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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第22章 順不同の奇跡
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奇跡的な戦い2

「ヒューゴさん?」


 クロウモリが初めに気付く。

 取り残されていた3人が一斉に俺たちに首を向け、その次に剪裁する者(スケイズマン)が俺たちを見る。


 己の魔法の素晴らしさを大げさに見せびらかすために、曙衣(しょえ)の魔女はわざわざ戦いの中心点に俺たちを置いた。


 彼女の馬鹿げた行為のおかげで、剪裁する者は攻撃を当てられる的が増えた。実際にそう思ったかは分からないが、巨体は一斉に腕を振り上げた。

 奴等の目的は全員が、その腕を俺たちに向かって殴りつけることだろう。

 だが、殴るという動作の過程で攻撃は行われている。そこが非常に紛らわしく嫌らしい所なのであろうが、奴は腕を振るとその方向の先にある物全てを切り裂く。


 それはどう見ても魔法の類である。

 どうやって繰り出しているのかはさておく。殴る動作のついでで繰り出される切り裂きの魔法は、1人だけなら避けるのは楽でも、4方向からとなると避けるのは難しい。


 次の瞬間には全員が切り裂きの被害に遭うと思った。


 それを止めたのは曙衣の魔女だった。


 彼女がつい先程まで伸ばしていた手は、俺に向けられたものではなく、この場に魔法陣を展開するためのものであった。


 それだけだ。ただ、それだけだった。

 魔法陣がそこに広がっただけで、誰もバラバラ死体にならずに済んだ。


全てが(フロント・フェイス)表面(・ヘッド)


 地表に現れた輝く魔法陣が、その場にいる全員を包んでいるだけで、剪裁する者の見えない切り裂きは失われる。


「さあ、存分に力を奮うのよ!」


 曙衣の魔女の掛け声に、俺だけが反応できなかった。

 後は皆が、思い思いに剪裁する者へ攻撃を仕掛けていた。


 オルラヤの氷は、放った方向全てを氷漬けにし、氷漬けになったその瞬間に、すぐさま硝子のように散る。


 クロウモリが一瞬で剪裁する者に詰め寄り、奴の腹に拳を当てた思ったら、その方向にある何もかもが血煙となって消滅した。


 リリベルの放った雷は、最早俺の目では視認できなかった。

 雷光も轟音もなく、雷という魔力がそこを通ったという結果だけが、剪裁する者と森を無へと変化させた。


 ネリネは想像し、それを実現したことは確かだった。

 彼女が向く方向のありとあらゆる物体全てが、皿の上に乗ったステーキになっていた。

 無造作に地面に置かれたステーキの山は、全く食欲をそそらなかった。


 それを実現させるために尋常ではない魔力量を消費したであろうに、誰1人として魔力切れは起こしていないし、肩で息をする様子もなかった。

 4人の剪裁する者は影も形もない。


「全員が覚醒し、一撃で剪裁する者を殺す。分裂する暇も与えずに勝利を得たことは、正に奇跡としか言いようがない」


 奇跡が起きたと曙衣の魔女は喜ぶが、こんなものは奇跡ではない。

 この魔女は現実を捻じ曲げているだけだ。


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