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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第21章 黄金の杖
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金の杖2

 チヤとロクシミがアンフィスバエナたちを蹴散らしてくれている間に、私は氷と対峙することになった。


 金粉の光と共に、地上が隆起し氷がちょっかいをかけにきた。


 私はわざと、彼女たちから離れた。




 理由は勿論、オルラヤ君に魔法を放てば、文句をつけられそうだから。


 蛇を倒しながらも私が離れて行くのを見たであろう2人は、私のことを何度も呼び止めようとしたけれど、残念ながら今は彼女たちの言うことを聞いてあげられない。




 氷の茂みを抜けたすぐ先に、感じた通りの魔力がそこにあって、彼女と目が合うなり戦いが始まった。


 頭痛でもあるのか、彼女は頭を抱え苦悶の声を上げながら、立ち向かってくる。

 あの様子なら、集中して魔法を詠唱することなんかできていないはずで、周囲に散らばっている氷漬けの花たちは、最初に襲われた時よりも出来が悪い。


 私にとって彼女は、あまり相性の良い相手ではない。

 氷の元々の性質なのか、彼女の魔力の質のおかげなのか、どうも雷が向こう側へ通りにくい。


 けれど、彼女が詠唱に集中できていない今なら、多少は渡り合えるのではないかな。




「なぜでしょう。リリベルさんをここで足止めしなきゃって、思っています」

「ファフタールに足止めするように命令でもされているのでしょう。情けないね、魔女が魔物に良いようにされるなんて」

「何が何だか分かりませんが、すみません」




 謝っておきながら、彼女は厚々な氷の板を私の両側に置いて、それを一気に閉じようとした。


 私を殺さないように動きを止めるならまだしも、私を殺してしまったら意味がないでしょうに。

 それともファフタールの意志が介在する状況での、彼女なりの蛇への反抗の証なのかな。




 身体から放出できるだけの雷を全部放出する。


 すると雷の衝撃を受けた反動で両側の氷の板は、私のもとから離れていく。

 むしろ必要以上に雷を放ったせいで、氷が木々を薙ぎ倒していく音が遥か向こうまで鳴り止まなかった。


 音を聞いている間に反撃を行う。


 彼女の氷を止めれば良いだけだから、焼き殺さずに痺れさせてあげれば良い。

静雷(じょうらい)』なんて、多分ぴったりだと思う。




 彼女に向けて小さな雷を下から這わせて向かわせてみた。




 そうしたら彼女、その場でくるりとひと回転したんだ。

 踊っているみたいに優雅な所作だけれど、あれで1つの魔法だ。


 いわば自分に向かってきたものを薙ぎ払っている。


 無駄な動作だけれど、彼女のこだわりの1つだから仕方がないのかもしれない。


 薙ぎ払いによって生み出された冷たすぎる風が、氷の草花を粉々にして、私に突き刺そうとしてくる。

 氷を避けても風そのものに当たれば、鼻ぐらいはポロリと取れてしまうだろうね。


 だから、私も雷を横向きに放った。

 小さな氷やその場しのぎの風程度だったら、それだけの雷で簡単に対処できる。




 さすがに彼女は身体を動かして回避するしかなかった。


 だから、その隙を狙ってもう1度『静雷(じょうらい)』を彼女めがけて発射する。


 あんなに動き辛い衣装では、身体を大きく動かすのも難しい。


 だから、私は自信満々にわざと鼻で笑ってやったんだ。




 そうしたら、オルラヤ君は、氷の椅子を作り出して、避けた勢いのままにそこに腰掛けた。

 私の雷は氷の椅子の魔力に阻まれて、彼女まで上手く到達できなかった。


「ありゃ」

『咲かせや、六華(りっか)


 ただの氷の魔法でも、彼女の応用の仕方には正直、見習うところがあるかもしれない。

 なんて思いながら、私は彼女を起点とした巨大な氷の華に貫かれてしまった。


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