1日前 再々想
「あれ、確かカトルさんという名前の方が来られるとお聞きしたような……」
魔女の騎士殿との話を終えて、到着したばかりのジェトル殿をハイレ村調査隊拠点の中に案内した後に、もう一度カトルという名について思い起こそうとしてみたが、さっぱり思い出せない。
年を経るとどうしても記憶力がおぼつかなくなってしまう。
ジェトル殿からいただいた確認のための書簡は、確かに私が送った物であった。
つまり、古代文字解読の専門家は元々ジェトル殿で間違いないのだ。
はてさて、誰と勘違いしていたのか、うーむ……。
「ロベリア様。カトル様の代理としていらっしゃった方のサインを契約書に記載いただきました。併せてカトル様に宛てた書簡もお預かりしています」
「おお、丁度良かった。見せてくれないか」
良いタイミングだ。侍女から契約書を受け取り、契約内容と名前の記載欄を確認してみる。
おお、そうだそうだ。古代文字解読者ではなく魔法剣士としての依頼であったか。
名前は……。
『ディギタル』
いやはや、記憶が疎いことは反省せねばなるまいが、これですっきりした。
カトルという方の代理はディギタル殿であったか。




