第44話 これからも末長くよろしくおねがいします
『先日、品川区の倉庫で落雷による火災が発生しました。幸い、火は燃え広がる前に消火され、この火事による死者は出ませんでしたが、重傷者二名、軽傷者二名が病院に搬送されました。どうやら、この倉庫は犯罪者グループが犯罪の拠点として利用していたらしく、倉庫内からは犯罪の計画書や被害品が多く見つかっています。警察は余罪について捜査中です。次のニュースです。最近、東京都内での交通事故が増加傾向にあります。十分注意して……』
「サグルさーんご飯できましたよー」
「あぁ。今行く。いつもありがとね〜」
「それは言わない約束ですよ♪」
俺は身だしなみを整えてローテーブルにつく。
料理が全て完成したらしく、京子も一緒にローテーブルにつき、テレビを消す。
朝食の時間は大体いろいろな話をするので、テレビは消してしまう。
「サグルさん。今日はどうする予定なんですか?」
「うーん。特に決めてないけど、たまには買い物にでも行ってこようかと思ってる。髭剃りがなんか調子悪くてさ」
さっきシェーバーを使って髭を剃っていたのだが、途中で何度も電源が切れてしまった。
充電切れなのかと思って充電器に刺してみたが、充電器に挿してみても充電は満タンなようだし。
バッテリーがへばってしまったのかもしれない。
特にお金に困っているわけでもないし、新しいのを買いに行けばいいだろう。
せっかくだし、秋葉原に行っていろいろと気になってるものを物色しよう。
オタクっぽいオタグッズは京子もいるし買えないけど、オタクっぽくないグッズだって色々ある。
何かいいのが見つかるかもしれない。
「電気屋さんですか。新宿の駅前とかにありましたよね。じゃあ、今日は新宿の方でダンジョンに潜りますか? あ、でも、昨日も新宿のダンジョンに潜ったから別のところの方がいいですかね? 確か、新橋にも大きいところがありましたよね?」
「……どこでもいいよ」
どうやら、秋葉原観光はまた今度になりそうだ。
まあいい。
タイミングはいくらでもある。
「(ガチャ)きょうちゃん! 学校行こ!」
「あ、今行くー! ご馳走様です」
唐突に扉が開き、朱莉が部屋に入ってきた。
京子は手早く朝食を食べ、食器を片付ける。
あれ? 今、朱莉のやつ、鍵を開けて入ってこなかったか?
いや、気のせいだよな。
合鍵は俺と京子しか持ってないはずだし。
いや、そういえば、もし何かあった時のためにって社長にも一本渡しておいたんだっけ?
じゃあ、今は美香さんが持ってるはずか。
まさか、それが朱莉の手に渡ってるなんてことはないだろう。
今は京子も一緒に住んでるんだし、ちゃんと鍵をかけとかないとな。
「サグルさん。ご飯食べたら食器だけ下げておいてください」
「いや、ちゃんと洗っておくよ。どうせ買い物に行くのは午後だろうし」
「そうですか? じゃあ、お願いします」
風呂場の方から京子の声が聞こえてくる。
今着替えているのだろう。
もう少し準備には時間がかかりそうだ。
それを見越してか、朱莉が俺の前に座った。
「朱莉は今日も学校に行くのか? 美香さんは?」
「私が学校休む方がお母さん気にすると思うから。あ、この卵焼き美味しそう! ひとつもーらい!」
「あ! 最後に食べようととっておいたのに!」
「んー! 美味しい!」
俺の皿から朱莉は最後の卵焼きを奪っていく。
本当に美味しそうに食べるから、怒る気も失せてしまった。
朱莉の感じから見ると、美香さんは本当に大丈夫なようだ。
この様子なら元の生活に戻るのもそう遠くないだろう。
やっぱり、美香さんが作り出したダンジョンを攻略した影響はでかいようだ。
「……サグルっち。ありがとね」
「美香さんを救ったのは朱莉だろ? 朱莉が一人でダンジョンを攻略したんだからさ」
「サグルっちがお母さんのダンジョンに気づかなければ攻略できなかった。それに、そのことだけじゃなくてさ。サグルっちがずっと一緒にいてくれたから、私は途中で折れずに頑張れた。まず、サグルっちが私を探索者にしてくれなかったらなにも知らずに搾取され続けることになっちゃってたし」
確かに、探索者にならなければ危ないところはかなりあっただろう。
レベリングやお金稼ぎにも協力したし。
だが、俺たちだって打算があった。
パーティに斥候職が必要で、朱莉が斥候職になってくれたからレベリングもお金稼ぎも協力したし、パーティメンバのためだから、色々と頑張ったのだ。
まあ、パーティメンバーが朱莉じゃなかったらあそこまで必死にならなかったかもしれないが。
「これからも、サグルっちが一緒にいてくれたら、大丈夫だと思うんだ。だから、ずっと一緒にやっていきたいと思ってる」
「……そっか。ありがとう」
どうやら、これからも一緒にダンジョンに潜ってくれるらしい。
これまでの蓄えも結構あるはずだし、借金取りもいなくなったので、朱莉が今後もダンジョンに潜るつもりかはちょっと気になっていたのだ。
どうやらこれからも継続して潜ってくれるみたいだ。
正直、助かる。
ここでいなくなられると俺も京子も困るからな。
Dランクダンジョンに潜るためには斥候職が必要不可欠だからな。
朱莉がいなくなって仕舞えばまた探さなければいけなくなるところだった。
「サグルさん」
「ん?」
朱莉はいつもの軽い雰囲気を消して、正座して俺の横に座る。
俺も思わず背筋を伸ばして向かい合うように座った。
「これからも末長くよろしくおねがいします」
「……あぁ」
三つ指ついて頭を下げる朱莉に気の利いた返事をしてあげることはできなかった。
だが、朱莉。その挨拶はなんか違うと思うぞ?
朱莉は顔を上げると、いつもの明るい笑顔でニッと俺の方を見てくる。
「言質、取ったからね!」
「ん?」
朱莉の今のセリフからは結婚の言質をとったみたいに聞こえた。
だが、ボッチの俺に朱莉みたいな可愛い女の子からアプローチが来るはずがない。
やばい、地雷を踏みに行くところだったぜ。
「朱莉ってもしかして俺のこと好きなの?」とか聞いたら一生口を聞いてくれなくなるところだった。
落ち着け。厨二の俺。
アニメみたいなことが俺に起こるわけないだろ。
「あかりちゃーん。準備できたー。行こー!」
「わかった。じゃあ、行ってきます。サグルっち!」
「サグルさん行ってきます」
「お、おう。行ってらっしゃい」
俺は二人は仲良く学校に行く二人を見送った。
こうしていつもの一日が始まった。




