第40話 自爆を選ぶか感電を選ぶか。そこが問題だ①
「そろそろ続きをするか」
「はい」
俺が雅の指示のもと短刀の素振りやスキルの確認をしていると、刀夜さんから声をかけられる。
休憩は終わりということだろう。
どうやら、結構長い時間素振りをしていたみたいだ。
時間を確認してみると、休憩に入ってから一時間ほどの時間が過ぎていた。
「わかってるとは思うが、サグルもあまりMPを使いすぎるなよ。まだダンジョンの中なんだからな」
「……はい」
俺は刀夜さんの指摘を受けてばつが悪くなり、そそくさと雅の作ってくれた『魔剣殺し』をアプリ内にしまう。
素振り中に『魔剣殺し』のスキルを使ったことでMPを消費していたことがバレてしまったらしい。
消費MPは少ないが、ダンジョン内ではMPがなかなか回復しないから、あまりMPを使わない方が良かった。
でも、ついついMPを使ってスキルを発動してしまった。
だって、雅の作った短刀が面白かったのだ。
炎属性を付加した『魔剣殺し・焔』は『火帯』というスキルを使うことができた。
そのスキルを使うと短刀の軌跡を追いかけるように炎の帯がついてくる。
簡単に素振りをするだけで、何かの演舞でも待っているかのような状況になるのだ。
周りから見ていても結構綺麗だったのだろう。
雅だけでなく、朱莉と京子も俺の演舞に拍手を送ってくれた。
まぁ、綺麗なだけで相手にはさほどのダメージは与えられなさそうだが。
雷属性を付加した『魔剣殺し・雷龍』は『雷流』という事前に決めた軌道を超高速で駆け抜けるスキルを使うことができた。
ただ、せっかく目にも止まらぬ高速攻撃を繰り出せるのに、軌道上には誘導電流のようなものが流れるらしく、どこを通るかは敵にもわかってしまう。
このスキル自体が、先に雷の道を作っておき、そこを駆け抜けることで高速移動を実現しているようなので、それは仕方のないことだ。
確か、雷もそんなふうになってるって聞いたことがあるな。
山登りとかをしていると、この誘導電流を感じることがあるらしい。
誘導電流を感じた時はすぐに地面に伏せてゴロゴロと転がってその場を退避しないといけないのだとか。
なんにせよ、軌道が事前にわかるということは回避するのは簡単ということだ。
だって敵はその軌道を通ってくるとわかっているのだから。
それどころかその軌道上に攻撃を置いておけば簡単に反撃することだってできる。
実際の戦闘ではあまり使えなさそうだ。
『魔剣殺し・毒蛇』は低確率で相手を毒にできるが、毒はアンデット相手ではどこまで効果があるかは未知数だし、『魔剣殺し・じばくちゃん』は自分にも大ダメージを喰らうからそうそう使うことはできない。
『魔剣殺し・じばくちゃん』に関しては反動がやばいから雅にスキルを試すのを止められたくらいだ。
相当な反動が来るのだろう。
スキルの発動を止めるくらいならそんな危険な短刀は作らないでほしかった。
(やっぱり、一番戦闘で使えそうなのは『魔剣殺し・高電圧危険』だな)
この短刀なら至近距離まで近づけば相手に電撃のダメージを与えられる。
刀身の部分に触れていなければ自分がダメージを喰らうこともない。
雅が短刀の形状をいじらない方がいいと言っていたのは本当みたいだな。
形状が一番変わっているこれが一番効果が高い。
もし戦闘になれば一本をこの『魔剣殺し・高電圧危険』にして、もう一本を切り替えながら戦うことになるだろう。
『雷流』はダメージは与えられないかもしれないが、高速移動には使えるし、『火帯』はスキル発動後の隙を少しは埋めてくれると思うからな。
今後の戦法を決められたという意味で、MPを消費して『魔剣殺し』のスキルを発動したことは無駄じゃなかった。
そういうことにしておこう。
刀夜さんもそう思ってくれているから少し指摘しただけだったんだろうし。
(それにしても、旧家が相伝している技術っていうのはやっぱりすごいんだな)
俺は雅が刀夜さんの指導のもと竈門に火を入れて鍛治の準備をしている光景を見ながらそんなことを考えていた。
火の温度や竈に風を送る量なんかも細かく教えてもらっているみたいだ。
生産系のジョブをあまり育てていない俺では解らないが、そういうところにも『魔剣殺し』の能力を上げるコツが隠れているのだろう。
雅の作った魔剣殺しシリーズは本邸の倉庫から出してきた短刀よりも明らかに頭一つ飛び抜けて強い。
あちらの方がいい素材を使っているはずだし、製作者が雅より格上のCランク以上の生産職であったにも関わらずだ。
刀夜さんの作った『魔剣殺し』を素材としていることや、雅が魔導装備技師というレアジョブについていることを計算に入れたとしても、魔剣殺しの強さは別格って感じだ。
それに、回を重ねるごとに雅の作った短刀は完成度を増していっている。
この調子なら外にいるボスモンスターを倒せるものを作るのも時間の問題な気がする。
「よし、じゃあ、始めるか。サグルはこっちにきてくれ」
「わかりま--」
--ドン!
俺たちが鍛冶を始めようとした瞬間、轟音と共に砦の入り口が吹き飛ぶ。
そして、その入り口から妖刀を携えたボスモンスターがゆっくりと姿を現した。




