第13話 俺、なんかやっちゃいました?②
「さて、これでよしっと」
雅はサグルがエレベーターに乗っていったのを確認してから京子たちがいるテーブルの方へと戻ってくる。
「えっと、あんなふうに追い出さなくても良かったんじゃ」
「ちょっとサグルっち可哀想だったな。採寸だけパパッと済ませちゃってデザインとかは後でサグルっちも一緒に話し合った方がいいんじゃないかな」
二人は少し不安そうにそんなことを言ってくる。
どうやら、雅が思っていた以上にサグルはこの二人に好かれているらしい。
彼と一緒にいるとなぜか落ち着くので、その気持ちは雅にもわかった。
「僕も悪いとは思うが、こうでもしないと君たちの本当の気持ちは聞けないからね」
だが、雅にとって、サグル抜きでこの二人と話すのは必要なことだった。
サグルの提案は雅にとってとても嬉しいものだった。
レベリングができて、さらに、パーティまで組める。
雅がなろうとしている黒鍛冶師はソロ向きのジョブではないし、Dランクダンジョンに潜るためには斥候職が必須なので、渡りに船といってもいい提案だった。
問題なのは、サグル以外のメンバーが信頼できるかということと、サグル以外のメンバーに信頼してもらえるかということだ。
サグルはとても優しいから、あんなふうに言ってくれたが、普通はこんなにすぐにパーティを組んだりはしない。
あの優しさは生来の気質もあると思うが、サグルがとても強いということにも起因するのだろう。
サグルは忍者という強力な特殊ジョブを持っている上、ユニーク称号によるセカンドジョブまで持っている。
どんなことが起きても対処できるため、相手を簡単に懐のうちに入れてくれるのだ。
だが、他のパーティメンバーはそうとは限らない。
サグルがこのパーティのリーダーのようだし、サグルがいればサグルの意見に反対はしづらいだろう。
だから、少し強引にサグルにはこの場所から出ていってもらった。
「僕はできればこのパーティに参加したいと思うんだが、君たちはそれについてどう思ってるんだい?」
「? 私は賛成です。雅さんの足を治す手伝いもしたいですし」
「私も賛成! 早く足を治せた方がいいからね!」
「……」
どうやら、この子達は雅が思っていた以上にいい子たちのようだ。
いい人の近くにはいい子が集まるのだろうか?
彼女たちはすでに雅のことを信頼してくれているらしい。
「そうか。ありがとう。でも、パーティメンバーはもっと慎重に選んだ方がいいぞ? 命を預けるんだからな」
「サグルっちが選んだ人なら大丈夫でしょ」
「そうですね。サグルさん。ああ見えて人を見る目はありますから」
「なるほどね」
どうやら、サグルは雅が考えていた以上に彼女たちの信頼を得ているらしい。
確かに、雅もサグルのパーティメンバーなら大丈夫だろうと思い、二人が信頼できるかどうかよりも二人に信頼してもらえるかどうかばかり気にしていた。
「じゃあさ! いろいろお話ししません? 私、雅さんのことももっと知りたいな!」
「あ! 私も知りたいです! 雅さん。大学生ですよね!?」
「あ、あぁ。そうだ。K大の工学部に通っている」
「「すごい!」」
「君たちだって、その制服、S女子の制服だろ? あそこだって結構な進学校じゃないか。うちの大学への合格者だって毎年相当数出てるだろ?」
「京子はともかく、私はK大なんて夢のまた夢だよ。京子は推薦枠でK大にいけそうだけど」
「私、大学は学費の関係で通えないよ」
「何を言ってるんだい? Dランクダンジョンを攻略したなら一年分の学費くらいは稼げているだろ?」
「あ、そうか」
雅たちは時間を忘れていろいろな話をした。
***
「あそこのパフェがすごく美味しいんですよ!」
「そうなのか。今度行ってみようかな」
「ぜひ! というか、今度の休みに一緒に行きませんか? あのあたりのダンジョンに潜りに行くついでに」
「それいいね! 行こう行こう!」
「おいおい。サグルの許可は取らなくても……あ」
雅が思い出したように時計を見ると、すでに一時間半が経過していた。
女三人よれば姦しいとはいうが、時間を忘れて話をしてしまったようだ。
「しまった。サグルのことを完全に忘れていた」
「「あ」」
どうやら、京子と朱莉の二人もサグルのことを完全に忘れていたらしい。
しまったというような顔をしている。
「手早く採寸して呼び戻してあげた方がいいね」
「そうですね。サグルさん。ああ見えて繊細ですから」
「そうなのかい?」
「そう! 妙に自己評価が低いっていうか。まあ、そこが可愛いところでもあるんだけど」
「ほうほう」
三人はさらに話し込んでしまい、採寸が終わってサグルを呼び戻したのはさらに三十分後のことだった。
帰ってきたサグルが捨てられた子犬みたいな目をしていたので、それをネタに三人でその夜に話し込んでしまったのは三人だけの秘密だ。




