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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第11章 ゴブリン側の主張
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真の明日の方向性4

 何か意味があって人間に扮した訳では全く無い、マルムの後を考えない行動が露呈した所で、彼にこのまま繰り返しを行わせて良いものなのか疑問が降りかかった。


 多分、リリベルに質問をすれば必ず俺たちにとって良いことは何も無いと返ってくるはずだろう。

 リリベルは絶えず魔力を奪われ続ける羽目になるし、俺は何度も何度も()()思いをする羽目になる。此方に利がまるで無い。


 身勝手な嫉妬から生まれた俺たちに対する殺人行動も相まって、少しぐらいはあった神への敬意はさっぱり無い。


 だが、世界が滅ぶらしいことを念頭に入れると、この話を無視する訳にもいかない。

 俺たちにとって本当にこの先世界が滅ぶのかは確かめようがない話ではあるが、どちらにせよ遥か先まで今日を繰り返すことは決定されている。

 嫌なら彼を殺すか、彼が持つ困難を解決しなければならない。


 つまるところ、彼に代わって俺たちが世界を救うことで、この状況を打開できないかという話だ。




「ゴブリンと町の人間の争いが起きなければ、滅びは避けられる。それは俺たちでも解決できるか?」

「できる。誰でも機会はあると思うよ」


 マルムはただ肯定した。

 それなら話は早い。


「俺たちが争いを止めるために行動してみせよう。だからマルム。お前はただ繰り返しをして俺たちの行動が未来を変えたかどうかだけを確認してくれないか」


 言いながらリリベルに目配せすると、彼女は否も無く頷いた。と言っても彼女が否定しても、この状況が好転しないので無理矢理話を進めさせてもらうしかない。


「本当かい!? 嬉しいよ! 私を愛してくれているから、私を助けてくれるのかい?」

「そんな訳無いだろ」

「そんな……」




 今度こそ、ここで取るべき行動が決まった。

 結局、元々の目的と余り変わっていない気がするが、こうやって言葉を交わしてマルムとの意思が疎通できただけでも良しとするべきだろう。


「今後の繰り返しでは、俺たちを攻撃することは諦めてくれ。もうお前の嫉妬に振り回されるのはたくさんだ」

「……無理だよ」


 一旦、リリベルと顔を見合わせてからもう1度マルムに同じことを問い掛けるが、同じ返事が返ってきてしまう。

 業を煮やしてなぜ無理なのかを聞くと、碌でもない返事が返ってきた。


「私の記憶は、次の()()には全て忘れているのだよ。君だけだよ。記憶が途切れないでいられるのは……」


 これは一体どういうことか。

 まさか繰り返しを行っている本人の記憶が、蓄積されていないとは思わなかった。

 俺だけがこの繰り返しで記憶を蓄積し続けている。


「なぜ俺だけが……」

「君が愛するリリベルは、神の加護を受けていない。でも、君はそれどころではない。君は、誰からの加護も受けられない。君には加護の概念そのものが無い」


 誰かから魔力を貰う方法の1つとして、加護を受けるという話は聞いた。

 マルム(いわ)く、リリベルは神の加護を受けていないから、本来なら魔力を膨大に扱えるはずが無いらしい。

 そして更に彼が言うには、俺はリリベルよりも酷い状態らしい。


 まったく訳が分からない。


 訳が分からないでいると、リリベルが待ってましたと言わんばかりに嬉しそうに補足し始めた。


「ヒューゴ君。君は、私から呪いを受けてあらゆるものを生み出す力を手に入れたでしょう?」


「魔法陣と詠唱を無視して、魔力だけで発揮することができるその素晴らしい力は、世界の(ことわり)から外れているのさ」


「世界の理から外れて君は、世界中の常識から嫌われてしまったんだ」


「君がどれだけ徳を積む行動をしたとしても、それが報われることは無い」


「君が何か行動を起こすために、どれだけ準備を重ねたとしても、それが満足な結果にはならない」


「正確に言葉で表すことは難しいけれど、君は非常に運が悪いのさ」


 彼女は、今までの俺の不幸が、彼女からの呪いを受けたせいであると言ってのけてしまった。


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