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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第22章 順不同の奇跡
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完璧な占い3

 では、何もせずオルラヤの家に居座り続けるしかないのかというと、そのようなことはない。


 クレマズメは、ここに留まり続けることも運気の低下を示唆したからだ。

 つまり、どこにいようとも悪いことは起きると彼女は占ったのだ。


「ヒューゴ君の運のせいじゃないかな」


 リリベルはからかうように言った。

 神の加護から見放された俺は、運というものに左右されなくなった。

 あり得ないことを平気で引き起こし続ける能力は、悪運とも奇跡とも呼べない境地に達している。


 クレマズメの占いは俺に対してだけは無力であり、彼女はただ知っている言葉を吐くことしかできない。この場合は、悪いことが起きると評することしかできないのだ。


 何をどう占っても、同じ言葉を繰り返すことしかできないという事象は、彼女に占い師としての能力に疑問を持たせてしまう。


 故に彼女は、自らの力を試すために俺を占いたがるし、占う度に絶望する。

 占いは当たっているはずなのに。




 クレマズメがふらりとまたどこかに旅立って行った後、今度はクロウモリと会話をした。


「2人とも徐々に距離が近付いてきたな」

「近付かざるを得ないだけです」

「そういう意味じゃない」

「知ってます」


 この通り、以前の関係と同じようにクロウモリとは気軽に冗談を言い合える仲になった。


 そして、オルラヤとの関係も良好だ。


 ほぼ元通りの2人になったと言っても過言ではないだろう。


 最近のオルラヤの顔はほのかに赤い。

 それだけでも、十分だ。

 後は好きにやってくれるだろう。


 だから、俺たちがここに残り続ける理由はなくなった。




「リリベルさんがここから離れたら、白衣(はくえ)の魔女はどうなるのですか」


 クロウモリが不意にそのような質問を投げかけてきた。


「ヒューゴ君程ではないけれど、魔力は彼女に与え続けられるはずだよ」

「おいおい」


 クロウモリより先に言葉が出てしまった。


 てっきり、どれだけ距離が離れていようともオルラヤに魔力が与え続けられるものだと思っていた。

 彼女の答えは俺やクロウモリが想像していたものとは遠くかけ離れていた。


 彼女は当たり前だと言わんばかりに、オルラヤの身に起きるであろう危険を言い放った。


「でも場合によっては、それもなくなると思う。例えば私とオルラヤ君の間に魔力の流れを阻害する物があれば、オルラヤ君は満足に生きていられなくなるだろうね」

「それでは意味がないではないか……」




 クロウモリはしばし呆けてしまっていたが、気を取り直してからは行動が早かった。


 オルラヤにことの重大さを伝え、彼女の従者たちに彼女を外に連れ出すことを伝えた。

 つまり、リリベルの行く先へ付いて行くということだ。


 従者たちの間で、激しい論争が繰り広げられることになったが、リリベルは全く意に介さず、明日にでも出発すると言い放ってしまった。

 こうなってしまうと、従者たちは否が応でも主人にリリベルと行動を共にしてもらうしかないという結論に達せざるを得ない状況になる。


 そんな彼女たちを気遣って、オルラヤは彼女たちに指令を与えた。


 まず彼女はフィズレにある俺たちの家に屋敷を移動させる命令を下した。

 ようは引っ越しだ。


 ひたすら主人の帰りをこの屋敷で待ち続けるより、意味のある行動を取らせるための命令である。

 誰もが魔法を使える者たちで、白衣の魔女の配下である彼女たちなら、そう日を使わずにそれぐらいのことはやってのけそうだと思ったが、彼女は更に命令を下した。


 フィズレに辿り着くまでの間に、魔物たちの動向を書としてまとめて欲しいという内容であった。


『歪んだ円卓の魔女』の1人として、彼女は真っ当に働いていた。

 リリベルとは大違いだ。


 彼女を慕う従者たちは、彼女の命令に従順であり、誰も異を唱える者はいなかった。


 こうして、事態はあっという間に変わり、俺たちは再び旅立つこととなった。




 最終目的地はフィズレにある家だが、クレマズメの占いを参考にすれば、俺たちはオルラヤの従者たちより早く目的地に到着することはないだろう。


 これは直感だ。


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