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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第21章 黄金の杖
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金の杖


◆◆◆


この森の樹木はどれも背が高い。

植物たちの生存競争が、さぞ激しいのでしょう。

だから木に登ろうなんて思ったら大変だ。


ネリネが突然、氷を破ってヒューゴ君のもとへ向かい始めた時は、びっくりしたかもしれない。

彼女が私の手から離れてどこかへ行こうとしたことに驚いたのではなく、オルラヤの氷をいとも簡単に破壊できたことに驚いた。


魔法陣はともかく、詠唱もなく魔法を扱っていることは、はっきり言ってすごい。

生まれたばかりでそれを使いこなせることがすごい。




けれど、それは彼女が天才だからではない。

ヒューゴ君に問われた時には、彼女のことを天才だからで片付けてしまったけれど今、彼女の行動を見て確信した。


その行動と共に見えた魔力の流れで確信を深めた。


彼女は賢者の石と同じだ。


彼女は私以上に魔力を持ち、それを体内で全て完結させている。


石そのものを身体に埋め込んで、自らを石の触媒とする者たちを何人か見かけたことはあった。

でも彼等は、賢者の石を賢者の石として機能させるために、外から魔力を継ぎ足さなければならない。


賢者の石はたくさんの魔力を入れている。

外から魔力を吸い続けていないと、いつまでも石としての機能を持たせられる物があるかもしれない。


けれど、ネリネは、彼女は、一切の必要がない。

彼女は無意識に、必要だと思った時に、距離に関係なく、誰の制約も受けずに、瞬間的に魔力を自分のものにしている。


さっきオルラヤ君が作り出した氷の防護壁を、ネリネは即座に破壊した。

緻密で堅牢な防護壁を破壊するのは、私でも骨が折れるというのに、彼女はただ蹴破って破壊した。


私が見たこともない目まぐるしい動きで、魔力が瞬間的に集まり、彼女の想像通りのことを引き起こす。




それでも知識は必要だ。

賢者の石にだって魔法陣はある。想像通りのことを引き起こすための魔法陣が必要だ。

そして魔法陣を描くためには知識が必要で、ではその知識はどこから得たのかという疑問が当然に浮かぶ。




丁度良いことに、つい最近、私は得たはずの知識を失ってしまった。

失われた知識がどこにいったのか、彼女の行動を見て理解することができた。


てっきり、黒衣(こくえ)の魔女が私に力をつけさせないようにするために、私から知識を奪ったのかと思ったけれど、それは違ったみたい。


実際はネリネに知識を取られてしまったみたいだ。

でも、それなら今度は、どうやって彼女は私から知識だけを奪えたのか。

それは残念ながら私の知識では想像がつけられない。歯がゆいけれど、仕方がない。




ただ、今の彼女は、壊したいと思ったら壊せるし、生み出したいと思ったら生み出すことができる。


身体の外にあるか中にあるかは関係ない。

世界中の魔力が彼女の手中にあるようなものだ。羨ましい。


ヒューゴ君が彼女の魔法に驚いて私に何度も状況を説明してきた理由が分かった。

驚きもするさ。




この世を作り変えるために、あの時あった全ての魔力を使って、ヒューゴ君の想像通りの世界を生み出したはずなのに、それでも失敗してしまったのは、あの子のおかげだ。


あれだけの大仕事を成し遂げるために、さすがに他のことには気を配っていられなかったからね。

だから、彼女が魔力を奪っていたことに気付けなかった。




目の前で弾け吹き飛んでいった氷の欠片たちに混じって、アンフィスバエナたちの姿が(あらわ)になった。


余程私の魔力が欲しいと見える。


私が求められたいのは、君たちではなくヒューゴ君だというのに。

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