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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第17章 用法・用量を守って正しく泣いてください
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奪うべき力4

『手を抜く故に無為な死を遂げるのだ』

「油断はしていなかった」

「ん? 誰と会話をしている?」


 俺とストリキネの会話の仕組みを知らない黒鎧の男が、困惑していた。この動揺は格好の攻撃の機会だというのに、手元に剣がないのが残念だ。




『まあ良い。そこを除け』


 ストリキネは既に真上で翼を羽ばたかせており、口から青い炎を覗かせていた。

 真上から炎が吐かれれば、地上に当たった炎は放射状に広がっていく。僅かな瓦礫を壁にしても無意味だ。

 ストリキネの炎の威力を熟知しているのは俺だ。




 だが、ストリキネと契約した俺は彼の炎に焼かれることはない。

 彼の魔力と俺の魔力を混合して互いに繋がっている。彼の魔力によって吐き出される炎は、俺の身体を焦爛(しょうらん)させることはない。


「龍!?」

「防御は、できないな」


 諦め気味のエリスロースという男の態度を見て、奴等の死を確信した。これまでにストリキネの炎に焼かれて無事でいた者などいない。


青い青い(ブラウアーブラウアー)月曜日(モンターク)!!』


 驚いた。

 この女はドラゴンなのか?


 青髪の女はストリキネと同じ青い炎をその身から吹き上げたのだ。


 彼の炎と女の炎が空中で衝突し、両方の熱波が辺りに散らされている。肌が焼ける。


 そもそもストリキネの炎と対抗できることがあり得ない。

 何なのだあの女は。




「熱っ!! 待て、リリフラメ……熱い!」




 何なのだあの女は。




 だが、幸運ではある。

 あの女の魔法は、連れの男たちにとって動揺を生むに足る行動で、その隙に剣を拾い上げることが叶った。


 ストリキネと青髪の女それぞれに余所見をしている黒鎧の男に、剣を刺し貫く。

 兜と胴鎧の間の僅かな隙間だが、ろくに盾で防ぐこともしない今であれば狙うのは容易かった。


 今度こそ1人を仕留めた。剣が肉を貫くという幾度も経験した覚えのある感覚が、手に伝わって殺した実感を湧かせた。

 ダメ押しで剣を横に捻れば、この男の再起不能は確実だ。




 剣を引き抜いてすぐさまエリスロースという男に切っ先を向ける。

 この3人の中で2番目に怪しい力量の持ち主だ。さっさと殺すに限る。




「クソ……、冗談みたいな痛みだ」




 馬鹿な。

 確実に殺した感覚はあったはずなのに、なぜこの男は生きている。本来なら喋ることなどできない程の傷を負わせたはずだ。


 まさか人殺しの作法を見誤ったか。


 いいや、そんなことはあり得ない。曲がりなりにも俺は人殺しの訓練を受けた者だ。




 黒鎧の男への攻撃を再度仕掛ける。

 剣を握り直して、先程よりも強い力で首と胴の間に貫き通す。




 今度こそ殺した。

 肉や内臓を差した時の感覚が、先程よりも確かに強く残っていふ。間違いはない。




 だというのに、奴は剣で刺された痛みに叫びもあげずに剣を掴み、強く握りさえしてみせた。


 この男も常人ではない。


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