第36話 お前が鍛治をするんだよ⑤
「これじゃあダメだな」
「……そう、ですか」
雅は今回もダメだと刀夜さんに言われて、肩を落とす。
雅も刀夜さんに見せる前からダメそうだなとは思っていた。
雅の作った『魔剣殺し』からは刀夜さんが持っていた魔剣殺しほどの魔力を感じなかった。
それに、鍛治をしている間もずっとレベルの高いドロップアイテムに振り回されているような感じで、思ったような出来の刀は出来上がっていない。
下手したらCランクのドロップアイテムを使って作った武器の方がいいものができるかもしれないくらいだ。
だが、それではボスモンスターに有効打を与えることができない。
雅は完全に行き詰まっていた。
「まぁ、まだ三回目だ。チャンスはまだあるんだしそこまで気にする必要ないよ」
「そうかも、しれないが……」
サグルは慰めてくれるが、すでに失敗は三度目だ。
『神刀の種』はまだ七つ残っている。
つまり、あと七回チャンスがあるということだ。
だが、もう三度目なのだ、あと七回でCランクのボスモンスターに攻撃を届かせるほどのものができるとは限らない。
「そうだな。どんどん良くなってるし。次くらいには完成してもおかしくねぇ」
「……はい」
雅は出来上がった短刀を大事そうに抱え、失敗作の二本の隣にそっと置く。
確かにこうして並べてみると少しずつ内包する魔力量が多くなっているのがわかる。
おそらく経験値も結構入っているんじゃないかと思う。
だが、刀夜さんの使っていた魔剣殺しと比べれば全然だ。
もう刀夜さんの使っていた魔剣殺しは素材にしてしまったので後戻りすることはできない。
(レベルアップできれば少しは変わるかもしれないのに)
今は戦闘中のため、レベルアップすることはないのが残念でならない。
レベルアップできればもっといい出来のものが作れたかもしれないのに。
あ、そういえば、まだ雅は覚醒できていないから、ランクⅩ以上にはいけないんだったか。
「!!」
次の瞬間、砦が大きく揺れる。
モンスターたちの攻撃だ。
数が少なくなったことで、一斉に攻撃をすることにしたらしく、こうやって定期的に砦内に轟音が響く。
「やんだか?」
「みたいですね」
そして、一定程度攻撃したあと、MPを回復させるためかモンスターたちは撤退していく。
「よくも飽きずにやってくるもんだな」
「モンスターが飽きるとかあるんですか?」
「ダンジョンによってはモンスターが攻撃するのを面倒がって全然出てこねぇところもあるらしいぞ。『怠惰』系のダンジョンから派生したダンジョンだとそういうのもあるらしい」
「へー」
雅は砦のHPを確認するが、まだまだ持ちそうだ。
念のために手持ちのドロップアイテムを使って砦のHPを回復させる。
この調子ならあと一日は余裕で持つと思う。
もう、刀夜さんという脅威がいないので、時間をかけてなぶり殺しにするつもりなのかもしれない。
確かに、無理に攻撃をしてMPが空の状態で戦闘に入るより、時間をかけて砦を壊して、MPが満タンの状態で戦闘するほうが安全だ。
こちらにはボスモンスターに有効打を与えられる人がいないとはいえ、もしもということは考えられる。
実際、『魔剣殺し』を使ってボスモンスターに攻撃を加えるつもりでいるし。
(……もしかしたら、砦が自爆することも警戒しているのかもしれないな)
この砦は最終防衛戦のため、自爆機構を組み込んでいない。
砦が自爆した時の撤退経路も準備できていないし。
だが、そんなことは相手にはわからない。
自爆攻撃はHPに比例して大ダメージを与えられる。
もしこの砦が自爆すれば外壁の自爆以上のダメージを与えることができるはずだ。
ボスモンスターがそれを警戒しているというのはありえることだ。
Cランクのドロップアイテムを大量に使ったとはいえ、ボスモンスターの攻撃もちゃんと防げているし、我ながらいいものを作ることができた。
「ねぇ。少し休憩しない? おにぎり作ったんだ」
「……そうだな。根を詰めすぎるのもよくねぇ。一旦休憩するか」
雅が砦の点検を終えると、朱莉がおにぎりを持ってきた。
どうやら、失敗で気が落ち込んでいる雅に気を遣ってくれたみたいだ。
刀夜さんの許可も出たので、一旦休憩することになった。
雅は刀夜さんたちから少し離れたところに一人で座り、朱莉の作ってきてくれたおにぎりを頬張る。
作りたてらしく、まだほんのり温かい。
朱莉の優しさが染み込んでいるみたいだ。
(なんとかしていいものを作らないと。最初の方に込める魔力が少し弱いのかな? いや、それなら刀夜さんが指摘してくれるはず。……でも、刀夜さんは予定より遠くから指示を出してるから、気づいてないだけかも。次はもっと多く魔力を込めてみようかな)
しかし、雅には気を抜いている余裕はない。
休憩している間も、雅の頭の中は『魔剣殺し』のことでいっぱいだった。




