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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第23章 絶対振動
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振動世界11

「いい加減にしてください」


 オルラヤさんの声がいつもと違いました。彼女の実家で彼女に攻撃された時みたいに、冷たくて暗い口調でした。本当は怒鳴りたくないのを我慢している感じです。

 いつまでも魔女を仕留められない僕が怒られているのかと思いました。


「こんなに他人を傷付けて、何がしたいのですか?」

「話を聞いてくれなかったのか――」

『咲かせや、六華(りっか)!!』


 びっくりしました。

 彼女が大声を上げるのは珍しいですし、他人の話を最後まで聞かずに遮るのも珍しいです。

 地面が一気に青白い氷に面し、怪我した僕の右腕を氷漬けにしました。

 その上で魔女は、地面から伸ばされた氷の棘に貫かれて、そのまま空に上がっていきました。

 どこまで上がっていくのだろうって見上げ続けていたら、途中で氷は頂点で大きな花を咲かせて、魔女は氷の中に閉じ込められてしまいました。

 見た目はとても綺麗ですが、彼女が魔女であることを思い出させるので、余り良い気分ではなかったです。


「動いちゃ駄目です。腕が取れちゃいます」


 力づくで氷漬けにされて地面に固定された右腕をうごかそうとしたら、彼女はあまり速くない駆け足で僕に寄って来て注意してきました。


「腕の怪我がこれ以上悪化しないように、氷の中に閉じ込めました。すぐ治しますね」


 オルラヤさんは凍った右腕に、抱きついてしばらくじっと動きませんでした。

 彼女が抱きついている間、氷漬けにされているはずの右腕はなぜかぽかぽかして温かったです。


「あの魔女は死んだのですか?」

「まだ死んではいませんが、死んだも同然です。彼女が持っている舌は全部没収しました」


 彼女が話す度に白い吐息が見えました。

 髪は霜が張っているみたいで、元々白い髪が更に白くなっていました。首元まであった髪は、霜のおかげで肩まで伸びて彼女の印象を少し大人っぽくさせました。

 その姿と雰囲気だけは、妹っぽく感じることはなくて、オルラヤさんらしさがありました。


「没収したとはどういう意味でしょう?」

「この雪が彼女の舌です」


 彼女が没収したと言っていた舌は、雪になってしまったようです。

 一瞬で氷漬けにされて、砕かれて、雪となって辺りに降り注いでいるようです。


 彼女が抱きつくのをやめて腕から離れると、僕の腕は治っていました。

 氷の中で切り裂かれたはずの右腕は、気付いた時には元に戻っていたんです。すごい魔法でした。

 治した腕に纏わりついていた氷は、いつの間にか剥がれて雪になってその場でしんしんと降り始めました。


 自由になった右腕を確認してみたら、縦に裂かれたはずったのに、それはなくて綺麗に治っていました。

 オルラヤさんの魔法は、こんな簡単に魔女を殺せるものだとは思いませんでした。リリベルさんの方が自慢話を聞かせてくるので、てっきり実力はリリベルさんの方が上だと勘違いしていたからです。

 でもこの魔法を見て、考えを改めることにしました。決してオルラヤさんはリリベルさんに引けを取らない実力を持った魔女でした。


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