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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第12章 鏡の中の魔女
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2者うま住に中の鏡

 城の中にある針のように尖った塔には、螺旋階段で登って行く必要がある。

 先を行くラルルカの黒いマントの下から青黒いスカートと黒いタイツを履いた足がちらちらと見える。タイツといえば男が履く物だから女性が履いているのは珍しいけれど、案外似合っている。

 ぴちぴちのタイツのせいで、彼女の女性的魅力がこれでもかと表れているね。


 なんで私がそんなものを見せられなきゃいけないのさって思うけれど、同時に危機感も感じられた。


 彼女の先進的なファションセンスに、ヒューゴ君が目を引かれたりしないかって思ってしまった。

 私が持っていない感覚と魔法の才能を彼女が持っていると知ってから、彼女に対する警戒心が膨れ上がってしまっている。


 この先もずっと彼が私を愛してくれるという保証が無いことは、可能性として十分にある。

 心変わりというものが存在することを、私はいくつも読んできた読み物で知っているからね。




 鏡の中には今、私とラルルカしかいない。


 そして、ヒューゴ君がラルルカの存在を知る由は無い。


 悪い考えが浮かんでしまうのは当然のことだよね。


「ちょっと! 聞いてんの!?」




 私が心の内で闇を沸々と生み出している間に、どうやら彼女は何かを話し掛けていたみたい。

 怒った彼女の甲高い声が、塔内に響き渡っている。


「ど、どうしたのかな?」

「はあ……もしかして、アンタもアイツも、アタシの話を無視することを趣味にしてないわよね?」

「私も彼も、酷く物事に集中してしまうと、周りの音が聞こえなくなってしまうことがあるからね。悪気があってやっている訳じゃないよ」


 もっともらしいことを言って誤魔化してみたけれど、内心はビクビクしていたよ。

 私よりも優れていそうな彼女を前に、私はすっかり萎縮しちゃっているみたい。

 なんだか、格好悪いね。




 螺旋階段を登り切って、天井に奥行きのある三角屋根が見える所に辿り着くと、こじんまりとした書庫が現れた。


 どれもこれも古めかしい本ばかりで、歴史ある物だっていうことを示している。




 ラルルカは読んでいた本の大体の位置を知っていたから、教えてもらったけれど、それは無かった。


 本が別の誰かによって移動されたかもしれないし、彼女の勘違いかもしれない。とにかく、別の何らかの思惑があったのではと思ったのだけれど、背表紙を見てはっきり分かった。


 もしかしてと思って逆方向の書架を探してみたら、彼女が言う本を発見できた。


 背表紙の文字は左右が反転している、いわゆる鏡文字というやつだね。

 うーん、最悪だね。


「何よこれ……」

「鏡の中の世界は外の世界と違って逆になっているみたいだね」




 本を読み解くのに時間を掛けてしまったから、肩や首の凝りが酷くなってしまったよ。

 読み辛いことこの上ない書物を読んだことは、良い経験になったけれど、できればもう読みたくは無いかな。


 本の中身は確かに大鏡のことを教えてくれていた。これは取り扱い書のようなものかな。


 鏡は元々、この世界に存在してはならない者を封じ込めるための封印の役割を果たしていたみたい。

 ただし、鏡1枚を見ただけでは何も起きない。


 あの大鏡が正しく並行になって取り付けられた状態、つまり合わせ鏡になっている状態になることで、鏡の中の世界と繋がるようになってしまう。

 あの大鏡はそういう作りになっているみたいだね。


 何とも不可思議な鏡だね。


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