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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第16章 舌戦
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第2章 第4節

 まんまと挑発に乗ってくれた。

 上手くことが運べたせいで、此方が不安になってしまったぐらいだ。


 だが、支配者の糸(ジグロプト)で俺の身体を無理矢理変形させたことが、カルメの本気の怒りを表していることは確かだった。


 おかげでこの言い争いの場に簡単に乗り込んでくれた。

 ある意味でヴェッカよりも単純で分かりやすい思考だろう。


 恐らく舌戦にすらならない。

 このまま奴を挑発し続けて、論理的な思考を鈍らせていけば勝手に自滅してくれるはずだ。




 机の上の鏡はまだ健在だ。

 俺の言葉に反応して、自慢気に芸術知識を披露するリリベルが鏡に映し出されている。


 つまり『舌戦』という鏡の効果はまだ続いている。


「この席に座ったということは、屈辱的な汚点だということだよね」


 カルメの人形遊びの舞台に、脚本家を自称する奴自身が出しゃばっている状態ともなれば、舞台としては最悪の出来になっていることは明白だ。

 勝手に広げた自分の世界を壊されて勝手に怒っているカルメに、ざまあみろと思う。


「この時点でこの舞台は駄作も同然だ。舞台の取りやめでも考えたらどうだ?」

「地獄の王と哀れな騎士の戦いは、この演目には必要なかった」

「辻褄をどうやって合わせるつもりだ? 自慢ではないが、俺はこの世界に地獄を顕現させた男だぞ。お前の人形劇に深く関わっている人物が、いきなり消えることになるのか?」

「代役で差し替える。ヒューゴという騎士が目立つ顔ではないってことは、演者が代わっても気付かれないってことだよね」

「劇の途中で演者が代わるなんて、聞いたことがない。前代未聞だな。やっぱり駄作も良いところ――」


 2度目の首折りによって問答無用で会話を中断させられた。

 挑発が余程効いているようだ。


 奴は俺に対する直接攻撃が無意味であると悟り、今度は手を変えた。

 鏡を見るように促して再び故も知らぬ者たちを殺し始めたのだ。


 鏡に手を突っ込んで、鏡の中にいた誰かの身体の一部を引き抜く。

 そして絶対に致命傷になるものを選んで抜き取り、机の上に並べていった。


 オークの大きな心臓や、ゴブリンの脳味噌。

 大人が子どもかは関係なく、この世界にいる誰かの命を奪いながら会話を続けた。俺に対する精神的な攻撃を仕掛けているのだろう。


 精神年齢の幼い奴は、命を簡単にすり潰していく。




「まず根本的なことを話していこう。私は被害者だからっと」

「言うに事欠いてそれか」

「この素晴らしい人形劇を始めるきっかけは、あのクソガキのせいと言っても過言ではないから」




 そう言って鏡に現れたのは、今よりもっと小さなリリベルの姿だった。


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