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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第16章 舌戦
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終章 第1節

 カルメが息絶える姿が見えた瞬間に、腹に痛みが走った。

 視界はぐるりと回るように滅茶苦茶になり、元に戻った時には別の場所にいることが分かった。


 天井は半壊していて頭上だけにしか残っていない。




 腹に何があったのか調べてみたら、鏡が置いてあった。机の上に置いてあったヴェッカの持ち物だ。

 相当な重量物で腹への圧迫感は凄まじく、堪らず鏡を床に除ける。


「天井から鏡なんて、随分とヒューゴ君は不運だね」




 すぐ横で聞き慣れた女性の声が流れてきた。


 鏡よりもその声の方が気になって振り向くと、リリベルがいた。勢い良く振り向いた俺の挙動が不思議だったのか、彼女はきょとんとした目で俺を見つめていた。




 それで思わず彼女を抱き締めた。無意識に。




「どうしたんだい。私の魅力に当てられたしまったのかい?」


 彼女の小さな手が俺の身体を更に彼女の方へ引き入れた。心地良かった。


「いきなり何を言い出すのかと思うかもしれないが聞いてくれ。寝ている間にカルメ・イシュタイン本体を殺した」


 きっとそうは思っていないのだろうが、俺の目には、何を言っているのだこいつは、という顔をしているように見えた。

 しかしすぐに彼女は、いつも俺に向けるような優しい微笑みを向けてきてくれた。


「教えてくれるのでしょう? 彼女との戦いのあらましを」

「勿論だ。まずは――」




 ◆◆◆




 寝ている間に地獄の王と魔女を殺したなんて馬鹿げた話を、リリベルが信じてくれるようになったのは、彼女の独り言を一字一句違えずに言ったからだろう。


 ことの全てを伝えた後、リリベルは全て合点がいったかのように、掌に拳を叩いておおと唸った。


「ふふん、さすが私の騎士だね。遂に1人の力で魔女を倒してしまった。それどころか地獄の王すら黙らせた」


 彼女の称賛は心の中で受け取った。

 どれだけ憎い魔女を殺したとして、命ある者を殺して喜ぶ度胸はなかったからだ。


 代わりに彼女に最近起こっていた体調の不良について言及した。


「この後、オルラヤに身体を調べてもらって欲しい。特にお腹を」

「私の?」

「そうだ。リリベルの頭痛の原因が分かったかもしれないんだ」


 思い当たる原因を直接言葉に出してはいないが、それでもリリベルはふふんと鼻を鳴らして自身のお腹を大事そうに撫で始めた。

 そこに何かあるのか予想はしていたと思えるような仕草だった。




 こうして、祝祭は終わった。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

ブクマや評価、いいねなど、大変励みになり悶えるほど喜んでいます。

良ければ今後ともお付き合いください。

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