第31話 力無き正義は無力。正義なき力は暴力①
「(ただいまー)」
俺は四人で取っているホテルへと帰ってきた。
ほとんどのリストの探索者には接触できたので、南さんには自分たちのパーティに戻ってもらった。
作戦も軌道に乗ったので、南さんたちのパーティには朱莉たちの護衛をしてもらっている。
今も、この部屋の隣の部屋に張り込んでいるはずだ。
(しかし、ラブホテルに来るのはいつも緊張するな)
大きいホテルだと金竜会に捕捉されてしまうかもしれなかったので、俺たちはラブホテルを転々としていた。
今日は渋谷のラブホテルの一番大きな部屋に泊まっている。
なんというか、男一人女三人でラブホテルに泊まるのは俺が三人の女の子を連れ込んでるみたいですごく嫌だ。
民泊に泊まるというのも考えたのだが、雅が車椅子なこともあり、民泊よりエレベーターのついたラブホテルの方が便利だ。
それに、もしもの時のために四人で同じ部屋を取る必要もあった。
ラブホテルなら広い部屋なら仕切りも置けるし、二部屋あるところもあり、何かと便利だったのだ。
そんなわけでラブホテルの方を利用することの方が多かった。
だが、きてみるとラブホテルには家族連れの外国人客などもおり、思っていたより普通の感じの場所だった。
最初に五歳くらいの男の子がラブホテルから出てきた時は度肝を抜かれたね。
よく考えると外人さんにはラブホテルとかわからないだろうしな。
普通のホテルよりラブホテルの方が料金が安いし、海外旅行中にラブホテルを利用する旅行客もいるという話を聞いたことがある。
そう考えると、そこまで恥ずかしくないような気もしてきた。
一週間ほど経った今では少し緊張する程度になっている。
慣れってすごいな。
「サグルくんか。お疲れ様」
「雅? まだ起きてたのか」
俺が部屋に入ってくると、雅はまだ起きて作業をしていた。
すでに十二時は回っており、朱莉と京子は大きい方のベッドで眠りについている。
「こんな時間まで作業をしているなんて、そんなに忙しいのか?」
雅には協力してくれた探索者たちの武器を作ってもらっている。
金竜会の顧客は関東全域に散らばっており、相当な人数がいた。
そして、その全員の武器を作る雅にもかなりの仕事量がのしかかっていた。
本当はメンテナンスをしながら一つの武器を長く使い続けたいが、人数が多すぎるので、金竜会のように大量に作って大量に消費してもらっているほどだ。
ドロップアイテムも自力調達する必要があるから、Dランクダンジョンに潜ってドロップアイテムの調達もしないといけないし。
昨日も一日のほとんどの時間をダンジョン探索で消費した。
ダンジョン探索をした上、手に入れたドロップアイテムを加工している雅は相当大変だろう。
明日は雅抜きでDランクダンジョンに潜った方がいいのだろうか?
「いや、必要最低限の武器は作り終わってるよ。ちょっと眠れなかっただけだ。忙しいのはサグルくんの方だろ? こんな時間まで動き回って」
「まあ、みんな気合い入ってるみたいだからな。旗振り役の俺も頑張らないと」
俺は今さっき金竜会が確保しているダンジョンを踏破して帰ってきたところだ。
ボス部屋前を『隠密』を使って突破できるのは俺だけなので、ダンジョンの踏破作業は俺一人で行っている。
車で移動するより走って移動した方が早いしな。
にしても、本格的に人間辞めてきたな俺。
(それに、探索者たちは相当鬱憤が溜まってたみたいだからな)
協力してくれることになった探索者たちはかなり精力的に動いてくれて、定期的に金竜会発見の連絡が来るようになった。
二十四時間ひっきりなしにだ。
かなり急いでダンジョンに駆けつけて踏破して回らないと手が足りないくらいには報告が来ている。
向こうは組織で動いているんだし、一人で対応している俺が大変なのは当然と言えば当然なんだが。
それに、ちょうど学生は夏休みが始まり、協力してくれている探索者が探索に時間を割きやすくなったというのもあるのかもしれない。
いくら金竜会が大量のダンジョンを並行で攻略していても、こちらが見つけられなければ意味がないからな。
「別に全部攻略してしまう必要はないんじゃないか? ある程度取りこぼしても金竜会には結構なダメージを与えられるだろ?」
「せっかく協力してくれてるんだから、報告を受けたダンジョンはきっちり攻略してモチベーションの維持をしたいし、それに、全部失敗っていうのはインパクトが大きいからな」
せっかくモチベーション高くやってくれているのだ。
見つけたダンジョンはきっちり攻略して、モチベーションの維持に努めないと。
それに、一つも成功しないっていうのと、失敗は多いがいくつかは成功するっていうのでは全然違う。
いくつか成功するなら挑戦回数を増やせばなんとかなるが、一つも成功しないのであれば明らかにやり方が間違っていたということになる。
企業としてどっちが大きいダメージになるかは明白だろう。
「う、うーん」
「おっと。ここで話をしていたら京子くんたちが起きてしまいそうだ。少し外に出ないか?」
「そうだな」
俺は雅と一緒に外出した。
まだ雅がなんで眠れないのか聞けてないからな。
忙しいわけでもないなら、何か眠れない理由があるんだろう。




