第5話 アッキハッバラー♪①
「ここにくるのは久しぶりだな!」
翌日。
俺は朝から秋葉原に来ていた。
シェーバーを買うついでに色々回るためだ。
昨日は買えなかったから、今日こそはちゃんとシェーバーを買わないと。
それに、ラノベを読んでいると、広告にいいものを見つけてしまったのだ。
「トランクルームなんてものがあるんだな」
トランクルームという月貸の倉庫があるらしい。
秋葉原にもあって、安いものでは五千円くらいから借りられる。
いっそのこと、セカンドハウスを借りてしまうのもアリかとも思ったのだが、会社を辞めてしまったから賃貸を借りるのは難しくなってしまった。
サラリーマンの社会的信用はやっぱり高いんだな。
探索者は儲けは多いけど、社会的信用という点ではほぼゼロだからな。
だから探索者企業なんてものもできたのかもしれない。
だが、ここなら今の俺でも借りられそうだ。
今日はそれの下見も兼ねている。
家の近くにもあって、そちらの方が安いのだが、京子に見つかる危険は高くなってしまう。
京子も俺がオタクだからといって何か言ってくることはないだろうが、なんとなく隠したくなってくるのだ。
これもオタクのサガというやつか。
「確か、こっちだったな」
俺はスマホを片手に倉庫がある方へと向かう。
地図アプリの代わりにダンジョンGo!を起動してしまった。
なんか、最近こっちの地図の方が見やすく思えてきてしまったんだよな。
目的地はダンジョンGo!の方でピンを刺してマーカーしてあるから迷うこともない。
「あそこか。ん?」
トランクルームの建物のところに来ると、入り口で立ち往生している車椅子の人がいた。
どうやら、入り口の段差が越えられないようだ。
帽子と眼鏡をかけており、顔はわからないが、白衣を着ているから御同類の方で間違いないだろう。
持ち物的にも多分そうだ。
「大丈夫ですか?」
「え? あぁ。ちょっと段差が越えられなくてね。いつもはプラスチック製のスロープが付いているんだが今日はどこかにいってしまったみたいだ」
「手伝いましょうか?」
「ん? 本当かい? じゃあ、手伝ってもらってもいいかな?」
そう言うと、その人はヒョイと車椅子から立ち上がる。
そして、けんけんの要領で入り口の脇まで移動してくれた。
右足を抱え上げているので、右足が動かないのかもしれない。
どうやら、持ち上げやすいようにどいてくれたみたいだ。
「ヨイショ、っておも!」
「ははは。特注品だからね」
その車椅子は異様に重かった。
下手したら百キロ以上あるんじゃないだろうか?
俺はなんとか段差を上げる。
「よっこいしょ!」
「おぉ! すごい! まさか一人で持ち上げてしまうとは思わなかったよ」
「じゃあ、どうやって段差を上げると思ったんですか?」
「後ろにステップがあるだろ? それを使って前輪を上げて、前輪だけ段差の上に乗せてしまえば、後輪は後ろから力一杯押せばあげられるよ」
「……なるほど」
確かに、そんなふうにしてあげれば簡単にあげられた気もする。
自転車とかもそうやって段差を越えさせるし、少し考えればわかったことだ。
わざわざ持ち上げる必要はなかったんだな。
少し恥ずかしい。
「君もこのトランクルームの利用者かい?」
「いや、俺はこのトランクルームを借りようかと思って下見に来たところだ。君は?」
「僕? 僕はこの上のフロアを借りているんだ。三階まではトランクルームだけど、四階以降は店舗として貸し出されてるからね」
「なるほど」
確かに、このビルは十階建てっぽいけど、トランクルームは一〜三階と書かれている。
四階から先は普通に賃貸されているらしい。
「せっかくだから寄っていくかい? 車椅子を上げてくれたお礼もしたいしね」
「え?」
「何遠慮することはないよ。僕の店は人が来ることはほとんどないからね。それに、これについての話もしたいし。好きなのだろ? 神装戦姫。さっきからちらちらと視線がいっていたぞ」
「はは。バレたか」
その車椅子には神装戦姫の紙袋がかけられていた。
今期のアニメの俺のイチオシだ。
いや、この作品を推しているのは俺だけじゃないか。
神装戦姫は美少女が女性しか動かすことのできない神装と呼ばれるロボットに乗り込み戦うアニメだ。
ロボットと言いつつも甲冑や防具に近く、顔や肌は結構露出しているんだが。
そして、主人公は男性で唯一その神装を動かすことができてしまい、神無月学園という女性しかいない学校に通うことになる。
この作品は壮大な世界観とぬるぬると動く圧倒的な神作画で放映前から注目を集めていた。
さらに、三話で主要キャラの一人が死んでしまうという衝撃的なストーリーでオタク界隈の話題を一気にさらっていってしまったのだ。
白衣だけでは確信が持てなかったが、これが見えたから声をかけたといっても過言ではない。
ご同類さんであればそこまで気負う必要もないからな。
実際、この人は俺の顔を見てもそこまで引かなかった。
同族の空気を感じて、怖い人ではないと判断してくれたのだろう。
ただ、この人のキャラが濃いだけかもしれないが。
さっきから話し方もなんか変だし。
年齢は大学生くらいか。
厨二病が治りきっていない時期だよな。
しかも、中学生より色々と自由が増えてくるので、黒歴史が生まれやすいんだよな。
俺は大学にはいけなかったからよくは知らないが、後輩の田中くんは大学の頃の黒歴史がやばすぎて、大学のあった京都周辺には近寄れないっていってたし。
近づくだけで魂が軋みを上げるらしい。
田中くん、まだ厨二が抜けきってないよと思ったのを覚えている。
「じゃあ、ついてきてくれ。うちの工房は六階だ」
「あぁ」
俺は車椅子の人に促されるままにエレベーターに乗った。




