルを使った方がいいとアドバイスしてくれた。
スキルはステータスに見合った動きをしてくれるので、体がステータスに慣れていようが慣れていまいが基本的には問題なく発動する。
スキル発動中に無理に体や魔力を動かそうとするとスキルの発動が失敗することはあるが、スキルに完全に身を任せてしまえばスキルはそのスキル通りの結果を返してくれる。
(だけど、この戦い方にも問題があるんだよな)
スキルというのは基本的にコスパがあまり良くない。
スキルは何もしなければ常に十の効果を十の魔力を使って実現する。
十一必要な時も五だけ必要な時も変わらずに十の魔力を消費するのだ。
だから、普段スキルを使う時は相手に合わせて魔力を増やして効果をあげたり、魔力を絞って必要最低限に押さえたりする。
それができるようになって初めてスキルを習得したと言える。
初めて使うスキルが魔力の使いすぎで気分が悪くなってしまうのも、過剰にMPやSPを消費してしまうことが原因だ。
普通の探索者は安全マージンをとって戦うので、基本的には相手に合わせて魔力を絞ってスキルを使っている。
そうしないとすぐに魔力が底をついてしまう。
今回はどちらにせよ短期決戦になるので、魔力の消費は気にしない方向で行くことにしていた。
(こういうときに、セカンドジョブがあって本当に助かったと思うな)
そういう意味で、俺はかなり恵まれている。
セカンドジョブまであるからだ。
ファーストジョブとセカンドジョブのステータスは単純に合計される。
SPやMPも単純に二つのジョブの合計値まで使えるのだ。
その分、普通の探索者よりたくさんスキルを使うことができる。
自然回復に任せるとSPやMPが全回復するには普通の人の二倍時間がかかるので、チートというほどの利点ではないが。
それに、『過食』や『寝溜め』みたいにSPやMPを貯蓄しておけるスキルなんかもあるらしい。
上級探索者になってくるとその辺のスキルを持っている人は多いそうだ。
それに、俺にはもう一つ有利な点がある。
「『水遁・泥沼』」
「!?」
ボスモンスターの足元に泥沼を作って体勢を崩させる。
初めて使うスキルだが、思ったより使えそうだ。
忍者もNINJAも最初から色々なスキルを持っていたので、俺は消費魔力の少ないスキルをたくさん持っている。
つまり、スキルなしでは動けなくても打てる手がたくさんあるということだ。
こんなふうに絡め手の攻撃も多いしな。
「『一閃』!」
俺はボスモンスターが動けないその隙にスキルを決める。
大したダメージは与えられなかったみたいだが、ノーダメージってわけでもなさそうだ。
何度もこんなふうに攻撃を決めていけば倒せるという感触がある。
(そうそううまくはいかないか)
ボスモンスターは距離を取り、警戒態勢に入った。
次はそう簡単に攻撃を当てさせてくれそうにはない。
つまり、ここからが本番ということだ。




