2人の黄衣の魔女2
ここは季節で言うところの夏が毎日あるようなものだ。
いや、これを夏と呼ぶにはあまりにも暑苦しいかもしれない。度を過ぎた季節感は、涼しい装いを行うことを無意識に拒ませる。
リリベルの発狂により、リリフラメルが苛立ちを隠さないまま水を絞り出す羽目になった。
とはいえ、彼女が水浴びを始めたことで、自然と俺たちも身体を洗い流す流れになったことは良いことである。
再び汗まみれの衣服を着ることになるのは億劫だが、それでも身体中の不快感が少しでもマシになることを考えれば、精神衛生上は上の上である。
行水の途中に風を感じ始めた。
この砂漠の土地で風を感じるのは、非常に珍しいことだ。
珍しくて、非常に危機的な状況だ。
リリベルとリリフラメルは既に身体を清められて満足していたところだった。
俺は彼女たちから離れた所で、リリフラメルからもらった水を使って身体を拭いている最中だった。
何と間の悪いことか。
風は砂を運ぶ。
雲1つない綺麗な青空も、遥か向こう側では徐々に濁りが生まれている。
身体に纏わりついた水分を拭い切らないまま服を着る。おかげで濡れた肌に服が張り付き、せっかくの気分の解放の機会が、一気に最低な気分へと変わる。
これから風が砂を運び、濡れた身体に付着すると考えると更に気分は億劫になる。
しかし、それらの気分の上下に関する事柄を無視してでも、俺たちは急ぐ必要があった。
「リリベル! リリフラメル! 風だ! 風が吹いている!」
「知っているよ! 早くおいで!」
身体は急ごうとしても、砂が急ぐ足をここに留まらせようとする。
急いで足を踏み抜こうとする度に、力が入って砂中に足が取り込まれていく。
思うように身体を動かせないことの何と腹立たしくもどかしいことか。
背中に受ける風が更に強くなる。
振り返って風に舞い上がる砂の行方を見ると、徐々に徐々に砂埃が立ち込め始めていた。
風で出来上がった小高い砂の丘がいくつも並んでいて、その更に先に砂が煙のように見えている。
砂の煙の向こう側の景色は悪い。
砂煙は目に見えて巨大化を始めている。
やっとリリベルたちに合流して、彼女に魔法をかけてもらい、2人を両脇に抱えて一気に駆け抜ける。
水の上を走るように砂を駆け抜ける。
砂埃はやがて砂塵へと変化し、巨大な砂嵐と化す。
既に向こう側の嵐は形をはっきりとさせている。
あの砂の塊が、この国の数ある神の1人だ。




