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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第19章 死守
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炎の死

 1人は剣で、もう1人は具現化した物体で、俺はリリベルから奪い取った魔力をそっくりそのまま『雷歌(らいか)』という雷に変えて、同時に右衣(うえ)の魔女に攻撃する。


 魔法を詠唱した訳ではない。


 ただ、リリベルが放つ『雷歌(らいか)』と同じものが出せたら良いなと思って、それを想像して生み出した。


 全てを吸い込み、分離させ塵に変えて、そして無にする。

 歌声のような落雷音だけが周囲に響き渡るように、そういう黒い玉だという想像も含めた。


 彼女の魔法とは、音が出る原理も全てを無にする過程も、似て非なるものものだが、それでも彼女の魔法と同じであるように願って、丁寧に想像した。


 俺がどれだけ彼女と彼女の魔法を愛しているのかの愛情表現だ。言葉で伝えずに察してもらう手法は好みではないが、ほんの少しでも伝わっくれたら嬉しいことに変わりはない。




 ◆◆◆




 私の魔力を奪い取ったヒューゴ君のことを、酷いと思った。


 思ったけれど……。


 ああ、顔が。


 顔が熱いよ、馬鹿。




 ◆◆◆




 右衣の魔女の防護壁が割れる。

 割れたそばから修復が始まる。そこに具現化された俺が剣を刺し捩じ込む。


 剣の形が先端から歪み始めて元の魔力に変わろうとする。

 変わろうとした先から魔力は、俺の方に戻らずに右衣の魔女の防護壁に吸い取られるように、形を変えていた。


 塞いではならない。


 防護壁が直る前に、剣を差し込んだ場所に黒い雷を手で押し込む。


 具現化された俺も、差し込んだ剣も、上から押し潰そうとする重量物も、右衣の魔女の防護壁も、皆等しく黒い雷に飲み込まれていく。


 魔力の塊を押し込む俺の気合いの込もった声も、右衣の魔女の詠唱する声も、聞こえない。




 上にいる俺は更に重量物を具現化して、圧力を与える。

 防護壁が上からひびが入って、更に黒い雷が進んでいった。




 そして、防護壁の終わりが見える。


 右衣の魔女の魔法陣が光る。


 奴の口が動く。


 全てを巻き込む黒い雷が、右衣の魔女の魔法陣から出た青い光によって湾曲される。




 一体奴が何の魔法を唱えたのか分からない。分からないが、黒い雷が湾曲されるのだけは許せなかった。


 リリベルの雷は何ものにも負けない。負けてはならない。負けたくない。

 彼女のことに関してだけは、想像力で負けたくなかったから、皆の想像力を掻き集めてこの想像の結果を形にした。


 それでもまだ足りない。


 黒い雷が捻じ曲げられて、右衣の魔女に届かなくなりそうになる。




 その時だ。




 細長い雷が背中から飛来して、防護壁を貫いた。


 具現化した雷に返事をするように、彼女が雷を放ったのだ。




 ◆◆◆




 やれやれ。


 格好良いところを見せてくれるのかと思ったら、これだ。


 全く、ヒューゴ君らしいよ。



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