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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第24章 アスコルト一家、学校に行く
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地下の秘密とは5

 学長室を出てすぐに頭を抱える。


 一体彼等はどこに行ったんだ。


 3人の行き先が分からず、ただ学校を彷徨う羽目になる。


 唯一の手がかりは、この宝の地図だ。


 特に意味もないが、地図の絵をもとに、1階の東講堂へ向かっているが、恐らく今は授業で使用されていて、調べることはできないだろう。

 調査に意味はない。今まで散々誰かが調べても見つからなかったのだ。今さら何かが見つかるとは思えない。


「いたっ!」

「あ、すまない! 大丈夫か?」


 地図に集中するあまり、生徒とぶつかってしまった。生徒は尻から倒れてしまった。

 慌てて転ばせてしまった生徒に手を差し出そうとしたら、その生徒が小麦色の肌をしていることに気付いた。


「あ、カルミア……」

「あ……」


 彼女の俺への印象が悪いことは知っている。知っているからこそ、差し出した手が無意味であることを知っている。

 居たたまれない空気が漂い、そして予想通り彼女は手を取らなかった。


 ただ、代わりに彼女は別のものに興味を持った。


「あ、地図……」


 カルミアは俺が落とした宝の地図を静かに拾い上げ、まじまじと見つめた後、冷めた目で地図を投げ捨てた。

 そして彼女はスカートをはたき、向こうへ進み始めた。まるで一刻も早く視界から俺を消し去りたいかのようだった。


 俺はそんな彼女の手を取ってしまった。


「離して」

「すまない、だが聞きたいことがあるんだ」

「離してって」


 強い語気からこれ以上彼女の腕を掴むことはできなかった。嫌がっている。

 手を離すと、彼女はまるで汚いものに触れたかのように、掴まれた腕を撫で払った。


 だが、今は彼女の一挙手一投足に気を使っている場合ではない。

 彼女が少しの()にも地図に興味を示した。しかも声に出してまで地図を確認したのだ。

 地図について、少なからず思う所があったということだ。


 どんな些細な情報でも良い。何も聞かずに終わるより遥かにマシだ。

 (すが)るものがあるなら喜んで縋る。


「この宝の地図について、何か知っていることはないか?」

「……知らない」

「今さっき、この地図を見た時に何か考えていただろう? 頼む! どんなことでも良いんだ、知っていることを教えてくれ!」

「それなら、私のお願いを1つ聞いてくれますか?」

「ああ、何だって聞いてやる!」

「黄衣の魔女と別れてくださ――」

「それは無理だ!」


 いや、それは無理だろう。


 どんなことでも彼女の願いを聞くという前提を、舌の根も乾かぬうちに否定した大人を見て、彼女はどう思うだろう。

 せっかくの宝の地図に繋がるかもしれない情報を、俺は不意にしてしまった。


 だが、こればっかりはどうしようもない。生徒2人先生1人とリリベル、どちらを救うかと尋ねられたら勿論どちらも救うつもりだが、それでも先に救うのはリリベルだ。


 俺がどれだけリリベルを愛しているか、彼女は知らない。知っていたらこんな質問はしない。


「即答なんですね」

「あ、いや……」

「良いですよ。それだけ返答が早かったら、先生がどれだけあの方のことを想っているか、察しはつきましたから」


 どうやら俺は彼女に試されていたようだ。一杯食わされた。

 さすがリリベルの弟子になっただけはある。


「分かりましたよ、教えます」


 彼女の態度は変わらなかったが、それでも会話ができるだけ彼女との関係は良化したと言って良いだろう。


「聞いたんです。授業が始まる前に横にいた生徒たちが、宝の地図に描いてある地下が、どこから繋がっているかを」

「それはどこだ!?」

「行きたいって思えば行けるみたい」


 では俺は行けるはずだな。




 いやいやいや、そんな馬鹿な。




「宝探しに夢中になってたよく一緒の授業になる男の子も、今日は1度も見かけていないし。まあ風邪を引いたのかもしれないけれど」

「ん、今日だと?」

「そう、今日ですよ」


 おいおい、行方知れずの生徒は2人だけではないじゃないか。


「他は、他に宝探しに夢中な生徒はいなかったのか?」

「んー、まあ知らないことはないですけれど」

「教えてくれ、頼む」


 この廊下にカルミアの他に誰もいなくて良かった。

 きっと俺は女子生徒に圧力をもって迫る危険な大人に映ったことだろう。

 直角のお辞儀もより怪しげに映るだろう。


 だが今は、カルミアが知る生徒の情報を得ることが先決だ。


 彼女が返事をしてくれたのは、俺の哀れな行動にひと通り引いた後であった。


「ネリネっていう子です」


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