第2話 俺の女に手を出すな①
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色欲の醜兎(E)を倒しました。
報酬:140円獲得しました。
ドロップアイテム:醜兎の牙(E)を獲得しました。
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「よし、牙ゲット!」
「私も手に入れました。これで合計五百個ですね」
「いいなぁ。私は手に入らなかった」
戦闘を終えて、リザルト画面を確認すると、醜兎の牙が手に入っていた。
今一番欲しいドロップアイテムだ。
嬉しさのあまり大声を出してしまったぜ。
物欲センサーというものがあるのか、探しているとなかなか出ないんだよな。
さっきから下級ポーションや毛皮は出るのに牙がなかなか出てこなかった。
正直、武器の材料になるのは牙と骨だから毛皮とポーションはハズレなのだが、こういう時に限ってハズレの方が出るんだよな。
下級ポーションの方がドロップ率は低いはずなのに、今日は牙よりもポーションの方が多く出たような気もする。
気のせいだとは思うが。
京子がいるから下級ポーションって全然使わないせいでストックがかなりの量になってるんだよな。
おかげで今日幾つのポーションを手に入れたかわからない。
そろそろ全部売っぱらっておくか?
でも使うこともあるかもしれないから、とっておいた方がいい気もするんだよな。
下級ポーションが必要になってくると今度は下級ポーションが出なくなりそうだし。
物欲センサーぇ。
人間の情念からダンジョンを作ってる運営者だから、物欲センサーが実装されていてもおかしくないっていうのがまた怖いところなんだが。
いや、運営としてはダンジョンの攻略をして欲しいはずだから、探索者の有利になるような物欲センサーの使い方をしても不利になるような物欲センサーの使い方はしないとは思うんだが。
……しないよな?
この運営は天邪鬼だから、絶対にしないと言い切れないところがかなり怖いんだが。
「じゃあ、そろそろおわりでいいか」
「そうですね。道中のモンスターを倒しつつ、ボス部屋に向かいましょう」
考えていても仕方がない。
目標としていた牙五百個も手に入ったし、さっさとダンジョンを攻略して脱出しよう。
「やっぱり生産職は必要だよな。一度Dランクダンジョンに潜る度にEランクダンジョンで素材回収するのは効率が悪すぎる」
「そうですね。でも、なかなかいないんですよね。生産職の探索者はダンジョンにも潜ってないでしょうし」
「そうなんだよなー」
俺たちは生産職の探索者を探していたが、まだ出会えていない。
それ以前に探索者と出会うことが稀だ。
ダンジョン内ではお互いピリピリしているから、近づかないようにしているし、ダンジョン外では探索者の区別がつかない。
これで、生産職の探索者を探すなんて無理ゲーじゃないか?
みんなどうやって生産職の探索者を探しているんだろう?
そういえば、掲示板があるんだったか。
京子のかつてのパーティメンバーであるケンタってやつがその掲示板の住民だったらしい。
ヘルプ先生に聞けないような情報もそこでなら手に入るそうだ。
ダンジョンの隠蔽技能は検索エンジン大先生の検索すら欺いてしまうので、新着掲示板などから偶然見つけるか探索者からURLを直接聞く方法しか辿り着く方法はないらしく、俺たちはまだ見つけられていない。
……もしかして、生産職もそこで探せる?
もしそうなら、生産職に絞らなくても、探索者を探して、掲示板のURLを聞けば芋蔓式に生産職にたどり着けるのかも。
今まではダンジョン内にいる探索者は生産職ではないだろうから、声をかけていなかったが、そういうことならダンジョン内の探索者に声をかけてみるのもありかもしれない。
これは要相談だな。
「あれ?」
「ん? 朱莉、どうかしたか?」
「……ボス部屋ってここだったよね?」
「そうだぞ?」
朱莉はダンジョンのアプリを見せてきて、ボス部屋の位置を確認してくる。
ボスの位置がわかるのは俺だけなので、俺は自分のスマホを確認すると、間違いなくその場所がボス部屋だった。
その部屋はフロアの中央あたりにあって、他の部屋よりも広く、いかにもボス部屋って感じの場所だ。
それがどうかしたんだろうか?
「この少し手前のところに人がいるみたいなんだけど。ボスに挑む様子もないし、どうしたのかなと思って」
「人が?」
ボス部屋の手前には小部屋がある。
ボス戦前の準備部屋って感じの場所だ。
どうやら、そこに人がいるらしい。
俺のスマホには探索者は映らないからな。
索敵能力が忍者よりも高い盗賊のジョブについている朱莉が言うのであれば間違いないんだろう。
だが、その人たちはボスに挑む様子もなく、戦闘している風でもないらしい。
一体何をしているんだろうか?
「いや、普通にボスに戦いを挑む準備をしているのか?」
「? あ、そっか。うちはサグルっちがいるおかげでEランクのボス戦とか余裕だけど、Eランクに潜ってる普通の探索者にとってはボスは強敵だもんね。準備もいるか」
俺たちはボス前だからと言って特別な準備はしないが、普通の探索者にとっては雑魚モンスターより一段も二段も強いボスに挑む前には準備をするのが普通だ。
彼らは今、ボス戦のための準備をしているのかもしれない。
(ん? これはチャンスじゃないか?)
今、戦闘をしていないと言うことは、話しかけても大丈夫なはずだ。
精神統一とかをしてたら集中を乱してしまうかもしれないが、戦闘中に話しかけるよりはずっといい。
そんなこと考えていたら、話しかけるとか不可能だからな。
「なぁ。二人とも。少し提案があるんだけど」
「「??」」
俺は、探索者に掲示板を聞く作戦を二人に提案した。




