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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第12章 鏡の中の魔女
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2女魔の中の鏡

 ラルルカは鏡の前にずっと座りっぱなしで、私を空気としか見てなかった。

 だから、1人で城の中を探してみた。


 探せるところまででしか語れないけれど、他に誰もいなかった。

 私が鏡の中に取り込まれた時に、鏡の外に私がいるのを見た。ということは、鏡の中に別のヒューゴ君がいるのかもしれないと思ったのだけれど、残念ながらその当ては外れてしまった。


 それでは城の外はどうなのかと、入った扉から出ようとしたら、扉の向こうに危うく落ちてしまいそうになった。

 扉の外は何も無かった。


 ただ真っ暗で、何も無かった。


 どうやら鏡の中の世界はこの城しか無いみたいだね。




 鏡の中は今が昼なのか夜なのか分からないから、城中を探索してどのぐらいの時間が経ったのかは分からない。

 ここは仮にも城だから中はとても広い。


 入り組んでいるから普通の人なら道に迷うだろうけれど、この優秀な記憶力のおかげで1度歩けば城の地図が簡単にできてしまう。私はすごいのだ。




 ここで出来ることが無くなって、唯一情報を得られそうなものがラルルカだけになって仕方無く例の鏡の部屋に戻った。


 彼女は壁一面に張られた大きな鏡を背にして(うずくま)っていた。


 彼女の隣に座って話を聞こうと思ったけれど、また目を刺されては堪らないから失った右目を彼女の方に置く。




「君もずっとここにいる訳にはいかないでしょう? 協力して外に出てみないかい?」




 返事は無し。

 それなら私も彼女の逆鱗に触れるしか無い。


 彼女の頬を指で突いて気を向けさせると、彼女は獣のように私に掴みかかって馬乗りになってきた。

 首を思い切り締められて、爪が肉に食い込む程に立てられちゃった。


 肩まで伸びた黒髪が垂れ下がって顔が隠れ気味でお化けみたい。


「喋るなって言いたいのが分かんないの?」

「分かっていて聞いているのさ」


 彼女は私を殺しても死ぬことがないのを知っているから、私を痛めつけることに集中して私を殺さないように傷を与えてきた。


「アンタとあの男、両方とも鏡の中に閉じ込められていれば良かったのよ」

「ははーん。君がこの城は君の差し金なのかい?」

「違うわ。利用しただけよ」


 言葉は交わせているけれど、首にかかる力は全くゆるまなくて意識を失いそうになってしまう。

 彼女の頬をゆっくり撫で続けていると、私のことを気持ち悪く思ってくれたみたいで、どいてくれた。危うく傷だらけにされるところだった。

 すかさず体勢を戻して彼女の隣に座る。


「つまり、君はこの鏡の中の世界に私たちを閉じ込めようと潜んでいたけれど、誤って君も鏡の中に入ってしまったということかな」




 返事は無いけれど図星なのだろうね。

 どうやらラルルカは復讐心で心を満たされすぎて、下手を打ったようだね。


 リリフラメルと違って、彼女はどうにも抜けているみたい。

 リリフラメルは抜け目の無い子だから、確実に私とヒューゴ君を鏡の中に閉じ込めていただろうね。




 それでも会話を試みるたびにこう攻撃されては堪らないね。

 ラルルカと平和的な話をするために、まずは彼女と仲良くすることから始めないといけないかな。


 彼女の方に顔を向けて、なるべく優しーく彼女に語かけてみる。


「多分、君が考える通り、私は君の大切な人を奪った悪い魔女だよ」


「でも、私の騎士ヒューゴという人は君が思う程悪い人ではないのだよ」


「聞いてみてよ。私の騎士のこれまでの話を」


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