第37話 まぁ、ロマンがあるのはわかるんだが①
「こうやってゆっくりできるのもこの砦のおかげだな」
「そうだな。俺が作るよりいいものができてると思うぞ」
「そうなんですか?」
「あぁ。砦という小さいスペースの中に詰め込めるリソースっていうのは本来決まってる。だが、雅の魔導装備技師なら、それぞれに魔力的な機構を組み込める分リソースが高くなるんだろ」
雅の魔導装備技師は道具に色々な機構を付加することができる。
有刺鉄線に電流を流したり、扉を自動で開くようにしたりだ。
だが、これはいい点だけじゃない。
そうやって機構を追加するにはその分だけ余分にドロップアイテムを使う必要がある。
同じレベルのものを作るのに、ただの鍛治師より魔導装備技師の方が大量のドロップアイテムを使うのだ。
刀を一本作るのに普通の刀なら鉄が四つで済むところを魔導装備技師だと六つ必要になるイメージだ。
なぜか四つで鍛治をすることはできないが、余分な二つの枠に雷鳴石などの属性を持った素材を入れれば属性を付加できる。
本来は属性を追加したりするためには強度を削ったりする必要があるのだが、それが起きない。
その代わり、他の生産職より、生産効率は高くない。
鉄六つで作った刀は鉄四つで作った刀の五割増しで強くなったりはしないのだ。
せいぜい一割増し程度だ。
その程度の差であれば技術で簡単位埋められる。
今回、サグルの刀を作るのにだって、雅はかなり余分なドロップアイテムを使っていた。
その割に、いいものはできていない。
だが、リソースという意味では、間違いなく大量のドロップアイテムを使ったほうが上がる。
有効活用できていなくて効果を発揮していない分のリソースも消えるわけではないので、HPには反映されるのだ。
切れ味が悪いけど壊れない刀は役に立たないが、あるだけで役に立つ砦のような建造物にとってはドロップアイテムを大量に使うことでリソースを増やせるジョブは結構な利点になる。
Cランク以上では砦のような建造物を作る場合が多い。
大槌家のような組織で動く探索者なら雅のようなジョブは一定数いたほうがいいように思う。
「これは本格的に魔導装備技師を増やす方法を考えねぇといけねぇな」
「なにかプランはあるんですか?」
「似たようなジョブにカラクリ職人ってのがあるから、そっちからためしてみるか? 雅。お前はどう思う?」
「……カラクリ職人のジョブは持っていますね。でも、それが魔導装備技師につながっているかどうかはわかりません。僕はやりたいようにやっていただけなので」
雅は魔導装備技師になろうと思ってなったわけではない。
サジタリウスを作ったのだって半分以上趣味みたいなものだし。
(そういえば、この砦を作ってからまだ半日しか経ってないのか)
この砦を作ったのは半日ほど前だ。
その時はこんなことになるとは思っていなかったから、かなり自由にやらせてもらった。
無駄な通路を作ったり、装飾に凝ってみたり……。
(あの時は楽しかったな)
結果的にそれがリソースの増大につながり、砦のHPやステータスを上げることになった。
刀夜さんはそれも見越して雅に好き勝手やらせてくれていたのかもしれないが。
(そうか、無駄になってるリソース分を何か別のものに使っちゃえばいいのか)
……今考えると、サジタリウスといい、この砦といい、楽しんで作ったもののほうがいい出来のものができている気がする。
あとチャンスは七回もあるのだ。
一回くらい試してみてもいいかもしれない。
それに、『神刀の種』は一番最後に加える。
ダメそうなら、『神刀の種』を加えなければいいのだ。
(そうだな。サグルのジョブは忍者だったな。忍者といえばやっぱり忍者刀かな。いや、仕込み刀にしてみるのも面白いかもしれない。刀剣から雷が出るのもありかもしれないな。どうせリソースは余っているんだ。その分のリソースを使って鞘部分を作ってもいいかもしれない)
雅は次に何を作るか考え始めた。




