第20話 アイエエエエ! NINJA!? NINJAナンデ!?①
「さて、どこのダンジョンに潜る?」
「そうですね」
俺と京子は新宿の駅前まで戻ってきて『ダンジョンGo!』のアプリを見ていた。
俺のアプリを二人で覗き込んでいる形だ。
どうやら、パーティメンバーになれば相手の『ダンジョンGo!』を見られるようになるらしいのだ。
パーティメンバー以外が見ると、画面には謎の動画が映っているように見える。
今朝京子と一緒に検証した結果、そういう仕様になっているとわかった。
一体どういう仕組みになっているのやら。
考えるだけ無駄か。
それだけでなく、パーティの欄では名前とジョブ、しかも公開設定にしている分しか見ることができないが、自分の『ダンジョンGo!』を見せあえば、ジョブランクやレベルも共有することができるとわかった。
しかも、自分の見せたくない情報は相手には見えないようになっているらしい。
俺のセカンドジョブや称号欄を京子は見れなかったし、京子の体重とかを俺は見ることができなかった。
なぜかスリーサイズは見えたけど。
……京子さんって着痩せするタイプなんですね。
「Eランクのダンジョンは歌舞伎町のあたりが多いですね」
「Fランクのダンジョンも多いから、あの辺はダンジョンが生まれやすいんじゃないか?」
「確かに、負の感情とかたまりやすそうですもんね」
「……そうだな。煩悩、たまりそうだもんな」
京子は俺のスマホを覗き込み、歌舞伎町の辺りを指差す。
確かにその辺りはダンジョンが多い。
京子が俺のスマホを覗き込んでいるのは俺の『ダンジョンGo!』の方が多くの情報が載っているからだ。
俺の『ダンジョンGo!』なら、マップ画面で拡大縮小すれば関東全域くらいのサイズにはできるが、京子の『ダンジョンGo!』では町内くらいしか表示することができなかった。
載っているダンジョンも俺の方が多かった。
ちなみに、見習い職の中で一番広域が表示されたのは『見習い盗賊』だった。
斥候職だからだろうか?
そんなわけで、俺は煩悩と闘いながらダンジョンを探すことになったのだ。
それにしても、どうして女の子っていい匂いがするんだろう。
シャンプーとかは昨日同じものを使ったはずなのに。
「じゃあ、歌舞伎町の方に行きましょうか」
「そうだな。避ける理由もないし」
「じゃあ、行きましょう」
俺は京子に導かれるように歌舞伎町の方へと向かった。
***
「へー歌舞伎町ってこんな感じなんだ」
朝方の歌舞伎町は閑散としていた。
まあ夜の街だし当然か。
時折、通勤客っぽい人たちが通り抜けていくくらいで、人は多くない。
もっと退廃的な場所をイメージしていたが、思っていたより普通の街だ。
いや、店の看板とかはあんまり普通じゃないが。
「来るのは初めてですか?」
「あぁ。特に用事もなかったし」
社長とかは接待なんかで何度かきていたが、俺が呼ばれるなんて事はなかった。
というか、お客さんと会う事はほとんどなかった。
顔が怖くてお客さんを怖がらせちゃうからな。
時々ひどいクレーマーが来た時は筋トレ好きの中村さんと一緒に応接室に呼ばれて一言も発さず無言のプレッシャーをかけ続けるなんて事はあったが、そんなのは年に一回あるかないかだ。
一人でこういうところに遊びに来るほどの時間の余裕もなかったし。
「(そっか。よかった)」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ」
「そうか」
何か言ってた気がするが、本人が何でもないというのだ、深く聞かない方がいいのだろう。
「じゃあ、さっさとダンジョンを攻略しよう。ここのダンジョンでいいか?」
「どこでも大丈夫です」
俺は一番近くにあるEランクダンジョンを選択する。
Fランクダンジョンは今も生まれては消えを繰り返しているが、Eランクダンジョンは滅多に攻略されない。
選択中のダンジョンが攻略されかかっているかもしれないが、どのダンジョンを誰が攻略中かなんて調べることができない。
だから、どのダンジョンでも一緒なのだ。
ちなみに、色欲のダンジョンらしい。
タップするだけだとダンジョンに突入するかどうかの確認メッセージしか出てこないが、アイコンを長押しするとある程度のダンジョンの情報を見ることが出来る。
ダンジョンには色欲とか嫉妬とか怨嗟とか色々ついているが、出てくるモンスターや内部の構造は特に変わらない。
おそらくどの感情によってつくられたかによって名前がつくんだと思う。
だから、俺はダンジョン名とかは気にせず潜っている。
「いくぞ」
「はい」
俺たちはダンジョンへと突入した。




