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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第18章 2人の黄衣の魔女
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2人とも黄衣の魔女7

「俺がいるせいで、魔女たちの計画に支障が出た。だから今ここで最高戦力の魔女で俺を殺そうとしている訳か?」

「いいえ、違いますよ」

「違うのか……」


 ではこの一連の会話は、俺に一体何を伝えようとしているのか。


「ヒューゴ様とリリベル様は素晴らしい成長を遂げましたね。私たちを何人も殺してくれました。リラ様との戦いにも勝ち、実力を示してくれました」


「ヒューゴ様には感謝しています。結果的にヒューゴ様が弱かったことで、リリベル様は経験を積むことができましたし、次代の魔女すら作ってくれましたから」


 俺は不死になってから、実に多くの死を消費してきた。

 不死の利便性を享受するようになってからは、軽々しく死を選択してきた。そのツケがよりにもよってリリベルに回ってきた訳だ。

 ツケ、と言っていいかは分からないが。




「ですが、ヒューゴ様がリリベル様と出会ったことで、私たちが得られた最大の利は別にあります」


「ヒューゴ様。ヒューゴ様には大変多くの呪いがかけられています。私たちではどうしようもない程、複雑に絡んだ呪いです」


「大半はリリベル様の呪いでしょう。リリベル様がヒューゴ様を失わないように、あのお方が知恵を結集させた結果が、今のヒューゴ様です」


「ヒューゴ様は、リリベル様よりも私よりも強い存在となりました。黒衣(こくえ)の魔女を倒せる力を持った存在に最も近いお方になりました」


 チルの言葉に思わず鼻で笑ってしまった。

 俺がリリベルやチルより強いだなんて、あり得ない話だ。どう贔屓目に見たって、俺が彼女たちのように戦いで秀でているとは思えない。


「1人の魔女を倒すために、俺がどれだけ死んでいると思っているのだ。不死ではなかったら、魔女の1人も倒せなかっただろう」

「では、魔女を倒すために必要な魔力はどこから得ているのですか?」




 突拍子もない質問であった。

 リリベルを良く知る彼女たちなら知っているであろうことを、俺の口からわざわざ言わせて何がしたいのかと勘繰ってしまう。


「どこって……リリベルからに決まっているじゃないか。彼女の膨大な魔力があって、やっと俺はそこそこの力を発揮できるのだから」

「魔力の扱いは通常、距離が離れれば離れる程、緻密な操作を要求されます。幾ら膨大な魔力があっても、特定の場所に魔力を送る操作ができなければ無意味です」

「リリベルだからこそできるという話だろう」

「いいえ、ヒューゴ様。リリベル様にも限界があります」




 チルが猫の手を開いて、俺に1度見せると、その手から色のある魔力を放出し始めた。きっと俺が分かりやすいように、別の魔法で着色して魔力を放出してくれているのだろう。

 ここでは魔法の詠唱は御法度のはずだが、彼女は気にすることなく魔力を放出し続けた。


 色のついた魔力は、空中を雲のように漂いながら色を伸ばしていき、やがてラザーニャがいる所にまで至った。

 虹のように弧を描いていた。


「ヒューゴ様がいつでもリリベル様の魔力を使って力を発揮するには、リリベル様は常にヒューゴ様の位置を認識し続け、魔力を送り込み続けなければなりません」

「その心配をしないように、リリベルと契約を結んだのだ」


 話している間に、今度はダリアとトゥットが手を上げてチルとは異なる色の魔力を放出し始めた。

 その魔力は弧を描き続けるチルの魔力に伸びていき接触すると、チルの魔力は壁に遮られるように形を崩してしまう。それでも、ダリアとトゥットの魔力を迂回しながら進もうとしていくが、再びダリアとトゥットの魔力が遮ってしまう。

 そのため、ラザーニャに届くチルの魔力は途切れ途切れであった。




「契約であろうと呪いであろうと、魔力を遠く離れて受け渡す手法は、世界中にある様々な魔力が邪魔をして、上手くいかない場合があります。これは良い方法とは言えません」


「魔法の詠唱時に正しく魔力が供給できなければ、困ると思います」


「合理的な考え方をされるリリベル様なら尚更、この手法は使わないでしょう」




 チルは、俺がリリベルの魔力を使って魔法を使うことができるのは、彼女の魔力を受け渡してもらっているからではないと言っていた。


「ですから、リリベル様はヒューゴ様に、自分と同じようになるように、多くの呪いをかけ続けたのです」


「今のヒューゴ様はリリベル様と同じで、周囲の魔力を自らの魔力に変換し、多くの魔力を扱える能力に長けた性質に変化しています」


「弱くとも愛しい騎士のために、リリベル様は合理的にヒューゴ様を守っているのです」


 やっと、やっと魔女たちが俺だけをここに呼んだ理由が分かった。


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