善いことすると損をする事もあるのか!余計なお世話だったのか!?
誰も悪くない。誰も悪くないがこの話で一番気分を悪くしたのは僕だろう。
だから少し愚痴らせてくれ。
「あぁ~。無理だよぉ」
僕は坂道で少年に出会った。ふむ。5才ぐらいだろうか?泣いている。男の子より1つ2つ上の様に見える女の子が坂道を引き返してきた。
「やっぱり無理?」
ははぁんなるほどねと僕は思った。重そうにビニール袋を持つお姉ちゃん。荷物が重くてへこたれてしまった弟。食料品か。初めてのおつかいにしちゃハードモードだねぇ。
「やぁ。おっちゃんに手伝えることあるかい?」
僕は無駄に力はあるのだ。
子供たちの家につくまでポケモンの話やらクリスチアーノロナウドの話をした。
「ほんじゃあ」
「待ってください」
子供たちのお母さん。いいのいいのお礼とか。
「お名前と連絡先を」
いいっての。名乗るほどじゃないってやつよ。
「困ります。もしあなたが悪い人ならどうするんですか?」
「おおっ?」
悪い人?何で?ええー?なんとなーくお母さんの言い分から察すると僕が子供たちに『なにか変な事をした』可能性があると考えているらしい。
ああそう。連絡先を知っていたなら僕が『変な事』を子供達にしていたらすぐに警察に突き出せるもんね。なるほどねー。
僕は怪しいと?分かるよぉ。僕はタンクトップに半ズボンのビーサンおじさんだ。『変な事』をしそうな見た目だ。そちらは家もバレたからこちらも連絡先を控えておきたいと?いいっすよ。どうぞ身分証明書です。子供を守るのがお母さんだ。合格。合格だよお母さん。それでいい。でもムカつくっす。
「電話番号は本人の物で間違いないですね。ありがとうございました」
んーふー?やっと頂けたねぇ『ありがとう』。僕はそれが貰えれば充分だよ。
小説みたいに瞬時に皮肉なんて言えやしない。僕は怒りと恥ずかしさで震えていた。
別れ際にこう言い返すので精一杯だった。
「僕は今。凄く気分が悪いです」
お母さんは間違ってない。でも僕は悔しかった。
あの坂道は二度と通らない。でもまた姉弟が重い荷物を持てなくて泣いていたらな、とも心配になる。誰か優しい人が手伝ってくれるといいね。
僕のこの後の人生。人に親切にする事は極端に減るだろう。
未熟だなぁ。僕は。